盲腸は大腸の内視鏡検査で見つけることができる?

大腸内視鏡検査は、症状だけでは判断しづらく、腸の病気を診断するために必須の検査です。また、まだ症状に現れていない段階の病気を見つけるなど、病気の早期発見、早期治療に役立っています。

大腸内視鏡検査と言われると、なんとなくの想像はできるけれど、具体的にどのように行っているのでしょうか?肛門から内視鏡のカメラを入れて、お腹のどこの部分まで観察することができるのでしょうか?また、観察することでどのような病気を発見することができるのでしょうか?今回は、そんな大腸内視鏡に関する疑問を解き明かしていきたいと思います。

大腸内視鏡検査の目的

大腸内視鏡検査は、大腸の中にできたポリープやがん、炎症などの異常な状態を見つけて適切な治療を行ったり、その病変部を採取して今後の治療方針を検討したりするための重要な検査です。近年、日本人は食生活の欧米化やストレス社会化によって、大腸の病気が増加しています。大腸の病気は症状だけでは区別できない場合があるため、これらの病気を診断するために大腸内視鏡検査は必要不可欠な検査です。

では、具体的にはどのような症状がみられた場合に大腸内視鏡検査を受けに行けばよいのでしょうか?まずは、大腸がん検診(便潜血検査)で陽性となった場合は大腸内視鏡検査を受けにいったほうがよいでしょう。また、日常的に便に血液が混じる、赤黒い便が出る、粘液のような便を認めるなどの症状も大腸内視鏡検査を受けた方がよい症状です。

さらに、多くの人が異常な症状と認識していない症状も大腸内視鏡検査を受けた方が良い症状の場合があります。例えば、便の形が細い、便秘や下痢を繰り返す、お腹の張りが気になる、なども大腸内視鏡検査を受けた方がよい症状です。これらの症状は、大腸の中にポリープやがんなどの異常があり、便の通り道が細くなってしまっていることで生じます。

大腸内視鏡検査を受けた方がよい症状に1つでも当てはまる人は、できるだけ早くに大腸内視鏡検査を受けて、大腸の中に異常がないかを観察してもらいましょう。早くに病気に気づくことで、身体への負担も大きく減らすことができます。

大腸内視鏡検査の流れ

大腸内視鏡検査は、大腸の中の異常な状態を観察する検査です。したがって、大腸の中に便などが残っていると、正確に観察することができません。内視鏡のカメラには、大腸の中に残っている液体を吸う吸引口があります。しかし水状のものは吸引できますが大きい便や固まりは吸引できません。そのため、検査前日や検査当日に大腸の中をきれいにする処置を受ける必要があります。

まず、検査前日の夕食は消化の良いもの、または医師に処方された大腸検査食と呼ばれている、食べても大腸の中にカスが残らないようになっている食事を摂ります。また下剤を服用し、大腸の中を検査しやすい状態にしておきます。

次に検査当日の処置です。検査当日、水分などは摂れますが、食事は摂れません。常用している薬は医師に確認してから服用するようにしましょう。その後、下剤を服用し大腸の中に残っている便などを出していきます。排便中に気分が悪くなった場合は、服用をやめて医師や看護師に相談しましょう。

そして、大腸の中がきれいになったら検査室へと移動して大腸内視鏡検査を行います。医院によっては鎮静薬を投与できるところがあり、不安感を取り除いた状態で検査を受けることができます。大腸内視鏡検査は20分程度ですが、ポリープ切除などを行う場合は30分ほど検査時間が長くなります。

大腸内視鏡検査後は、検査で見つかった病気などの説明を受け、1時間ほど休息をとってもらいます。検査後はお腹にガスが溜まりやすいので、お腹の右側を下にしてガスを出しましょう。

大腸内視鏡はどの部位を観察できる?

大腸は肛門から、直腸、SDジャンクション、S状結腸、下行結腸、脾湾曲、横行結腸、肝湾曲、上行結腸、回腸、盲腸とつながっています。大腸内視鏡検査で観察することができるのは、この肛門から盲腸までの部分です。

このうち上行結腸、下行結腸、直腸は身体の背中側に固定されています。横行結腸とS状結腸は固定されていないので、お腹の中で自由に動いています。内視鏡を入れる時に痛みを伴うかどうかは、この横行結腸とS状結腸に内視鏡をうまく入れられるかどうかにかかっています。

痛みを抑えるために「軸保持短縮法」と呼ばれる方法が用いられることがあります。軸保持短縮法とは、直腸、SDジャンクション、脾湾曲、肝湾曲、盲腸の5つの部分と内視鏡の軸を一致させるようにしながら、大腸のヒダを1枚1枚折りたたんで腸管を短縮しながら内視鏡を入れていく方法です。この方法は痛みを抑えるだけでなく、腸管に穴を開けるリスクも減らすことができます。

ただし、状況によってはこの軸保持短縮法を持ち入らずに、内視鏡の弾撥力を利用して肛門から入れる場合もあります。この方法はループ挿入法と呼びます。ループ挿入法はカメラを腸に押し込みながら進めていくため、腸が伸びてつっぱってきたり、痛みを感じたりします。そのため、このループ挿入法を用いる場合は痛みを感じさせないために鎮静薬を使う場合があります。

鎮静薬を使うと痛みを抑えられるというメリットがある反面、意識がぼんやりするため、ポリープが見つかった場合でもその場で患者さんから切除の同意が得られないことがあります。この場合、ポリープ切除のために再度大腸内視鏡検査を行わなければならなくなります。

大腸内視鏡検査でわかる病気

大腸内視鏡検査でわかる主な病気について紹介します。

「クローン病(炎症性腸疾患)」は大腸の中にできた炎症によって、腸に潰瘍ができる病気です。この病気の原因はまだ分かっていません。主な症状は下痢や腹痛で出血はあまり見られません。

「潰瘍性腸炎」は、消化管に原因不明の炎症が起こり、大腸の粘膜にも炎症がおき、大腸がただれたり潰瘍ができたりする病気です。近年増加している病気ですが、原因は分かっていません。主な症状は下血(肛門からタール状の便がでてくる)です。

「大腸憩室症」は、大腸の一部が腸管内の圧力が上がったことによって、嚢状(袋状)になり、腸壁の外に吐出したものが多発する状態です。近年の食生活の欧米化や肉食の増加、食物繊維の摂取量の減少により便秘になりやすくなり、腸管内の圧力が上がりやすくなったことが原因の1つと考えられています。また加齢によって腸管壁が脆くなっているのも原因で、比較的高齢者に多くみられる病気と言われています。自覚症状がない場合が多く、病気が進行すると下痢や軟便、便秘やお腹の張り、腹痛などの症状がみられます。

「虚血性腸炎」は大腸への血液の循環が悪くなり、大腸で必要とされる栄養素や酸素が行き渡らなくなり、炎症や潰瘍が生じる病気です。大腸の血管に動脈硬化があり、そこに便秘などが重なることで発症すると考えられています。高齢者に多い病気なのですが、便秘のひどい若い女性にもみられる病気です。

これらの病気は大腸内視鏡検査で見つけることができ、また薬などで治療していくことができます

最後に

大腸内視鏡検査は、内視鏡を用いて肛門から盲腸までの状態を観察し、病気を診断することができる検査です。「内視鏡を大腸の中に入れたときに痛みを感じるのではないか?」と思う人も少なくありませんが、現在「軸保持短縮法」など、痛みを感じずにに検査を行うことができる方法があります。

鎮静薬などを使用しないので、意識がはっきりとした状態で検査を行うことができるので、いざポリープなどの異常が見つかった場合には、医師とリアルタイムで確認しながら処置を進めることができます。このように大腸内視鏡検査は、肛門から盲腸までの状態を安心して検査してもらえる検査なのです。