大腸内視鏡で鎮静剤を使うメリットとデメリットは?

大腸内視鏡検査は、先端にカメラを装着した細い管(スコープ)を肛門から挿入して、大腸の内側をモニターに映し出して観察する検査です。一般的には「大腸カメラ」とも呼ばれています。この検査を行うことで炎症やポリープの状態を観察したり、腫瘍がないかを確認することができます。また、小さな腫瘍やポリープであれば、外科手術を行うことなく、内視鏡を使用して切除することも可能です。

しかし、体内にカメラを挿入するのはやはり少し怖いので、鎮静剤が使用できるのであれば使いたいという人も多いでしょう。そこでこの記事では、大腸内視鏡の際に鎮静剤を使用するメリットとデメリットについて解説します。

大腸内視鏡検査はどのくらい痛いの?

実際に大腸内視鏡検査を行うと、どのくらいの痛みを感じるのでしょうか。実は、この検査で患者さんが感じる痛みの程度は、検査を行う医師の技術力や患者さんの体の様子、心の状態によって変わり、かなり個人差があるようです。

挿入時に感じる痛みは、内視鏡が腸管に入ったり、腸管の内部を広げるために空気を注入することで腸管が広げられたりすることで感じる痛みが多いです。腸は体の中で膜に付着してぶら下がった状態になっているため、ゆらゆらと揺れてしまい内視鏡が思うように入らず、腸壁に当たって腸を押し広げることで痛みを感じることもあります。

痛みのために力が入ってしまい、大腸が収縮して狭くなってしまうと、内視鏡を奥まで進める事ができなくなります。それでも検査のためには奥まで押し込まないといけないので、結果的に更に強い痛みを感じてしまうケースもあるようです。

しかし、最近では内視鏡専門の科が設立され、技術力の高い専門医が検査を行う病院もあり、「思ったほど痛くなかった」と感じる患者も一定数います。検査のための空気の注入も、必要以上の空気を注入しないようにしたり、体内に吸収されやすい炭酸ガスを使用したりすることで、お腹の張りや痛みを抑える工夫がなされている病院も多いです。

とはいえ、特に初めて検査を受ける患者さんは、肛門から内視鏡を挿入すること自体に恐怖や緊張を感じてしまう人が少なくありません。また、自分がどれだけ痛みを感じるかは、あまり見当がつかないという人もいます。不安であれば、医師に相談して鎮静剤や鎮痛剤を使用すると、安心して検査に臨むことができるでしょう。

鎮静剤を使用するメリットとは

鎮静剤を使用するメリットは、なんと言っても検査の苦痛や不快感がやわらぐことです。鎮静剤は、意識をぼんやりとした状態にさせるため、挿入時の不快感やお腹の張り、痛みを感じにくくなります。手術の時のような全身麻酔とは違うため、意識を失って眠ってしまうことはなく、鎮静剤を使用せずに検査を受けた場合と同じように医師と会話をして、一緒に内視鏡のモニターを見ながら検査を受けることが可能です。検査中に疑問に思ったことはその場で医師に質問することもできます。

意識をぼんやりとさせるということは、体に余分な力が入らず、リラックスした状態になるということです。これは、内臓についても同じです。鎮静剤を使用することで大腸が弛緩し、内視鏡で状態を観察しやすくなります。特に大腸は、ヒダになっている部分が影になり、隠れている部分のポリープや腫瘍などを見逃してしまう可能性があります。しかし、鎮静剤を使用するとそのヒダを充分に広げることができるため、より精密な検査を行うことができます。

また、大腸内視鏡検査は一回やったらおしまいというものではなく、その後の経過観察などで何回か検査を受ける必要があることもあります。一定の年齢を超えると、定期的な検査が推奨されるようにもなります。そんな時に、鎮静剤を使用すれば、ストレスを感じることなく検査することができるでしょう。「痛いし苦しいから検査するのやめよう」と思ってしまったために病気の発見が遅れると、取り返しのつかない事態になってしまいます。上手に痛みやストレスを軽減させて、定期的に内視鏡検査を受ける習慣をつけることが重要です。

鎮静剤を使用するデメリットとは

鎮静剤を使用すると多くのメリットがあり素晴らしいもののように感じますが、もちろんデメリットもあります。実際に大腸内視鏡検査で鎮静剤を使用する場合には、それらのデメリットについてもしっかり理解した上で使用しなければなりません。

第一のデメリットは、検査終了後に自動車、バイク、自転車などを運転することができない点です。鎮静剤は意識をぼんやりとさせる薬なので、例え自分では薬の効果が切れたと思っても身体には影響が残っている可能性があり、乗り物や機械の運転は大変危険です。そのため、検査を行う病院へ向かうには公共交通機関で向かわなければなりません。自宅から遠い病院で検査を受ける場合には不便です。

第二のデメリットは、検査終了後の1時間を病院で過ごさなければならない点です。鎮静剤の効果からしっかりと目を覚ますためにはある程度の時間は必要で、鎮静剤を使用しない場合に比べてどうしてもかかる時間が長くなってしまいます。内視鏡検査は外科手術よりも気軽に受けられる点がメリットであるのに、それを打ち消してしまうデメリットだと言えるでしょう。

また、まれにではありますが、鎮静剤の副作用によって呼吸が浅くなり、脳などに酸素が充分供給されなくなったり、鎮静剤の効果によって大腸の痛みを感じなくなるため、気が付かないうちに大腸を傷つけてしまったりする危険性もあることを頭に入れておきましょう。もっとも、これらの重篤な副作用については、それぞれの病院でしっかりと対策がとられているので、心配しすぎる必要はないでしょう。

鎮静剤と鎮痛剤の違いは?どちらがいい?

大腸内視鏡検査で使用する薬には、「鎮静剤」と呼ばれるものと「鎮痛剤」と呼ばれるものがあります。名前が似ている二つの薬ですが、その効果には大きな違いがあります。鎮静剤は、意識をぼんやりさせたり、うとうとした状態にさせたりする効果のある薬です。鎮痛剤は検査時の痛みを取り除く効果のある薬です。それぞれの薬に複数の種類があり、患者の病歴や体調などによって使い分けます。

大腸内視鏡検査では、鎮静剤も鎮痛剤も使用せずに検査を行うことがあります。これは、検査時の痛みの感じ方に個人差があり、あまり痛みを感じない患者に対して不必要な投薬を行わないためです。しかし、検査中に痛みを強く感じたり、検査前に不安を感じたりする場合には、それぞれ適切な鎮痛剤や鎮静剤が投与されることがあります。

最近では、「痛みを感じさせない大腸内視鏡検査」を掲げ、初めから鎮静剤か鎮痛剤のいずれかを投与する病院、鎮静剤と鎮痛剤の両方を投与する病院も増えてきました。一方で、鎮静剤などを使用した際のデメリットを回避するために、なるべく鎮静剤などを使用せずに検査を行う病院もあります。自らの希望に合わせて、治療方針に納得のいく病院を選ぶことが大切です。

鎮静剤と鎮痛剤は全く効果が別の薬なので、どちらがより強力であるとか、どちらの方がよりおすすめであるということはありません。医師も患者の意向や体調などを考慮して、最善の方法を提案してくれます。いずれも使用する前には医師とよく相談して、無理なく安心して検査を受けられるようにしたいですね。

鎮静剤を使用する際のメリットとデメリットについて、お分かりいただけたでしょうか。大腸内視鏡検査は内視鏡を体内に挿入するため、どうしても多少の痛みや不快感がある検査です。しかし、鎮静剤を使用すれば患者にかかる負担はかなり少なくなります。

一方、鎮静剤にはデメリットもあります。使用する際にはメリットだけでなくデメリットにもしっかり目を向けなければなりません。その上で、自分が一番望む形で検査を受けましょう。不安なことやわからないことがあれば、どんな些細なことでも検査を受ける前に医師に相談して、解消しておくことが大切です。