腹痛や下痢に苦しんでいる方へ!20代でも受けられる大腸内視鏡検査

「がん検診」「大腸内視鏡検査」は、何歳の人が受けるものだと思いますか?

きっと、40歳以上のある程度の年齢の人が受けるイメージがあると思います。もちろん若い人にとってはまだ体に異常を感じるには早く、少々無理をしてもすぐに元気になると言う人が多いと思います。しかし、必ずしも全員がそうではありません。
中には、体の中の異常を感じていても「まさか自分が…」と気のせいにして、大きな症状が出た時には病気が進行していて、気がついたときには手遅れだった…と言うこともありえます。
そこで今回の記事では、20代の方でもお腹の異常を感じたときに大腸内視鏡検査を受ける必要性検査内容大腸の病気についてご紹介したいと思います。ぜひ最後までお読みいただき、自分の症状と照らし合わせて、念のためにも検診を受けに行きましょう!

大腸内視鏡検査ってどんな検査?

いつ受ける?何を検査する?

腹痛が長期的に続いたり、激しい下痢や便秘に悩まされたりしたときに病院やクリニックを受診します。始めは血液検査や便潜血検査といって便の中に血液が混じっていないかを検査します。その後陽性反応が出ている場合や、薬の服用をしてしばらく様子を見てもまだ症状が改善されない場合は、もっと詳しく検査するために大腸内視鏡検査を勧められます。

大腸内視鏡検査とはファイバースコープと呼ばれる直径1cmほどの細い管の先端に小型のカメラを装着して、大腸内部を詳しく観察する検査です。大腸内視鏡検査の特徴は、リアルタイムで直接大腸の中を観察することができ、必要に応じて病変をズームアップして大きくテレビモニターに映し出して見ることができます。
大腸にはたくさんの病気が存在しますが、大きく「炎症性腸疾患」「腫瘍性疾患」に分かれます。特にいくつかある大腸の炎症性の病気は10・20代の若者を中心に発症することが多く、腹痛・下痢・血便・体重減少など同じような症状を訴えます。血液検査や問診などでは病気の識別が難しく、大腸内視鏡検査をして直接病変を観察して診断をします。

以前は大腸内視鏡検査といえば苦しくて、体への負担が大きく大腸内視鏡検査と聞くと躊躇される人もいましたが、最近では内視鏡の進歩はめざましく少しでも患者さんの負担を減らすように改良されています。また長い腸を、腸壁を傷つけずに検査していくには医師の手技が必要になりますが、日本の内視鏡技術は世界でもトップレベルで、特に大腸内視鏡の挿入技術、小さながん細胞を見つける技術、内視鏡治療のレベルは高く、世界各国で講演や実技指導を行っています。ですので安心して検査を受けていただくことができるのです。

検査の流れ

検査前日

夕食は20時ごろまでに、消化の良いものを食べる。医院によってはこのタイミングで下剤を飲む場合もある。

検査当日

水、お茶以外(食事、他の飲料、たばこ、薬等)は禁止。検査後は車の運転ができないため、車では来院はできない。

前処置室

下剤を数回に分けて、合計約2L飲む。何回かトイレに行くと、液体のような便(薄い黄色・透明)が出るようになる。

処置

鎮静剤を注射し、肛門から内視鏡を挿入する。モニターで腸内の様子を観察する。15~30分で終了する。

検査後

1時間程度休んでから、撮影した画面を見つつ検査の結果を聞く。採取して病理診断に回した場合は、検査結果は後日になる場合がある。
おなかが張るのでオナラを出していく。当日は激しい運動、車の運転、飲酒、湯船につかることは禁止になる。

大腸内視鏡検査で見つかる腸の病気:炎症性腸疾患

免疫システムとは体内に入った細菌やウイルスを追い出そう体が反応することです。しかし、腸内に異物が入り込み免疫システムが正常に機能せずに、必要以上に炎症が起こり腸自体を傷つけてしまう症状を炎症性腸疾患と言います。
炎症性腸疾患は、主にクローン病潰瘍性大腸炎の2つがあり、両方とも国の難病指定を受けています。炎症性腸疾患は慢性の病気で、原因も不明のため、完治はほとんど望めず上手に付き合っていくしかありません。さらに、クローン病・潰瘍性大腸炎は通常の検査では見つかりにくい病気で、大腸内視鏡検査で発見されることがほとんどです。

クローン病

小腸や大腸や肛門などの大腸全体を対象に炎症ができ、場所は一か所にはとどまらず腸壁の深い部分へと炎症が進行していき潰瘍になっていきます。
主な症状は下痢と腹痛ですが、病変部位(小腸・大腸・両方)によって異なります。また、腸管・腸外の合併症も多いことが特徴です。クローン病は、10代後半から20代前半の若い世代に多い病気です。男女比は2:1と男性の方が発症率が高くなっています。日本では2014年時点で約4万人の患者がいます。

(引用)難病情報センター クローン病(指定難病96)

潰瘍性大腸炎

大腸の粘膜に炎症をおこし、びらんや潰瘍ができる病気です。症状は下血と血便が出るのが特徴です。最近よく見られる病気で原因はまだ解明されていません。また、病変の広がり方、経過状況によって分類がなされます。この病気の特徴は急な腹痛と下痢です。コントロールがきかず、いつ来るかもわからない急な腹痛と下痢で日常生活に支障をきたすこともしばしばあります。
潰瘍性大腸炎も20代の患者さんが一番多く若い世代に多い病気です。国内の患者数は2014年時点で約16万人。様々な著名人もこの病気を患ったといわれています。

(引用)難病情報センター 潰瘍性大腸炎(指定難病97)

大腸内視鏡検査で見つかる腸の病気:がん

大腸がんについて

年齢に関係がなく、幅広い年代の人がなる可能性がある大腸の病気は大腸がんです。

1位 2位 3位 4位 5位
男性 大腸 肝臓 膵臓
女性 大腸 膵臓 乳房
全体 大腸 膵臓 肝臓

上の表は2017年のがん死亡データになります。男女ともに大腸がんは年々増加しているガンで、特に女性のガンの死亡原因の1位になっています。

(引用)国立がん研究センター グラフデータベース

こちらのグラフは、年齢別の大腸がん発症数です。見てみると50代以降の人が大腸がんになる確率が高いですが、20代・30代の人でも大腸がんを患う方もいらっしゃいますので安心はできません。

大腸がんは早い段階で見つかり治療すると5年生存率は90%以上と他のガンに比べても非常に高く、完治しやすいガンだといえます。早期大腸がんの治療は大腸内視鏡を使い、内視鏡でがん細胞を切除するので体に負担が少なく、入院も短期間で済みます。ただ初期段階では自覚症状がほとんど出ず、症状が出てきたときにはすでにガンがかなり進行をしていて治療が困難になるか、手遅れになっている場合が多いです。

大腸がんの原因は食生活が密接に関係していると言われ、高たんぱく・高脂肪の取りすぎや食物繊維の不足で悪玉菌が増殖し、発がん性物質を発生させて腸内のポリープを病変させるといわれています。ですので将来的に大腸がんを発生させないためにも、若いうちから予防しなければなりません。
大腸がんの予防に効果的なのは食生活を見直すことです。例をあげると、穀物や豆類、チーズや牛乳・魚など良質のたんぱく質を取るように心掛け、食物繊維やビタミンC、ビタミンEを積極的に取るようにしましょう。またご家族の中で大腸がんになったことのある人、その他の大腸の病気に患ったことのある人がいるのならば、若くても定期的に大腸がんの検査をすることをおすすめします。

大腸にできるポリープとは?

大腸ポリープは大腸の粘膜層にできるイボ状のできもののことです。大きく分けると腫瘍性・非腫瘍性に分類され、腫瘍性の悪性のものがガンになり、良性のものは腺腫(せんしゅ)と呼ばれています。大腸ポリープの80%は腺腫だと言われていますが、腺腫は長期間放置しておくとがん化する可能性があるので、見つけたら早い段階で切除することが望ましいです。

大腸ポリープの切除は大腸内視鏡を使って切除する治療が一般的で、代表的なものは「ポリペクトミー」「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」「内視鏡的下層粘膜剥離術(ESD)」と呼ばれるもので、どの治療法を用いるかはポリープの大きさや形によって変わってきます。

(引用)日本消化器病学会ガイドライン 大腸ポリープガイドQ&A

切除したポリープはすぐに病理検査になり、ポリープが腫瘍性であった場合は別の場所にもポリープができる可能性があるので、定期的に内視鏡検査を受けなければなりません。しかし、ポリープが6㎜未満で小さい場合には定期的に検査をうけて様子をみるようになります。将来的にがん化する可能性のある、腫瘍性のポリープはきちんと切除して少しでも大腸がんになる可能性を減らしましょう。
一方、非腫瘍性ポリープは、切除せずそのまま様子見をすることがほとんどです。炎症性腸疾患の影響、老化、幼児期などによって引き起こされます。

まとめ

大腸の病気は年齢に関係なく患います。特にクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は10代後半から20代の若い世代の人が多く発症されることが判っています。
また大腸がんの原因は食生活が大きく影響されるといわれ、若い頃からきちんとした食生活をすることが大腸がんの予防にも繋がります。大腸の病気はほとんどが腹痛・下痢・血便の症状が出るので、問診や血液検査だけではどの病気かわかりにくいものが多いです。放置しておくと危険なので、やはり病気を識別しやすい大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。ぜひ思い当たる症状があれば、すぐに受けに行きましょう!

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