どんな手順で行う?大腸内視鏡検査の挿入までの流れ

大腸内視鏡検査の必要性はわかっていても、検査が大変ではないか、痛みがあるのではないかと心配で二の足を踏んでしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで検査を受けるまでにどんな用意をしなければならないのか、病院ではどんなことが行われるのか、検査が始まるまでの流れを具体的にご紹介します。
よく知らないままに検査の事前準備が始まってしまうと、人によっては途中で不安になったり、慌ててパニックになったりすることもあるかもしれません。
詳しい内容は検査を受ける病院によって違いますが、一般的にはどんな流れで検査の準備が行われるのでしょうか。

大腸内視鏡検査の前日までの準備

大腸内視鏡検査は、先端に小型の高感度電子カメラがついたスコープ(細い管)を肛門から大腸内に挿入して、内側から直接大腸の様子を観察する検査です。ポリープやがん、炎症や出血などの状態が確認でき、必要に応じて色素をまいたり、病変部分をズームアップしたり詳しく観察できるため、大腸がんを早期発見できる非常に有効な検査となります。
しかし大腸の内壁の状態をみるためには、腸の中をきれいにして、観察の邪魔になる異物がないようにしておく必要があります。便などが溜まっていては検査が出来ないので、あらかじめ下剤を服用して、きれいに洗い流しておかなければなりません。

検査前日の食事

検査前日の食事は、腸の中に残りづらい消化のよいものにし、夕食は軽めのものを早い時間にとるようにします。翌日の検査の時間にもよりますが、夜8時以降は絶食となります。
ただし便を出しやすくするためにも、水分はしっかり摂ってかまいません。飲んで良いのは水か白湯、お茶のみです。アルコールやコーヒー、牛乳、ジュースなどは飲んではいけません。

食べても良い食品

食事の内容はおかゆや素うどん、食パン、卵料理、スープ、柔らかく煮た根菜やイモ類、バナナ、りんご、それに柔らかいプリンやゼリーなども適しています。飴は検査当日もなめて大丈夫です。

避けるべき食品

避けておきたい食材は、いちごやキウイ、すいかなどの種のある果物、繊維が多いきのこ類やごぼう、昆布やわかめといった海藻類、こんにゃく、ひじきや切り干し大根、トマト、枝豆、揚げ物などです。また、以外に思われるかもしれませんがそばもいけません。うどんが大丈夫だからと言って、そばも大丈夫だろうと思わないように注意してください。脂分が多いラーメンやパスタなども、避けておいた方がいいかもしれません。

病院によっては検査食を推奨されることもあります。

洗浄液(下剤)で大腸の中をきれいにする

検査当日も絶食ですが、水分の制限はありません。検査の前に前処置と言って、洗浄液(下剤)を服用して、腸の中をきれいに洗い流します。
この前処置は、自宅で行う病院と、来院してから前処置室などで行う病院、どちらか好きな方を選べる病院があります。どちらかを選べる場合は、自分の性格を考えて担当医師と相談して決めるといいでしょう。自宅と病院のそれぞれのメリットとデメリットは以下のようなことが考えられます。

自宅で前処置をするメリット

・周囲に気兼ねなく、リラックスしながら下剤を服用できる
・家族がいると安心感がある
・病院の雰囲気が苦手な人は、在院時間を短縮できる

自宅で前処置をするデメリット

・体調に変化があった場合に対応できず慌ててしまう
・初めてだと、どの程度で準備ができたか判断に迷い、どうしても服用量が多くなる
・病院までの移動が不安(実際には移動中に便意を催す心配はほとんどありません)

病院で前処置をするメリット

・完全に管理されているので体調の変化を感じても安心感がある
・状態を看護師が確認してくれるので、余分に洗浄液を飲む必要がない
・持病がある人や不安症の人でも、万一の場合もスタッフが対応してくれる

病院で前処置をするデメリット

・完全個室でリラックスして前処置に臨める病院ばかりではない
・他人の目が気になる場合がある

どの方法を採用しているかは、あらかじめ病院のホームページで調べることができます。不安なことがあれば、診察や予約の段階で確認しておきましょう。

洗浄液(下剤)の特徴

大腸内視鏡検査でほとんどの人が大変だというのが、大量の洗浄液(下剤)を飲まなければならないことです。薬の種類によって若干の違いはありますが、おおむね2リットル近くの液体と500ミリリットル程度の水か白湯を飲むことになります。苦手な味のものだと、本当に飲むのが苦しいと思います。どの洗浄液を使用しているかは、病院によって異なりますが、代表的なものには、つぎのような内用薬があります。

モビプレップ

他の下剤よりもやや少なめの量で、早く洗浄が完了できる傾向にあります。味はすっぱめの濃い味で、スポーツドリンクのような甘い味が苦手な人には幾分飲みやすいようです。

ニフレック

ポカリスエットを濃くしたような味で、後味も悪く飲みにくいため、2リットルを飲むのは大変と評判はあまり良くありません。

マグコロールP

モビプレップと比較すると、洗浄にはやや長い時間がかかり、洗浄効果はニフレックよりはやや落ちるとされていますが、味はスポーツドリンクに近く、比較的飲みやすいという人が多いようです。他の下剤よりも薬価が安いので、支払いの負担が少ないという特徴もあります。

ビジクリア

他の下剤と異なり、錠剤の薬です。味のついた大量の洗浄液を飲むのが辛いという人には、水や麦茶、お茶などで飲めるこの錠剤が向いているかもしれません。
ただし錠剤は大きめで、15分ごとに5錠を2時間かけて飲む必要があり、錠剤を飲むのがあまり得意でない人には、かえって辛いことにもなる内服薬です。

ニフレックやビジクリアなど、前日に下剤の服用が必要となる薬剤もあります。途中で気分が悪くなって、検査を受けられなくなる人も稀にいるということですので、心配な方は先に確認しておくほうが良いかもしれません。

当日洗浄液の効果が完全でない場合は、下剤を追加したり浣腸が行われたりする場合もあります。完全に腸管内がきれいになり、便が薄い黄色や透明になったら、検査が開始されます。

前処置が完了してから挿入まで

前処置が完了したら、用意された検査着と下着に着替え、いよいよ検査ベッドに上がりますが、その前に腸の動きを抑えるために鎮痙剤を注射します。

さらに、緊張しやすい人や恐怖心が強い人、挿入による痛みが出る可能性がある人などには、点滴により鎮静剤や鎮痛剤を投与することもあります。これは軽い静脈麻酔で、希望に応じて量を調整してもらうことも可能です。
ぐっすりと眠っているうちに検査を終わらせてほしいとか、苦痛がないようにぼんやり画面を眺めていられるくらいがいいなど鎮静剤や鎮痛剤を希望する人は、検査の前に希望に応じてもらえるか確認しておくと安心です。病院により対応が異なります。鎮静剤を使用しない場合では、画面を見ながら医師と会話をすることもできます。

準備が終わったら肛門にゼリーを塗って、カメラを挿入していきます。痔がある方や前処置のために肛門が痛い方などは、我慢せずに伝えてください。力を抜いてらくにリラックスしていれば、それほど痛みや違和感なく挿入できます。
また肛門から空気を送り込むために、お腹が張ってきますが、検査後は時間の経過とともにラクになっていきますので、心配いりません。

検査が終了したら、しばらく安静にしたのち帰宅となります。鎮静剤を使用するために、意識がはっきりしていないことや、視覚に一時的に影響が出ることもありますので、念のため車やバイク等の運転は避けて、できれば付き添いの人に来てもらうか、迎えに来てもらうようにしたほうが安心でしょう。

以上が大腸内視鏡検査の前日から当日にかけての流れになります。こうして改めて手順を確認すると、大変だな、面倒だな、不安だなという気持ちになるかもしれませんが、多くの人が普通に受けている検査です。今では痛みもほとんど感じずに検査を受けることも可能です。

万一にも大腸がんの可能性があるとしたら、早期発見・早期治療は命に関わる重要なことですので、できるだけ先延ばしせずにすぐに検査を受けるようにしてください。
また不安なことや心配な点は、遠慮せずに医師や看護師など病院スタッフに尋ねて解決しておくことです。リラックスして受けることができれば、思ったよりもラクに検査が終わるかもしれません。