内視鏡で切除?「大腸ポリープ」について知っておきたい4つのこと!

「大腸ポリープ」とは何か知っていますか?

大腸ポリープとは、大腸粘膜の表面が盛り上がり、イボのようになった状態を指します。ポリープと一口に言っても種類は様々ですが、いずれも腹痛や下痢・便秘・下血などの自覚症状を引き起こすことは少なく、実は日常生活で気付くことはほぼありません。つまり、会社の健康診断や人間ドックで内視鏡検査を受けて、初めてポリープの存在に気付くケースが大半なのです。

それでは、大腸内視鏡検査で大腸ポリープが発見された場合、どうすればいいのでしょうか?

この記事では大腸ポリープの種類処置方法、大腸ポリープ以外に大腸内視鏡検査でわかる病気について解説していきます。
大腸ポリープや大腸内視鏡検査について正しい知識を身につけ、積極的に検査を受けてみましょう!

大腸ポリープは2種類ある!

生々しい写真ですが、こちらがポリープとがんです。


(引用)日本消化器病学会ガイドライン 大腸ポリープガイドQ&A

大腸ポリープは、大別すると2種類、さらに細かく分けると主に5種類に分かれます。その分類は以下の通りです。

この種類が違うと、発見後の対処の方法が大きく異なります。ここではそれぞれの特徴と、対処方法について見ていきましょう。

腫瘍性ポリープ

まずは、2種類に分けたうちの1つ目である「腫瘍性ポリープ」について見ていきます。腫瘍性ポリープは、良性腫瘍悪性腫瘍にわかれます。

良性腫瘍の4つの特徴

最も多いポリープ
まだ身体に悪影響はない
自覚症状なし
1cm以上のものはがんになる可能性が極めて高い
良性腫瘍は「腺腫(せんしゅ)」と呼ばれ、大腸ポリープの中で最も多いポリープです。この段階ではまだ身体に悪影響を及ぼすものではありません。特に自覚症状があらわれるようなこともなく、内視鏡検査をして初めて気付く、という人が多いです。

しかし、腺腫はがんと同様に粘膜細胞が異常増殖したものなので、そのまま放置すると徐々に肥大化することがあります。大きさは数ミリ~3cm程と様々ですが、中でも1cmを超える大きさのものは、がんになる可能性が極めて高いことがわかっています。

したがって、現代医学では腺腫は見つけたらできるだけ早めに切除することが、大腸がん発症の予防策として有効と考えられているのです。

悪性腫瘍の3つの特徴

大腸がんである
早期発見ができれば完治の可能性が高い
がんによる死亡要因の中で、大腸がんは上位
悪性の腫瘍性ポリープは、すなわち「大腸がん」です。大腸がんは日本人の罹患率が性別問わず高いことで知られていますが、早期に発見して適切な治療を施せば、高い確率で完治が見込める病気です。

しかし、発見時に大腸粘膜の深部までがんの浸潤が見られたり、他の臓器にがん細胞が転移していたりする場合は、短期間で死に至ることも決して珍しくありません。実際に最新のがん死亡データを見てみましょう。

1位 2位 3位 4位 5位
男性 大腸 肝臓 膵臓
女性 大腸 膵臓 乳房
全体 大腸 膵臓 肝臓

この表から、がんで亡くなる方のうち大腸がんが原因とされる人の割合は、男性3位、女性1位、全体2位という結果になっており、多くの方が大腸がんが原因で命を落としていることがわかります。
(引用)国立がん研究センター 日本の最新がん統計まとめ(2017)

非腫瘍性ポリープ

大腸ポリープを2つに分けたもう1つの「非腫瘍性ポリープ」は、その名の通り腫瘍には分類されないポリープ全般を指します。
非腫瘍性ポリープは腫瘍性ポリープとは異なり、基本的には正常な細胞が集まって隆起したものなので、がん化する心配はほぼないと言っていいものです。内視鏡検査で発見した場合すぐに切除することはまれで、そのまま経過観察とする場合が一般的です。

種類は様々ですが、主に「炎症性ポリープ」「過行成性ポリープ」「過誤腫性ポリープ」などが該当します。

炎症性ポリープ

「炎症性ポリープ」は、潰瘍性大腸炎、クローン病など、腸に強い炎症をもたらす病気の影響で発生するポリープです。炎症によって粘膜表面に残った傷跡のようなもので、正常細胞の塊なので、がん化する危険性は極めて低いと言われています。
炎症の度合いによっては、複数のポリープが発生することも珍しくありません。

過形成ポリープ

「過形成ポリープ」は、大腸の上皮粘膜が過形成することでできるポリープで、基本的には良性のものがほとんどです。
大腸ポリープの中で、良性腫瘍(腺腫)に次いで2番目に多いポリープになります。年を取ると多くの人に見られるため、老化現象の一種とも言えるでしょう。

過誤腫性ポリープ

「過誤腫性ポリープ」は、幼児期に多くみられるポリープで、組織の一部が過剰に増殖することで発生します。
これもほとんどは良性ですが、100個以上のポリープができる場合、「大腸ポリポーシス(消化管ポリポーシス)」という遺伝性の病気である可能性があります。大腸ポリポーシスによってできたポリープは、がん化する危険性もあると言われているので、経過観察に特に注意が必要です。

腫瘍性ポリープは内視鏡で切除可能!

前項では大腸ポリープの種類について見てきました。その際に述べた通り、腫瘍性ポリープの良性である「良性腫瘍(腺腫)」は大腸がんの前段階ともとらえられるため、内視鏡検査で発見された際にはそのまま切除することが一般的です。
ただし、最新の医学では、腺腫性ポリープの全てががん化するわけではないこともわかっており、腺腫性ポリープだからといってすぐに切除を勧めない医師もいます。

すぐに切除すべきか否かの一つの目安として、ポリープのサイズが判断材料となることがあります。世界的な調査の結果、1cm以上の腺腫はがん細胞を含む可能性が高まることがわかっているので、6mm以上の腺腫を切除の対象とする場合が最も多いとされています。

そして、切除の方法にもいくつか種類が存在します。ここでは、その方法と内視鏡で切除するメリットについて見ていきます。

内視鏡切除の方法

内視鏡切除の方法は、大きくわけて3種類あります。


(引用)日本消化器病学会ガイドライン 大腸ポリープガイドQ&A

「ポリペクトミー」は、茎のあるタイプのポリープに有効な切除方法です。ポリープの茎にスネアと呼ばれる金属製の輪をかけて、高周波の電流を流して根元からポリープを切り取ります。

「EMR」は「内視鏡的粘膜切除術」のことで、茎のないタイプのポリープを切除する際によく用いられる方法です。粘膜の下部に薬液を注入して、持ち上げられた病変にスネアをかけて切除します。
「ESD」は「内視鏡的粘膜下層剥離術」のことで、EMRで持ち上げることのできない扁平な病変や、面積の広い病変に有効な方法です。粘膜の下に薬液を注入し、病変周囲の粘膜を切開して、少しずつポリープを剥離して切除していきます。

ポリープを内視鏡で切除するメリット

内視鏡による切除は、開腹手術と比べると患者への負担が少なく済むという大きなメリットがあります。症状次第ではありますが、内視鏡切除を受けてその日中には帰宅できる場合がほとんどです。もちろん術後しばらくは出血する可能性もあるので、定期的な通院と刺激が少なく消化のいい食事に気を配り、医師からOKが出るまでは激しい運動・入浴・飲酒などは控えるようにしましょう。

そしてポリープ切除術は保険が適用されます。入院しない場合の費用の相場は以下の通りです。

1割負担 3割負担
内視鏡切除 約5,600~7,400円 約16,000~22,000円

金額は、病院、ポリープの大きさ・数、使用する薬剤の種類等によって変動します。

またそもそも病変が見つからず、大腸内を観察するだけで終了した場合の費用は、3割負担で約6,000円程度になります。詳しくは各医院にお尋ねください。

大腸内視鏡検査では様々な病気がわかる

大腸ポリープ以外の病気に関しても、内視鏡検査を受けることで早期発見が可能です。

潰瘍性大腸炎

著名人が罹患歴を告白したことで度々話題になる「潰瘍性大腸炎」も、内視鏡検査がきっかけで判明することが多い病気です。

現在の首相である安倍晋三内閣総理大臣、モデルとして活躍されている高橋メアリージュンさん、タレントの若槻千夏さんなど多くの著名人もこの病を患ったといわれています。

現代の医学をもってしても原因が特定できておらず、国の「特定疾患」に指定されている難病で、食生活の欧米化などの影響もあり、日本でも年々患者数が増えていると言われています。症状が重いと血便・激しい腹痛・下痢などが慢性的に続き、日常生活に支障をきたすこともありますが、薬の服用や食事に注意することで、ある程度は病状をコントロールすることが可能です。

クローン病

小腸や大腸に原因不明の炎症や潰瘍が生じる「クローン病」も、内視鏡検査を行うことででわかる病気の1つです。血液検査などで診断がつく場合もありますが、内視鏡検査を行うことで病状を正確に把握することができるので適切な治療に役立ちます。

クローン病は激しい腹痛や下痢などの症状がみられる「活動期」と、症状が落ち着く「寛解期」を繰り返します。活動期が長引いたり、活動期から寛解期に移行する「再燃」を頻繁に繰り返したりすることで、腸の状態が悪化し、外科的手術が必要になる場合もあります。そのため、症状に合った適切な治療を行い、できるだけ長く寛解の状態を保つことが重要とされているのです。

潰瘍性大腸炎もクローン病も、大腸内視鏡検査で早期に発見することができれば、適切な治療を行い、症状の悪化を防ぐことができます。症状があってから検査を受けるのではなく、健康なときから定期的に内視鏡検査を受ける習慣を身につけることは、生活習慣を見直すことにもつながるので、病気の予防という観点でも一役買ってくれることでしょう。

最後に

大腸ポリープは大腸内視鏡検査がきっかけて判明することが多く、がん化の恐れのある腺腫性ポリープの場合にはそのまま切除することが可能です。開腹手術に比べて患者への負担も少なく大腸がんの予防にもつながります。定期的な内視鏡検査は早期発見・早期治療に役立ち、また病気にならないための生活習慣の見直しという意味でも有用です。そして、がんが発覚したら速やかに手術・抗がん剤投与などの治療を進めていくこと、生活習慣や日々の食事内容を見直し健康的な生活を送ることが、何よりも大切になります。

現在は患者の精神的ストレスに配慮して、内視鏡検査を行ってくれる病院も増えています。ぜひ自分に合った病院を探し、定期的な検査を習慣化しましょう!

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