男性は大腸内視鏡検査を受ける機会が多い?

病気は突然やってきます。というよりも気づかないうちに進行していて自覚症状が現れた時には病状が悪化していたり、最悪の場合は手遅れだったりします。

特に働き盛りの男性が病気のなってしまうと本人も辛いでしょうが、一緒に生活をしている家族も大変です。会社員であれば会社の定期的にある健康診断で自分の健康状態をチェックできますが、自営業や学生・定年退職された方や会社に定期的な健康診断の制度がない方は、ご自身で地域の保健センターや医療機関に予約を取って健康診断を受けなければいけません。

特に男性は一般的に女性に比べると腸が弱いと言われて、大腸の不調を訴える方が多いとのではないでしょうか?ここでは男性が大腸内視鏡検査を受ける機会が多いのはどうしてなのか考えてみたいと思います。

男性はお腹が弱いと言われているのはなぜ?

一般的に男性はお腹が弱いと言われています。赤ちゃんや小さな子どもでも個人差はありますが、女の子は便秘気味で男の子はお腹が緩い子どもが多いようです。

なぜ男性は胃腸が弱いのでしょうか?男性の胃腸が弱いのは、男性は女性に比べるとストレスに弱いと言われています。過敏性腸症候群は精神的なストレスによって腸が過敏になり便秘や下痢・腹痛を長期間に繰り返す症状が続く病気です。

過敏性腸症候群は心因性が原因で胃腸に異常を起こす病気で、男性に多く血液検査や大腸内視鏡検査をしても異常が見つからないことや、ストレスが症状を悪化させていることから心身症の一つと考えられています。

人はストレスを感じると癒しホルモンといわれる「オキシトシン」が出てストレス感じさせないようにします。しかし男性は男性ホルモン一種である「テストステロン」があり、「テストステロン」は男性の性行動や性機能・攻撃性などを司り男性にとっては不可欠なホルモンなのですが、このテストステロンが影響してオキシトシンが出にくくなるので、男性はストレスに弱いと言われています。

ストレスがなぜ胃腸の不調を招くのか原因はまだはっきりとはわかっていませんが、最近の研究ではストレスを感じるとストレスホルモンが脳下垂体から出て、その影響で胃腸の動きに異常が出てくるといわれて、こういった症状は感情表現が苦手な人ほど出やすくなる傾向があるようです。

また男性は女性に比べると高カロリー・高脂質の食事を取る機会が多く、飲酒や喫煙の習慣も男性の方が多くなり朝食は食べず、昼はコンビニ弁当で済ませ、夜は接待で外食をする。こういった食生活を続けていると必然的に胃腸にも負担がかかり、生活習慣病になる確率も高くなってくるというわけです。

「ストレスと生活習慣」現代社会において切っても切れない二つの問題が胃腸に影響しているということです。

大腸内視鏡検査で見つけられる病気

ストレスが胃腸の病気に大きく影響することはわかりましたが、男性が気を付けなければいけない胃腸の病気はどんなものがあるのでしょうか。

過敏性腸症候群

精神的なストレスが原因で腸が過敏な状態になり、下痢や便秘の症状が長期間続きます。治療法はストレスを取り除くようにすることも大切ですし、下痢や便秘を抑える薬や場合によっては精神安定剤を服用します。

大腸ポリープ

大腸がんは大腸ポリープの中でも腺腫と呼ばれる腫瘍が病変してがん細胞に変化することが多く、がん細胞に病変する前のポリープの状態で切除するのが大腸がんの最大の予防だといわれています。
大腸ポリープはがん検診の便潜血検査で発見されることはあまりなく、大腸内視鏡検査をして初めて見つかることが多く、胃腸に不安のある方は定期的に大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

大腸がん

日本人の死亡原因のトップはがんです。その中でも大腸がんは男女ともに部分別のがんでの死亡原因のベスト3に入っています。大腸がんは年々増加傾向にあり、原因は食生活の変化で高たんぱく・高脂質の取りすぎと、食物繊維が不足して腸内に悪玉菌が多くなり発がん物質を作ってしまうからだと言われています。

最近では女性のがんでの死亡原因のトップが大腸がんという結果が出ていますが、大腸がんになる人の割合は女性よりも男性のほうが多く、それでも女性よりも死亡する率が少ないのは男性の大腸内視鏡検査を受ける機会が女性に比べて多いからではないかと考えられます。

大腸がんは比較的治りやすいがんだと言われていて、早期に発見・治療した場合の5年生存率は90%と越えます。早期発見をするには定期検査は不可欠です。

大腸内視鏡検査のメリット・デメリット

大腸内視鏡検査を受けるメリットはたくさんあります。まず細い管の先端にカメラを装着して肛門から挿入してリアルタイムで直接大腸内を観察でするので、小さな病変や平坦なポリープ・出血などを見つけることもでき、特に気になる部分を拡大させてモニターに映し出すことが出来るので、正確に診断ができます。

検査途中に悪性を疑う腫瘍が見つかった場合には組織を採取して詳しく調べることもできます。また大腸内視鏡は小さい腫瘍やポリープは先端部分に処置器具を取り付けて切除することも可能で検査と治療を同時に行えるのは最大のメリットだと言えます。

次に大腸内視鏡検査を受けるデメリットです。肛門から人さし指くらいの太さのファイバースコープと呼ばれる細い管を挿入するので多少なりとも体に負担がかかります。また下剤を服用して腸内を空っぽにしなければいけないので、前日から下準備が必要になります。

また稀に偶発症と呼ばれる突発的な有害事象がおこる可能性もあります。どのような事が起こっても病院では対処できるように準備してありますので安心して検査を受けていただけます。

どんな検査でも多少のデメリットな部分は伴いますが、デメリットを超えるメリットがあります。大腸の病気を正確に診断するには大腸内視鏡検査が一番有効な方法だと言えるでしょう。

大腸内視鏡で出来る治療法

切除する方法は3種類ありポリペクトミー・EMR・ESDと呼ばれています。

ポリペクトミー

病変部分に生理食塩水を注入して持ち上げてスネアという輪状の処置器具をファイバースコープの先端に装着して、高周波電流を流して引っかけて切除する方法です。この治療法は病変が小さく2cm未満でリンパ節に転移がなく、茎がある病変に用いられ、早期大腸がんが対象になります。

EMR(大腸内視鏡的粘膜切除術)

病変に生理食塩水を注入して持ち上げてスネアで引っかけて切除します。ポリペクトミーと同様に病変が小さくリンパ節に転移がなく、茎がない病変に用いられます。

ESD(大腸内視鏡粘膜下層剥離術)

2012年4月より保険適用となり幅広く使われるようになった治療法です。病変の切り取りたい部分の周辺をマーキングし、病変部分の下に生理食塩水を注入して浮かせた状態にし、電気メスでマーキングした部分の外側を切開して病変を少しずつ剥ぎ取っていきます。
出血がある場合は止血をします。リンパ節に転移がなく早期がんで一定の大きさであれば開腹手術をせずに、ESDで病変を取り除くことが出来ますが、病変をきれいに切除するには医師の手技が大きく関係し、医師の技量が問われる治療法です。

腸の病気の原因はストレスや生活習慣が大きく影響することがわかりました。女性に比べて男性はストレスに弱く、飲酒や喫煙や食生活が乱れがちな人が多く、そうなると腸に異常を感じることが増え、消化器科を受診し大腸内視鏡検査を受ける機会が多くなるというわけです。

反対に大腸内視鏡検査を受ける機会が少ない女性は、大腸に異変を感じた時は大腸がん進行している場合が多く、手遅れなってしまうのではないでしょうか?男女共に定期的に大腸内視鏡検査を受けることが重要だと言えます。