【大腸内視鏡検査】何のため?どうやって?検査のキホンを徹底解説!

大腸の病気はなかなか発見しづらいものであり、それが大腸がんともなると自覚症状もなく、発見されても既にかなり進行してしまっているというケースが多々起こっています。そのため大腸がんは早期発見が重要になりますが、それを可能とするのが大腸内視鏡検査です。定期的に大腸内視鏡検査を受けることは、深刻な病の芽を早期に発見し、結果として命を取り留めることにもつながります。

今回は、大腸内視鏡検査にはどのような長所があるのか、どんな病状を発見することができるのか、また実際にどのようにして検査を行うかについて詳しく解説していきます。

大腸内視鏡検査の目的

大腸内視鏡検査の最も大きな目的は「大腸がんの早期発見」といってもいいでしょう。国立がん研究センターによる最新がん統計によると、2017年の大腸がんによる死亡者数は男性は肺がん・胃がんに次いで3位、女性は1位となっています。
(国立がん研究センター「最新がん統計」のページはこちら

大腸がんの多くは、良性のポリープ(良性腫瘍)が悪性化してがんになったものです。ポリープは悪性のがんに変化しうる病変であり、放置することによってその危険性が高まります。つまり、大腸内視鏡検査によってポリープを早期に発見し切除すれば、大腸がんに発展することなく根治が可能となります。実際、ポリープを早期に切除することで大腸がんの発生率は大幅に減少するというデータが出ています。

大腸がんの問題点は、ポリープやがんの初期の段階では自覚症状がほとんどないということです。血便や排便障害といったあきらかな自覚症状が出たときには、がんはかなり進行していることが多いです。この場合、他の臓器への転移や、既に手遅れといったことが起こり、手術をしても延命治療にしかならないことが多いのです。初期の段階の大腸がんは便潜血検査をしても見つけることは困難なので、大腸内視鏡検査によって早期に発見するしかありません。

大腸がんは40代、50代ごろから発症率が上昇します。以下のグラフは、2014年に発表された大腸がんにかかる割合です。(国立がん研究センター「がん登録・統計」より)

なによりも早期発見が大事ですから、40代を過ぎたころから定期的に大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。また、近年は女性の大腸がん発症者が増加傾向にあります。しかし、女性の場合、「恥ずかしい」という理由から大腸内視鏡検査を避ける人が多く、それが結果的に早期発見を遅らせ女性の大腸がん発症者と死亡率の増加の要因となっています。
恥ずかしい、面倒くさい、自分は大丈夫だろう・・・そういった思いを捨てて、定期的に大腸内視鏡検査を受けることが大切です。

大腸内視鏡検査で判明する病気

腹痛

大腸内視鏡検査で発見できる病気は、大腸がんだけではありません。大腸がん以外にどんな病気が発見できるのかを見ていきましょう。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは、大腸で原因不明の炎症が起こって潰瘍ができてしまう病気です。胃潰瘍は炎症によって胃に潰瘍ができる病気ですが、それと同じようなことが大腸で起こります。しかし、潰瘍性大腸炎は国指定の難病とされているので胃潰瘍とはレベルが違います。症状としては下血、下痢、腹痛などが挙げられます。腸内の炎症のため、内服薬による内科的な治療が一般的です。

クローン病(炎症性腸疾患)

クローン病は炎症によって腸内に潰瘍ができる炎症性腸疾患のひとつで、腸に限らず口・食道・胃・肛門など消化管の広い範囲で発症するのが特徴です。クローン病も発症原因が不明で、潰瘍性大腸炎と同様に国から難病指定を受けています。主な症状は下痢、腹痛、血便、発熱、体重減少、肛門付近の腫れなどです。症状が広範囲にわたるので、さまざまな合併症を引き起こす可能性もあります。近年は効果的な薬も登場しており、適切な治療を継続していけば健康時とほぼ変わらない生活を送ることができます。

大腸憩室症

大腸憩室症とは、大腸内の腸管圧力の上昇によって大腸粘膜の一部が袋状に腸外に突出してしまう病気です。憩室症は先天性のものと後天性のものがありますが、その多くは後天性で高齢者ほど発症率は高くなります。自覚症状はそれほどなく、悪化した場合は下痢、便秘、軟便、腹痛などの症状が出ます。治療は、薬による内科的治療が一般的です。

虚血性腸炎

大腸の血液の循環が悪化したことによって、必要とされる酸素や栄養素が十分に供給されず虚血状態になってしまう、また血管が一時的に詰まってしまうことで大腸内に炎症や潰瘍が起こる病気です。主な症状は下痢、腹痛、血便です。高齢者や糖尿病患者、血管炎患者に生じやすい病気といわれていますが、若年者や便秘のひどい女性でも発症することがあります。治療方法は自宅安静、抗生剤の投与、点滴、食事療法などがあります。

その他に発見される病気

上述した病気以外にはウイルス・細菌による炎症、寄生虫(アメーバ赤痢など)による炎症、放射線や薬の副作用で起こる炎症などがあります。

いざ、大腸内視鏡検査ってどうやるの?

検査の流れ 病院

それでは次に、大腸内視鏡検査とはどうやって、どのような流れで行われているかを見ていきましょう。

概要

大腸内視鏡検査はCCDカメラが付いた細い管(スコープ)を肛門から挿入し、大腸の内部を観察します。これによりテレビ画面に映し出された映像を確認しながら、ポリープやがん、炎症、出血などの異常を発見することができます。同時に組織を採取して、細胞診を行うこともできます。検査時間は20分ほどで、ほとんど痛みもないので安心して受けることができます。

検査の前段階

大腸内視鏡検査を精確に実施するには、事前に腸内を清浄する必要があります。そのため前日の夜以降は食事を避け、当日は洗浄液(下剤)を1~2リットルほど飲み、トイレに通って腸内がすべて空っぽにして綺麗にしてから検査を行います。洗浄液を使っても腸内が十分に洗浄されない場合は、追加で洗浄液を飲んだり、浣腸をしたりすることもあります。

検査の実施

大腸内視鏡検査を実施する直前に、腸の動きを抑制する薬(鎮痙剤)を注射します。人によっては同時に鎮痛剤も投与します。
ベッドに横になった状態でまずは直腸診(触診)を行い、続いて肛門からスコープを挿入します。できるだけ痛みがないように途中で体の向きを変えたり、腹部を手で押さえたりします。適宜、鎮痙剤の追加やスコープの交換が行われることもあります。検査中は会話が可能なので、痛みを感じたり何か気になるところがあったりすれば、すぐに医師に訴えることができます。また、実際にテレビ画面に映し出された自分の腸内の映像を見ながら医師の説明を聞くことも可能です。
検査が終わった後もお腹の張りが残ることがありますが、1~2時間もすれば収まります。

大腸内視鏡検査のメリット・デメリット

大腸内視鏡検査は、現段階で最も正確に腸内の病気を発見することが可能な検査方法といえます。CTなどの検査でもある程度の病状を発見することはできますが、大腸内視鏡検査ほど正確で精密な判断はできません。小さなポリープなど、CTではまず分からない病変を発見するには内視鏡による検査がベストです。

デメリットはほとんどありませんが、腹部の張りや腹痛といった偶発症がまれに起こるケースがあります。特に高齢者は偶発症を起こしやすいので、同じ日に体に負担のかかる大腸内視鏡検査以外の検査は行わない、別の検査方法を試す、といった選択肢も考慮したほうがよいでしょう。
また、高血圧の人も偶発症が生じやすくなるので、血圧が高めの人は内視鏡検査を受ける前に必ず主治医に相談してください。必要があれば降圧剤などを投与したうえで内視鏡検査が行われます。

最後に

大腸がんで最も重要なことはなによりも“早期発見”です。そしてそれを可能とするのは、大腸内視鏡検査です。大腸がんの多くは自覚症状がないからこそ、気がついたときには手遅れになってしまわないように定期的に内視鏡検査を行うことが求められます。

腸の病気にならないためには普段の食生活にも注意が必要です。便秘になりやすい人はできるだけ消化の良いものを食べ、欧米型の肉中心の食事や過度な飲酒は控えるようにしましょう。肉よりも食物繊維を多く摂ると大腸がんのリスクは減少するというデータもあるので、日々の食生活を改めて見直してみることをオススメします。