大腸内視鏡検査は自由診療になる?

数十年前まで、日本人は大腸の病気が欧米人と比較すると少ないという特徴があったのですが、食生活が大幅に変化したことによって大腸疾患が以前よりも格段に多く見かけられるようになりました。特に大腸がんに関しては、女性ではがん死亡数の第1位にまで上昇してきています。女性にとって乳がんや子宮がんよりも気をつけたいのが大腸がんというわけです。
しかし、大腸がんは初期の段階で治療すれば十分に治る病気です。大腸がんを早期発見するためには大腸内視鏡による検査が不可欠ですが、ここではこの検査にかかる費用について詳しく見ていきましょう。

大腸内視鏡検査は自己診療か保険適用か

大腸内視鏡検査を受ける際に気になるのが、この検査には保険が適用されるかどうかという費用面です。大腸内視鏡検査というのは「腹痛がある」といって病院に行っても即座に行ってくれるタイプの検査とは少し異なります。
腹痛が続くときは、まず血液検査や尿検査を行なって原因がどこにあるのかを調べます。「お腹のどこが痛いのか」「どんなふうに痛いのか」「痛みはいつごろから始まったか」などの医師による問診も腹痛の原因を突き止めるには重要なポイントのひとつです。
次に便潜血検査を行い、血便が出ているかどうかも確認します。大腸内に疾患があると患部から出血していることが多いので、この検査でその有無を確かめます。血便が出ていることが確認できれば、自由診療ではなくて保険適用で大腸内視鏡検査を受けることができます。
逆に血便がないにもかかわらず、大腸内視鏡検査をしてほしいと自ら希望した場合には、自由診療となります。
自由診療の場合、大腸内視鏡検査にかかる費用はだいたい22,000~25,000円程度が目安です。検査自体はそれほど高くないのですが、検査中にポリープが見つかって切除するとなるとポリープ1個ごとに金額が加算されていきます。ただしポリープ切除は「治療」行為ですから、ここからは保険が適用されることになります。
要するに、医師は特に必要とみなしていないけれど大腸がんが心配だから自主的に健康診断を目的として大腸内視鏡検査を受けたいという場合には自由診療になるというわけです。

自由診療とはどういうものか

ここで、自由診療とはどういうものかを確認しておきましょう。自由診療というのは要するに公的な保険の適用が受けられないので、全額自己負担をして検査や治療を受けるということです。ちなみに公的な医療保険には「国民健康保険」「(社員などが加入する)健康保険」「船員保険」「共済組合」があります。
公的医療保険はたとえ加入していても病院でかかる費用のすべてに適用されるというわけではありません。大腸内視鏡検査であれば、人間ドックや検診を行った際に便潜血検査で陽性の結果が出た場合、あるいは嘔吐や血便などの症状がある場合には保険適用となります。しかし「ときどき腹痛があるから検査しておきたい」「月に1回ぐらい便秘になるから診てほしい」といった程度では保険適用でこの検査を受けることができません。
同じように日本では未承認の抗がん剤を使用したいと思った場合にも保険は適用されませんので、自由診療(全額自己負担)で治療を受けなければなりません。

どこまでが保険適用の範囲でどこからが自由診療かというのは判断が難しいところもありますので、不明な点は病院で詳しく説明を受け、納得した上で自由診療か保険適用かを選択することが大切です。
形成外科で行われる治療や手術に関しても、健康のために行われる医療行為は保険の適用対象ですが、健康とは関係なく美容的な観点から手術を受けた場合(鼻を高くする、シワを取るなど)にはすべて自由診療です。漢方薬の中にも一部保険が効かないものがあります。

大腸がん検診は定期的に受ける

大腸がんによる死亡者数は年間35,000人を超えており、今や国民的な病気となった大腸がんです。死亡者数こそ多いものの、この病気は早期に発見して治療を早いうちから行えば十分に治る可能性がある病気でもあります。ですから、40歳を超えたら積極的に大腸がん検診を受けることをおすすめします。
定期検診というと人間ドックを思い浮かべる人も多いと思いますが、大腸がんセットをオプションで用意しているところはあっても大腸内視鏡検査を実施しているところはあまり多くはありません。大腸がんセットで行われるのはCT検査がほとんどです。というのも大腸内視鏡検査というのは大腸内部を仔細に観察する検査であると同時に、腸内にポリープなどを発見したらその場で切除してしまう外科的処置も行う検査法だからです。
ですから、定期チェックのつもりで自由診療の範囲で大腸内視鏡検査を受けたいというのであれば、胃腸科の専門医が常時控えている専門クリニックか大病院を選ばなければなりません。
大腸がん検診としては、各地方自治体で便潜血検査を実施していますので、40歳以降はここで毎年検査を受け、血便が出たら大腸内視鏡検査を受けるという流れを自分で作っておくことをおすすめします。
大腸内視鏡検査自体は毎年受けなくても大腸がんのリスクはそれほど上がりません。便潜血検査で陽性が出ていれば、大腸内視鏡検査は保険適用で受けることができます。逆にいえば便潜血検査で陽性になったら必ず内視鏡検査を受けたほうがいいということです。

大腸内視鏡以外の検査法

大腸がんの検査というと内視鏡検査がいちばん有名ですが、これ以外にもいくつかの有効な検査方法がありますので、大腸がんやポリープ、潰瘍などといった大腸疾患を未然に防ぎたい人は受けてみることを検討するのもいいでしょう。
「大腸バリウム検査(注腸検査)」というのは肛門から管を入れて内部を観察するという点では大腸内視鏡検査と同じですが、腸内バリウムと空気を入れて膨らませるという点が異なっています。
5mm程度の病変でも難なく発見できますから大腸がんの早期発見などには最適ですが、以前の検査で大腸ポリープが見つかった人には向いていない検査方法です。
また、内視鏡を入れずに検査ができる「大腸CT検査」というものもあります(「大腸3D-CT」あるいは「マルチスライスCTコロノグラフィ検査」「ヴァーチャル大腸内視鏡検査」などと呼ばれることもあります)。
大腸CT検査では炭酸ガスによって大腸を膨らませ、マルチスライスCT装置によって大腸三次元画像を得ます。肛門から直接管を入れるわけではないので苦痛はほとんどなく、楽に検査を受けることができるのがこの検査法の大きなメリットです。
ただし、大腸内に炭酸ガスを注入するため、肛門に直径1cmほどのチューブを入れることは避けられません。入れるチューブの長さはわずか10cm程度です。
尚、この検査方法は妊娠中の女性や腎機能がかなり低下している人には用いることができません。便潜血反応陽性などの診断があれば保険適用でこの検査を受けることができます。

大腸の検査においては便潜血反応が陽性であればバリウム検査にしても大腸内視鏡検査にしても保険が適用される一方、血便がなければ人間ドックと同じように自由診療になるというのが大原則であることがわかりました。
ただ、便潜血検査を行ってもわからない大腸がんなどもありますから、身内に大腸がんの人がいる場合などは、たとえ血便がなくても自由診療で大腸がんの検査を受けておくほうが安心です。
自由診療にかかる費用は数万円程度ですが、これで健康管理ができると思えば決して高い額ではありません。脂っこいものが好きな人、喫煙の習慣をなかなかやめられない人、あるいはアルコールを1日2杯以上飲む人はリスクファクターが多いことを自覚して欠かさず検査を受けたいものです。