大腸内視鏡検査で判明する病気の種類

消化器系の疾患は、自覚症状がないうちに症状が悪化し、最終的にがんになってしまう場合もあります。内視鏡検査で判明する大腸の病気にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、大腸がんの発現傾向や検査方法、内視鏡検査で分かる病気をまとめます。

大腸とはどんな臓器?

大腸とは、食道から胃、小腸まで続く消化器系の後半部分に位置する臓器です。肛門まで約2mの長さがあります。大腸と一口にいっても細かく区分されており、それぞれに名称が与えられています。まず、盲腸は右下腹部にある小腸とのつなぎ目(回盲弁)で、そこが「大腸」の入り口です。その次は外から見て時計回りにぐるりと回るようにある結腸が続きます。肛門に近いところから20cmぐらいの間は名前が変わって直腸と呼ばれています。そして、最後は肛門につながっています。
まとめると、結腸は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸をまとめて呼ぶ名称で、結腸と直腸を総合して大腸と呼んでいるのです。どの部位もがんができる可能性は必ずありますが、多いのは肛門に近い直腸やS状結腸に発生するケースです。排便時の刺激が原因のひとつであると考えられています。

大腸がんは、さまざまな種類があるがんの中でも特に多く、高齢になるほど発症しやすいことが知られています。日本国内の大腸がんによる死亡者数は年間5万人で、がんの中でも肺に次いで2番目に発症例が多い部位で、日本人の4~5%は大腸がんが原因で亡くなっています。罹患数(大腸がんと診断される年間患者数)はさらに多く、13万人を超えます。また、日本人は10人に1人が一生のうちに大腸がんと診断されるということも分かっています。

40代から大腸がんの患者数は増えはじめます。がんというと、高齢者が発症するイメージがありますが、働き盛りの人でも発症例が多いです。また、30年前と比較すると、大腸がんに罹患する方は2~3倍に増えています。この背景には、食生活の欧米化が関係しているといわれています。また、検診が気軽に行えるようになり、早期発見できるケースが増えたため、大腸がんの患者数がデータ上増えているという可能性もあります。

大腸内視鏡検査とは

結腸と直腸肛門からなる消化器官が大腸です。小腸で消化吸収された後に残った腸内容物を、水分を吸収しつつ大便に加工します。大腸粘膜のあるところは、どこにでもがんができる可能性があります。

大腸がんにかかる割合を年齢別に見ると、40代あたりから増加し始め、その後は高齢になるほど発症する確率が高くなります。40歳を過ぎた方は、一度大腸がんの検査を受けたほうがいいでしょう。

大腸がんは、初めはポリープの形で発現するものが多く、ある程度の大きさになるとポリープの中にがん細胞が混ざり始め、最終的にすべてががん細胞に置き換わってしまいます。そのため、ポリープのうちに早期発見をすることが大切です。大腸内視鏡検査と治療はポリープを発見し治療する上で比較的簡単に行える、効果的な方法です。

内視鏡検査で分かる主な病気

クローン病

クローン病は炎症を起こしたことが原因で腸に潰瘍ができる病気です。腸だけ限らず、口から食道、胃、小腸、大腸、肛門まで消化管すべてに潰瘍がでることも珍しくありません。クローン病の原因は、現在でもまだよく分かっていません。主な症状は下痢、腹痛で出血を起こすことはあまりありません。近年では効果的な薬や治療法もでてきています。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは、消化管に原因不明の炎症が発生し、大腸の粘膜にもそれが広がり、びらんや潰瘍ができる病気です。例えば、胃潰瘍は炎症によって潰瘍ができる病気です。現代非常に増えている病気ですが、その原因はあまりよく分かっていません。特徴的な症状は下血です。炎症なので、肺炎や気管支炎のときと同じように内服薬での治療が基本です。

大腸憩室症

大腸憩室とは、大腸粘膜の一部で腸管内圧が上昇することで嚢状になり、腸壁の外に突出したものを指し、大腸憩室症はこれが多発した状態のことです。大腸憩室症は比較的高齢者に多い疾患です。
自覚症状がない場合が多いですが、症状が悪化すると下痢や軟便、便秘、腹痛などを引き起こします。考えられている主な原因は、食の欧米化と共に肉食が増え、食物繊維の摂取量が減ったことで便秘になりやすくなり、腸管内圧が上昇してしまうというものです。さらに、加齢によって腸管壁が脆弱化することも一因であると考えられます。治療は薬物の服用が一般的です。

虚血性腸炎

虚血性腸炎は大腸の血液循環が悪くなり、必要な酸素や栄養分が大腸に届かなくなることで、炎症や潰瘍を生じる疾患です。大腸粘膜への血の巡りが悪くなることで、突然の腹痛や出血などが起こります。

虚血性腸炎は、複数の要因が重なることで発症するといわれています。高齢者に多い疾患ですが、ひどい便秘を持つ若い女性にもまれに発症することがあります。

最新の内視鏡検査とは

超音波内視鏡を使った検査は、内視鏡の先にエコー装置が付属した内視鏡を使って行われます。一般的に「胃カメラ」としてよく知られているエコー検査は、胃腸内の腹壁やガス、内臓脂肪、骨などが画像を妨害してしまうことがありますが、超音波内視鏡は問題のある目的部位の近くから超音波をあてることができるので、より正確な観察ができるというメリットがあります。
大腸以外でも、食道や胃、十二指腸の検査で用いられ、検査対象の臓器の内部だけでなく、周囲の臓器の健康状態や血管、リンパ節の情報まで取得することができます。特に、膵、胆道の精密検査として使用されることが多く、慢性膵炎や膵癌、胆道癌、膵嚢胞性疾患や胆石などを発見することができます。ただし、このようにさまざまな面で優れている超音波内視鏡でも、患部が良性か悪性かを鑑別する診断や組織型の特定など、質的診断が求められる場合はまだ限界があるといわれています。

さらに詳しく検査できる技術としては、超音波内視鏡下穿刺吸引法があります。これは、超音波内視鏡で観察された病変に針を刺し、細胞組織を採取して行う検査法です。検体を採取する際に使われる針は内視鏡の先端にあり、消化管の壁越しに問題のある箇所に向かって動かせるようになっています。超音波内視鏡の優れた病変描出能に病理診断を追加することで、超音波内視鏡の弱点であった質的診断を可能にする診断技術で、現代世界中に普及している内視鏡検査のひとつです。
例えば、リンパ節や膵疾患に対する病理診断法の中では、超音波内視鏡下穿刺吸引法は現在最も正確に診断を下すことができる技術で、偶発症の発生率が低いことも明らかになっています。外科的に開腹、開胸生検を行う場合と異なり、皮膚表面に傷も残らず、翌日から食事と取ることもできる、体に負担の少ない検査方法です。

このような内視鏡検査が行われる主な目的は、腫瘍性病変の病理学的診断と、癌の進展度診断です。対象となるのは消化器疾患にかかわらず消化管から観察ができる病変で、具体的には膵腫瘤性病変や消化管粘膜下病変、後縦隔腫瘤、腫大リンパ節、腹腔内腫大リンパ節などです。

ただし、出血傾向のある人や、手技的問題(病状が明確に描出できない、穿刺ライン上に癌や血管などが介在する)がある場合は、手技に伴うリスクが大きく、一般的に検査を行うことありません。検査前にこのような項目をじっくり評価してから、実際の検査を始めることになります。
現在分かっている報告では、上述の2つの方法で検査した場合の偶発症発生率は2%以下であり、比較的安全な手技とされています。軽症な例では、出血や感染、穿刺部の一過性疼痛、急性膵炎、高アミラーゼ血症など、重症な場合は、消化管穿孔、腫瘍播種、重症急性膵炎などが報告されていますが、非常に稀なケースです。また最近では、閉塞性黄疸や腹腔内膿瘍、膵仮性嚢胞に対するドレナージ、腹腔神経叢ブロックに対して内視鏡検査が応用されることもあります。

超音波内視鏡を診断目的で使う場合は、得られた検体をその場で病理診断する迅速細胞診を取り入れることもできます。この迅速細胞診は、診断能向上に貢献するだけでなく、一回の検査での穿刺回数を大幅に減らすことで、偶発症の発生をさらに低減することができます。さらに治療的超音波内視鏡として、内視鏡下ドレナージも積極的に行われており、検査や治療の所要時間はまちまちですが、約15~30分で終わることがほとんどです。多くの医療機関では鎮静剤や鎮痛剤を併用することで、患者さんの負担をできるだけ減らす努力が行われています。

ここでは、大腸がんの概要や、内視鏡検査で見つけられる疾患、最新内視鏡技術などをまとめました。がんはポリープのような軽い腫瘍のうちに発見し、治療することがとても大切です。特に40代、50代の方は、自覚症状が全くなくても、一度内視鏡検査を受けてみることをおすすめします。