大腸の内視鏡検査をしたら下痢になるって本当?

大腸の内視鏡検査を受けるときは、前準備として大量の下剤を飲んでおなかの中をきれいにする必要があります。それは、人工的に下痢を誘発するというものです。前準備として下痢を経験する必要があるということは、大腸内視鏡の検査の受診を検討した大抵の人は知っているでしょう。では、検査が終わった後にも下痢になるかもしれないということはご存知でしょうか?

病院探しをしている際に、そういった口コミを見かけることがありますが、果たして本当なのでしょうか?この記事では、大腸内視鏡検査が終わった後に起こる下痢について紹介します。

原因として考えられること

大腸内視鏡検査をした後、翌日になっても下痢が収まらない原因として、考えられることはいくつかあります。

まず、大腸に空気を送り込む方式で施術を受けた場合、どうしても空気が残ってしまいます。残った空気はおならとして排出されますが、それと一緒に出てきてしまうパターン。おならが何回も続いてそのたびに下着が汚れてしまうと、調子が悪いのかと心配になる人もいるでしょう。

また、内視鏡の管が大腸の中をダイレクトに刺激するのでそれに対して大腸が過敏に反応してしまう可能性もあります。もしくは、検査自体がストレスで、おなかを下してまっただけかもしれません。検査が終わったからとおいしいものを食べて、油をとりすぎた例もあるでしょう。

ただ、可能性として一番考えられるのは、前準備のために前日、当日に服用している下剤の効果です。大腸内視鏡検査の前準備では、腸で吸収されない性質のあるものを下剤として使用しているので、尿としては排出されません。こういった薬剤を腸管洗浄剤、腸管洗浄液などと呼びます。

そもそも、口にしたものが排出されるまでの時間は24~48時間とかなり個人差があります。場合によってはもっとかかる人もいるでしょう。そのため、検査後から数日間は、検査前日や当日に服用した下剤が出てきてもおかしくありません。そのため、下剤の効果としての下痢が発生する可能性は十分考えられます。検査をしたからと言ってそれまでに口にしたものがいきなり消化管の中から消えてしまうことはないからです。

検査のために何リットルくらい水分をとる?

下剤が大腸内視鏡検査後に見られる下痢の原因だった場合は、飲んだ下剤が出きるまで下痢様の便が止まらないと考えられます。それにはどれくらいの量を出せばよいのでしょうか?

腸管洗浄剤に分類される薬の多くは、粉末、もしくは錠剤として手渡されます。それに水を入れて溶かすか、錠剤のまま飲み込むかの違いはありますが、共通して言えるのは多量の水分とともに服用する必要があるということです。

そもそも、下剤の種類には主に3種類があり、一つは腸の働きを活発にしてたまった便を腸のぜんどう運動の力で押し出すタイプ。もう一つは腸管洗浄剤のように腸で吸収されない水分によって便に水分を与え、柔らかくするタイプ。

今回話題にしている腸管洗浄液は、便をふやかして排便を促す便秘薬に似ていますが、大量の水分で洪水のように便を流してしまう効果も追加されます。腸の運動だけでなく、上から押し出す働きによって排便を促すため、数時間という短時間で、腸内にあるほぼすべての便を排出できるのです。

この押し出す作用を得るためには、水分の量が必要で、少なくても1.5リットル多いと2リットル以上の下剤や水分をとらなければいけません。当然、ある程度の量が出て水分が追加されなくなったら、押し出す作用は弱まり、排出が通常の消化器官の運動に頼ったものになるものが出てきます。

腸のひだやもっと上にある胃などに留まって、出てくるまでに時間がかかることもあります。そういったものが、検査が終わってからも下痢様の症状を伴って出て来る可能性があると覚えておきましょう。

腸内細菌が減ったせいもあるかも?

今まで上げたもの以外にも、考えられる理由はあります。興味深いのが、腸内細菌が減ったせいで腸内環境が変わってしまったのではないかという説です。

腸内細菌は、体内にいる数百種類の細菌の総称です。その数は100兆個とも1000兆個とも言われており、なんと、普段出している便のおよそ3分の1が腸内細菌や、それの死がいでできています。

そんな腸内細菌ですが、大まかに善玉菌、悪玉菌の2種類に分けられるというのは知っている人も多いでしょう。この二つは、食事や体の調子、飲んだ薬などにより絶えずその比率を変えています。善玉菌はいらないものを外に出す働きをし、悪玉菌は体に良くないものを作り出しているため、その比率がどう変わるかで、おなかの調子も変わってきます。

大腸内視鏡検査で使用する下剤は、この腸内細菌の多くも便と一緒に洗い流してしまいます。大体下剤の使用前後で35倍もの差が出るという研究結果もあります。その研究で腸内細菌の状態を調べたのは、下剤服用の前後と14日後、28日後の4回。検査後は細菌の現象が見られ、14日後の調査では腸内細菌が検査前とは違う比率で増えていたのが確認できています。

28日後の調査では大体下剤使用前の状態に戻っているのが確認できていますが、大体2割くらいの人が、下剤の使用でいつもとは違う腸内細菌のなったとのこと。

大腸内視鏡検査を受けてから、結構長い間下痢をしていた気がする、という方は、腸内細菌のバランスが変わったのが原因かもしれませんね。

下痢が続く際に注意したいこと

原因はいろいろ考えられますが、実際に下痢になってしまったときには脱水症にならないように気を付けましょう。

脱水症は、暑いときや運動をたくさんしたとき、風邪などで水分がうまく取れないときなどになるイメージがありますが、下痢が続いてもなる可能性があります。下痢にはたくさんの水分が含まれているので、水をたくさん飲んで水分をとっているつもりでも、思ったより体に取り込まれていない場合があります。

脱水症で怖いのは、単純に体の中の水分が少なくなることもそうですが、何より電解質がなくなることです。どちらも大切なものなのですが、脱水症対策をするときに水分は取れているものの電解質はとれていない方が多いため、電解質がなくなるというところに重点を置いての理解が重要です。

ナトリウムイオンやカリウムイオンなどをまとめて電解質と言いますが、これらがなくなると体内の水の循環ができなくなっていろんな体調不良が出てきます。細胞や血管から水分が出入りするのを電解質が補助しているためです。

体の中での水分のやり取りや流れが悪くなると、血液に代表される体液の濃度にばらつきがでて、神経や筋肉の働きも悪くなってしまいます。ひどくなると、ごはんが食べられなくなったり、こむら返りが起きたり、力が入らなくなったり、体のあちこちがしびれたりするので、なるべく早めに対処することが大切です。

下痢だなと思ったら、状態がひどくなってしまう前に、水をスポーツドリンクに変えて摂取したり、塩や塩飴を一緒にとるようにしたりして、脱水を防ぐべく対策を行いましょう。

大腸内視鏡検査によって下痢になるかどうかは、結局のところ個人差が大きそうです。とはいえ、原因として考えられることが複数あるのですから、検査後は下痢になってもいいように対策をしておくと安心でしょう。

例えば、外出する場合はトイレのある場所をあらかじめ調べておくと、いざというときに慌てなくて済みます。また、家にいる場合でも、手軽に飲めるスポーツドリンクや塩飴などを用意しておくなどの対策ができます。

ただし、頭痛や嘔吐のような他の症状が伴ったり、痛みがかなり強かったりする場合はすぐに病院にかかるようにしましょう。