大腸内視鏡検査でポリープは見つけられる?

ポリープという言葉はよく知られていますが、その種類や、早期がんとの違いをご存知でしょうか?大腸内のポリープは大腸内視鏡検査により見つかることも多いです。ここでは、大腸がんの早期対策に関心のある方向けに、ポリープを発見することができる検査方法についてご説明します。

ポリープとはどのようなものか

「ポリープ」とはもともと出っぱりやイボのような形を表す言葉で、消化管の粘膜が腫瘍性に増殖したものです。便潜血陽性の場合、ポリープは4~6割の確率で見つかるといわれています。
ポリープが発生する理由として、老化や喫煙、肥満、糖尿病、大腸癌の家族歴、高脂肪食などがあげられます。大腸ポリープ中に含まれるがんの比率は、目安として5mm以下で0.6%、6~9mmで7%、10~19mmで24.6%、20mm以上のものは35.8%です。
大腸ポリープはがんが含まれているものもそうでないものもありますが、放置した場合、増大して将来がん化するリスクが高いので、5mm以上のものは切除するのが賢明な選択といえるでしょう。

内視鏡によるポリープの切除ではポリープに「スネア」と呼ばれる金属の輪をかけて、高周波電流を使って焼き切ります。切除後は大腸内に小さな潰瘍が残りますが、やがて自然に治癒します。切除後の出血や粘膜に熱が加わることで腸管が裂けてしまうケースが報告されていますが、そのような例は非常にまれです。

摘出したポリープは顕微鏡を使った病理検査で良悪性の判断を行います。ポリープを切除すると、その後の大腸がんのリスクは1/2以下に抑えられるといわれています。

ポリープとがんの境目とは

良性のポリープと早期がん、進行がんにはそれぞれどのような特徴や違いがあるのでしょうか?
ポリープには良性の腫瘍「腺腫」、悪性の腫瘍「がん」、そもそも腫瘍ではない完全に良性の「過形成性ポリープ」などがあります。

だいたいのポリープは、ただの良性の腫瘍である「腺腫」であることが多いのですが、なかには一部にがん細胞が含まれている可能性もあります。これを放っておくと大きくなり、やがて性質が変わり悪性のがんに変化することもあるのです。

腺腫と早期がんは完全に別のものではありません。腺腫の一部ががん細胞に変化し、やがて「腺腫内がん」の状態になります。つまり、腺腫はがんの予備軍といえるのです。

がんと腺腫は見た目では判別することができず、顕微鏡で観察しないと区別ができません。ただ腺腫が大きくなるほど、がん化している可能性は高いです。がんになる前に切除するのがよいので、上述のように5mm を超えているものは摘出するのが一般的ですが、小さい場合はがんになる心配が少ない上、治療時に出血などの副作用の心配があるため、しばらく経過観察することもあります。

小さなポリープを切除しないという選択をしても、放置しておくと年単位で徐々に大きくなることもあるので、2~3年後にもう一度検査を行って進行度を確認するようにしましょう。細胞の性質が変わり早期がんになると、それに伴って発育の速度は速くなります。年単位ではありますが少しずつ成長し、やがて進行がんへと変わっていきます。

そしてポリープすべてが、がんになってしまうとその場で増殖するだけでなく、他の細胞をかき分けるようにして成長するようになります。これが大腸の壁の筋肉に達すると「進行がん」と呼ばれるようになるのです。そして、外科的な手術で切除することになります。

大腸がんの進行過程

大腸がんになっていくペースは、だいたいの場合は数年以上の経過でゆっくり発生します。大腸がんの成長する過程は盛んに研究がされている分野で、検査の方法も数多くあるため、早期発見の対策が取りやすいがんであるといえるでしょう。

DNAに傷が付いて細胞の性質が変わることで、がんはゆっくり時間をかけて成長します。増殖が進むとやがて大きく腫瘍化し、さらに周囲に広がるようになると腸の壁に染み込み、転移が起こります。

以上の経過は短くても数年、長くて10年ぐらいかかることが分かっているので、進行がんになる前に早期発見、早期治療をすることが非常に大切です。

検査の種類やその特徴

大腸がんの検査方法は便潜血検査や内視鏡検査のほかに、カプセル内視鏡や遺伝子検査などがあります。ここでは、それぞれの検査方法について丁寧に解説します。

便潜血検査

大腸にある多くの腺腫やがんは出血するため、便に血が混じっているかを確認することで、腫瘍の有無を調べることができます。毎年この簡単な検診を受けるだけで、大腸がんを引き起こす確率を下げることができます。

多くの企業や自治体では、わずかな自己負担で検診を受けられる取り組みをしているので、特に40~50代の方はぜひ機会を見逃さないように積極的に活用してください。会社の検診で再検査といわれた方は、早期がんを発見できるチャンスなので、面倒がらずに精密検査を受けるようにしましょう。

内視鏡検査

上述の便潜血検査は有効な方法ですが、出血のないポリープや早期がんもまれにあるため万能とはいえません。一方、内視鏡検査は小さい腺腫や早期がんを早い段階で見つけるにはより効果的です。がんの予備軍である腺腫のある人は、医師に指定された間隔で必ず検診を受けましょう。

ただし便潜血検査より時間や費用がかかり、体への負担もあります。内視鏡検査でどれだけ寿命の延命効果が望めるのかはっきり証明されていないことや、全員が受けるべき検査であるとは言い切れないことから、一般検診の中には含まれていません。

ただ、大腸がんになりやすい40~50代の間で一度、人間ドッグで内視鏡検査を受けに行くのは非常におすすめです。内視鏡検査では、がんだけなく腺腫の有無や、将来がんになる危険性まで知ることができます。同年代のデータと比較して腺腫が多くある人は、腺腫ができやすく大腸がんになるリスクが高い体質だと分かるからです。腫瘍が見つかった人は、消化器内科医と相談して一定の間隔で検査を受けるとよいでしょう。

CTコロノグラフィー、カプセル内視鏡

以前は腸中を観察するためには、内視鏡を肛門から入れる方法しかありませんでしたが、現在ではCTスキャンやカプセルを飲み込むだけの検査方法が行われるようになりました。カプセル内視鏡では、無線で体内からの画像を送受信することができます。ただし、事前に下剤の処置を行わないといけないのは以前と変わりなく、それぞれデメリットもあるため、対象者や実施する医療機関が限られています。

最先端の研究

尿や血液、便に含まれるごく微量の遺伝子を測定し大腸がんを見つける遺伝子検査はまだ研究段階ではありますが、今後の可能性が大いに期待できます。また、大腸の内視鏡検査に人工知能(AI)を取り込み、ポリープや早期がんを自動で判別するシステムの開発も進んでいます。AIに学習させることで、肉眼では検出が難しい病変をより正確に判別することで、医師の見逃しや技術レベルの差をなくせることが期待されています。

「ポリープ」と簡単にいっても、切除する必要のないものから、良性でも将来成長する可能性のあるもの、一部にがん細胞が含まれるものなどさまざまな段階があることがわかりました。
簡単な便潜血検査や精密な内視鏡検査などを定期的に行えば、開腹手術をして摘出したり、体の他の部分に転移したりしてしまうことを防ぐことができます。

特に40歳を超えた方は、会社や自治体のシステムを活用して検診を受けるようにしましょう。