【下痢・腹痛・血便の方必見!】感染性腸炎は大腸内視鏡検査で発見!

感染性腸炎は下痢や腹痛などの症状が激しく、一度かかると非常に辛い思いをする病気ですが、特徴的な症状は少ないことが知られています。原因となる病原菌は様々なものがありますが、通常の採取法による便培養の病原菌同定率は非常に低いため、原因を特定することは簡単ではありません。しかし、内視鏡検査を行うことで特徴的な所見を見つけ、確定診断を行うことが可能です。病変部から確実に腸液の吸引などを行えるため、診断の精度がより上昇するというメリットもあります。この記事では原因ごとに内視鏡検査で見られる特徴的な所見をまとめました。

内視鏡検査とはどんなもの?

内視鏡検査とは、細長い内視鏡(スコープ)の管を体内に入れ、病変部をモニターに映し出して観察する検査方法です。胃や食道などを観察する場合に用いる、鼻や喉から内視鏡を入れる検査は「胃カメラ」と呼ばれ、大腸や小腸などを観察する場合に用いる、肛門から内視鏡を入れる検査は「大腸カメラ」と呼ばれます。

感染性腸炎を発見するための内視鏡検査も、肛門から内視鏡を入れる大腸カメラで行われます。体の中の病変部を、モニターを通じて直接目で見ることができるので、病変部の詳細な状態や病気の進行度などを詳しく知ることができます。

また、内視鏡検査自体は手術などが必要ないため、患者さんにも負担が少ないです。検査時の痛みはほとんどなく、検査時間も10分から20分程度の短時間で済みます。そのため、入院をせずに日帰りで検査を受けられます。必要な際には、鎮痛剤や麻酔などを用いた状態で検査を受けることも可能です。手術の際に使用するような全身麻酔とは違うので、検査を行っている間も意識はあり、会話することができます。近年はより負担の少ないカプセル型内視鏡検査を行っている病院もあります。

内視鏡検査を行う前には、大腸内部をきれいにして、検査を確実にできるようにするための前処置が必要となります。医師の指示にもよりますが、前日から絶食しなければならないこともあります。費用は受診する病院や詳しい検査内容によって変わりますが、健康保険適用の場合、7,500円から18,000円程度の自己負担額となります。

感染性腸炎の種類①腸結核

腸結核は、結核菌が腸に感染して起こる病気です。肺結核が少なくなった現代の日本では、肺結核と合併して起こることは少なくなりましたが、腸結核自体は世界的にはもちろん、日本でもいまだ確認されている病気です。

肺結核を患っていて、結核菌を含む喀痰を飲み込むことで結核菌が腸粘膜に侵入し、腸結核を生じたものを「続発性腸結核」と言い、他の臓器に結核性病変がなく、腸に初めて病変が生じた場合を「原発性腸結核」と言います。30代から40代と比較的若い世代の女性の患者さんが多いです。

症状としては、慢性的に継続するはっきりしない腹痛や嘔吐、倦怠感などがあります。激しい腹痛や血便の症状がなく、感染に気付かない場合もあります。まれに、腸管に穴が開いて大量に出血を起こしたり、腸閉塞を起こすなど、重篤な症状が現れる場合があるので注意が必要です。

腸結核が進行している時には、内視鏡検査を行った際、大腸や小腸に輪状、帯状、地図状の潰瘍が認められます。特に、小腸と大腸がつながる回盲部に病変ができやすいというのが特徴です。また、腸結核を治療して改善が得られた後にも、潰瘍が治ったあとの傷が残ったり、大腸壁の変形や狭窄などの病変が長期にわたって認められたりします。

治療は抗結核薬を服用することで行われます。3〜4種類の抗結核薬を同時に使用し、結核菌を死滅させます。途中で薬を中止してしまうなど、中途半端な治療を行うと、結核菌が薬剤耐性を持つ可能性があるので、完治するまで薬の服用を続けなければなりません。

感染性腸炎の種類②カンピロバクター腸炎

カンピロバクターとは、牛やニワトリなどの家畜をはじめ、ペット、野鳥、野生動物などあらゆる動物が持っている細菌です。日本では食中毒の原因菌として有名ですが、乾燥や熱にとても弱く、通常の加熱調理で簡単に死滅させることができます。

このカンピロバクターによって汚染された食品や飲料水を摂取したり、菌を保有している動物と触れ合うことで菌が体内に入り込み、カンピロバクター腸炎に感染します。感染例のほとんどが、生や加熱不足の鶏肉を食べることによって感染しています。

症状は頭痛、発熱、下痢、腹痛、嘔吐などです。患者の多くは2、3日から1週間程度で自然治癒し、死亡したり重症化したりすることはまれですが、子どもや高齢者など、抵抗力の弱い人は重症化する可能性が高いので注意が必要です。

また、後遺症や合併症としてギラン・バレー症候群を発症する可能性があります。これは神経疾患の一つで、力が入りにくくなったり、しびれを感じたりする症状が全身に現れる疾患です。内視鏡検査を行うと、直腸から大腸の全域にかけて大小の発赤斑、出血、びらんが見られます。

バウヒン弁上の潰瘍も特徴的な症状です。菌は粘膜までの侵入がほとんどなので、比較的浅い潰瘍が多く見られるのが特徴的です。自然に治癒することが多いので、薬を服用するよりも水分補給や食事療法などの対症療法が多くとられます。下痢止めは使用せず、整腸剤を用います。重症化が懸念される場合には、抗菌薬を服用する場合もあります。

感染性腸炎の種類③腸管出血性大腸菌腸炎

腸管出血性大腸菌腸炎とは、「ベロ毒素」という強力な毒素を作り出す能力を持った大腸菌に感染することで起こる腸炎です。牛や羊などの家畜や動物が保菌していることが多いです。食中毒の原因となり、激しい症状を引き起こすO157が有名です。感染力が非常に強く、ごく少量の菌が体内に入っただけでも感染してしまいますが、熱に弱いため、食材をしっかり加熱調理することで感染を防ぐことができます。

感染すると、3~5日間の潜伏期間を経た後に激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こります。その後、便は血便となりますが、初期段階では少量の血液の混入した程度の血便だったものが、次第に混入する血液の量が増加し、最終的には血液そのもののような状態の血便となるのが特徴です。ほとんどは自然に軽快しますが、発病者の6~9%では溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症を引き起こすことが知られています。特に小児や高齢者など、抵抗力の低い患者が合併症を引き起こしやすいので、注意が必要です。

HUSを合併した場合の致死率は3~5%程度であると言われています。内視鏡検査では、深部大腸ほど高度な虚血性病変が見られます。治療は他の食中毒と同様に、主に対症療法がとられます。脱水症状を防ぐためには、水分補給をこまめに行うことが重要です。重症化を防ぐために点滴を行う場合もあります。下痢止めなどを使用すると、体内の毒素を排出することができず、症状が長引く可能性もあるので、推奨されていません。

最後に

内視鏡検査を行うことで特徴的な所見を見つける事ができる感染性腸炎をピックアップして解説しました。一口に感染性腸炎と言っても、その原因によって様々な疾患があり、それぞれに特徴的な内視鏡所見がみられます。特に感染性腸炎は下痢、腹痛、血便という症状が共通するものが多く、原因を特定し難い疾患です。しかし、内視鏡検査でその原因を特定したり、より精度の高い診断を下したりすることができるのです。

疾患の原因や種類によっては、痛みや症状が少なく、病気に気が付きにくいものもあります。慢性的な腹痛があったり、普段と違う便が出たりした場合には、早めに病院を受診し、内視鏡検査を受けることをおすすめします。