胃カメラの検査方法と特徴は?

胃カメラは健康診断の項目として身近な検査ですが、その検査方法や特徴、使用される器具などをしっかり把握している方は少ないのではないでしょうか。また、友人・知人などから胃カメラ検査の感想を聞き、自分も検査を行うべきか、ためらっている方もいるかもしれません。今回は、そうした方には特に知っておいてほしい、胃カメラの検査手順や特徴などをご紹介します。正しい知識と心構えを身に付けて検査に臨めば、医師と相談のうえ自分に合った検査方法や器具などを選択できるので、負担はかなり軽減されるはずです。
それではまず、胃カメラ検査の特徴や検査の流れから見ていきましょう。

胃カメラの特徴と検査の流れ

一般的に「胃カメラ」と呼ばれる検査は、正しくは「上部消化管内視鏡」といいます。この検査は主に胃や腸といった消化器官の病気を早期発見・治療するために行われるもので、正社員であれば、法律で義務付けられている年一回の定期健康診断で、検査項目外の検査ではありますが毎年追加して受けている方もいるのではないでしょうか。

それでは大まかに、胃カメラ検査の流れをご紹介します。

事前検査(5日前程度)

全身の状態や持病の有無、持病がある方は服薬している薬の種類、採決、尿検査、心電図などの検査・問診を行います。脳梗塞・心疾患予防として服薬している薬がある場合、検査の数日前から服薬を中断するよう指示がある場合もあります。

前処置(検査前日)

当日は胃を空っぽにしておく必要があるため、胃カメラ検査前日の夕食は大体午後9時までに軽くすませます(当日の検査時間・受診する施設により夕食の時間は異なります)。また、飲み物に関しても牛乳・お茶などは飲むことができないケースがあるため、水を用意しておきましょう。

検査当日

胃カメラ挿入の前処置として、消泡剤(胃をきれいにする白い液体)を飲み、経口ならばのどの麻酔、経鼻ならば鼻の通過を良くする薬で処置を行います。げっぷが出やすくなりますが、極力がまんしましょう。その後、内視鏡を挿入し、通常は510度で検査は終了します。

胃カメラの検査で使用される内視鏡は2類あり、口から挿入する「経口内視鏡」と、鼻から挿入する「経鼻内視鏡」があります。ここからは、それぞれの特徴についてご紹介します。

経口内視鏡の特徴とメリット・デメリット

胃カメラ検査で使われる器具のうち、まずは「経口内視鏡」の特徴とメリット・デメリットを見てみましょう。

特徴

胃カメラとして良く知られている、口から飲むタイプの内視鏡です。サイズだけで見ると経鼻内視鏡より太いため、飲み込む際に少し苦しく感じる方や、のどの痛みを感じる方もいるかもしれません。ただし、そうした方には内視鏡挿入前にのどの痛みを抑える麻酔薬や、胃の運動を抑える薬、緊張を和らげる鎮静剤などが使用されることもあるので、心配な方は医師に相談してみるとよいでしょう。

経口内視鏡のメリット

①カメラの管が太く、ライトも明るいものがとりつけられているため、大腸のすみずみまで詳細に確認でき、病変があった場合も鮮明に映し出すことができます。40代以上の方は、ピロリ菌の感染率が高くなるため、その症状がないか確認するためにも経口内視鏡による検査がおすすめです。
②鎮静剤を使用しなければ、その日のうちに仕事などができるようになります。
③鼻炎や副鼻腔炎といった鼻の病気を持っていても使用できます。そのため、鼻の病気を持っている方の場合は、経口内視鏡を使用した検査しか行えません。

経口内視鏡のデメリット

①のどの麻酔薬がとても苦いため、そうした薬を飲みたくない方にとっては、事前処置から苦しい思いをすることになります。
②のどの麻酔薬には副作用があるため、人によっては気分が悪くなります。
③口から内視鏡を挿入する際、のどの奥(咽頭部)を刺激するため反射的に強い嘔吐感に襲われる場合や、検査中は息苦しさを感じることもあります。

経鼻内視鏡の特徴とメリット・デメリット

上記で経口内視鏡の特徴などをご紹介しましたが、一方の経鼻内視鏡にはどのような特徴があるのでしょうか。

経鼻内視鏡の特徴

鼻から内視鏡を挿入するタイプなので、のどの痛みを感じづらく、加えて内視鏡自体のサイズが経口内視鏡と比べて細めなので、比較的スムーズな挿入が可能となった新しいタイプの内視鏡です。経口内視鏡での検査で嘔吐反射がつらい方や、のどの痛みが強い方には経鼻内視鏡をおすすめします。ただし、鼻炎・副鼻腔炎といった鼻の病気を持っている方は、この器具を用いた検査は行えません。

経鼻内視鏡のメリット

①経鼻内視鏡はサイズが細めのため挿入がスムーズで、息苦しさも経口内視鏡よりかなり軽減されます。
②嘔吐反射の原因となるのどの奥(咽頭部)を刺激しないため、吐き気が起きません。
③のどの麻酔を行わなくても検査ができるため、苦い薬が苦手な方は快適に検査へ臨めます。また、使用する麻酔薬は少量であるため、体への負担は少なく済みます。
④鎮静剤を使用しないので、検査後に仕事や用事に戻ることができます。
⑤口がふさがっていないため、検査中に会話ができます。検査中に不安な点や気になる点があった場合など、その場で医師に確認することができます。

経鼻内視鏡のデメリット

①内視鏡を鼻から挿入する際、粘膜を傷つけてしまい出血する恐れがあります。
②内視鏡のサイズが細めなため鮮明な映像がとりづらく、胃に食物が残っている場合などには観察が非常に困難になります。
③鼻腔が狭い場合は、このタイプの内視鏡を挿入できないこともあります。その場合、施設によっては経口内視鏡に検査方法が切り替わります。

胃カメラをスムーズに挿入するには

胃カメラの検査で用いられる「経口内視鏡」と「経鼻内視鏡」の特徴などをご紹介しましたが、どちらにしても挿入時の苦しさは多少あるものです。それでは、その苦しさを軽減する方法やコツをご紹介します。

挿入時の姿勢

挿入時に緊張する気持ちはもちろんあるかと思いますが、肩や首の力を極力抜き、リラックスした状態で胃カメラを挿入しましょう。体に余計な力が入っていると胃カメラがスムーズに体内へ入らず挿入時間が長引くため、苦しさも長引いてしまいます。

呼吸の仕方

胃カメラが入っている状態での呼吸は、口からしていいのか鼻からするべきなのか迷う方もいるのではないでしょうか。胃カメラ挿入後でも呼吸は通常通り行えるので、リラックスを促すためにも腹式呼吸を心掛けましょう。ゆっくりと鼻から吸って、口から吐く。これを繰り返すことで、緊張は多少和らぎます。

唾液の処理

経口内視鏡を用いて胃カメラ検査を行った場合、マウスピースが口についているため唾液は飲み込みづらくなります。それでも溜まった唾液を無理して飲み込んでしまうとせき込んでしまいます。実は、マウスピースの先端は唾液を自動で吸い出すようにできているので、無理に飲み込まず、マウスピースに任せましょう。

どうしても胃カメラを飲むのがつらいという方は、希望によって鎮静剤を使用することができます。鎮静剤を使用すると検査の間は眠っていられる、あるいは気分を楽にしてくれるので、どうしてもという場合は医師に相談しましょう。ただし、鎮静剤を使用すると、当日は仕事や車の運転などができません。そのため、予定のない日に検査を受けるよう、日にちを調整する必要があります。

いかがでしたか?胃カメラ検査の流れや特徴、使用される器具である「経口内視鏡」「経鼻内視鏡」などについてご紹介しました。健康のためにも胃カメラ検査は必要と頭ではわかっていても、あまり気が進まないという方は多いと思います。ですが、今回ご紹介させていただいた胃カメラ挿入時のコツや、2つの内視鏡、そして鎮静剤などを検討することで、体力的・精神的な負担はかなり軽減されます。とはいえ、メリットもあればデメリットもあるので、自身の体調、持病などをよく確認し、医師と相談しながら、最適な検査方法を選択しましょう。