国立がん研究センターの報告によると、大腸がんにかかる方は近年増加傾向にあります。その大腸がんを早期発見したり予防したりするために有用な検査が、大腸内視鏡検査です。
大腸内視鏡検査といえば肛門から器具を挿入する検査なので痛みや不快感があると敬遠する方も少なくないかもしれませんが、大腸の中をリアルタイムに目で見ることのできる唯一の検査なので、さまざまな情報を得ることができメリットが大きいといえます。
その大腸内視鏡検査の精度を上げ少しでも快適に受けることのできるためには、前日までにしておかなければならないことがあります。
目次
大腸内視鏡検査の精度を上げ不快感を和らげるために
大腸内視鏡検査の前日にすることは、主に食事制限と下剤の服用です。大腸内視鏡検査といえば苦痛を伴う検査というイメージがありますが、検査の前にこれらのことをするのにはその苦痛を和らげるためと検査の精度を上げるためという理由があります。
大腸内視鏡検査の苦痛を和らげるために
大腸は非常に柔らかい組織であり、血管や神経がはりめぐらされています。その大腸に内視鏡という器具を挿入していく過程で、大腸の壁が引っ張られたり圧力がかかったりすることがあります。検査の技術の熟練した医師ならそれを最小限に抑えることができますが、中にはそれをあまり得意としていない医師もいます。
そして、大腸への負担を軽くするためには内視鏡の通りをよくすることが大切です。食事制限はそのためにおこなうのです。
食べ物は口から入って、食道や胃、小腸を通って大腸へたどりつきます。その途中で、少しずつ消化されガスが発生します。大腸がそのガスや空気で満たされると膨らんでしまい、内視鏡が入っていきにくくなります。そこに無理に押し込むと大腸の内壁に接触しやすくなり、痛みが起こるのです。
前日までにきちんと食事制限して大腸内のガスの発生が少なくなっていれば内視鏡の通りがよくなり、検査における苦痛を和らげることができるのです。
大腸内視鏡検査の精度をあげるために
大腸内視鏡検査の前には下剤を飲んで便を出し、大腸内をきれいにします。しかし、食事制限をしないままにいくら下剤を飲んでも食物残渣は残ったままになるのです。
そうなると、せっかく検査をしても視界がさえぎられてしまい検査時に視野が悪くなるので、洗浄しながら進めていくことになり検査時間も長くなってしまいます。そのような悪条件の検査だと病変を見逃してしまう可能性が高くなります。
大腸内視鏡検査の前日に食べてはいけないもの
大腸内視鏡検査をおこなう前日には大腸をきれいにするために食事制限をします。これは検査における苦痛を和らげ、検査の精度をあげて、より詳しく大腸内を観察できるようにするためです。
普段は健康によいといわれているような玄米や海藻、こんにゃくなども、消化が悪くなるので食べてはいけません。こんにゃくなどは、大腸内にそのままの形で残ってしまいます。
検査時に、大腸内に液状のものしかないようにするのが理想です。液体なら内視鏡で吸い取ることができるのでいくらでも残っていていいのです。むしろ水分は積極的に摂取したほうがよいです。
大腸内視鏡検査の前日に食べてはいけないもの
≪3日前から食べないほうがよいもの≫
・そばやラーメンなどの麺類
・繊維食品
キノコ類(えのき、しめじ、しいたけなど)、海藻類(ノリ、わかめ、ひじき、昆布など)玄米、胚芽米、発芽玄米、雑穀米、玉ねぎ、ごぼう、かぼちゃ、なす、トマト、豆類、こんにゃく
・種のあるもの
キウイ、すいか、めろん、いちご、ごま
・脂肪の多い食品
霜降り牛肉、揚げ物、バター
≪前日に食べてはいけないもの≫
上述の≪3日前から食べないほうがよいもの≫に加えて、牛乳やヨーグルトなどの乳製品やアルコールも摂取してはいけません。
薬品も中止する
抗凝固薬(ワーファリン、パナルジン、バイアスピリンなどの血液をサラサラにする薬)やインスリン注射、糖尿病薬なども、検査の前日までに主治医の指示に従って中止します。薬品によって、中止する日程が違うので必ず指示に従って中止してください。また、サプリメントも中止します。
大腸内視鏡検査の前日に食べてよいもの
大腸内視鏡検査の前日に食べてよいものは、消化がよく、大腸内に残らないもので、以下のようなものが推奨されます。
・食べていい主食
うどん(具なし)、そうめん、食パン(何も塗らない)、蒸しパン(雑穀やライ麦、ドライフルーツなどが入っていないもの)、
・食べていいおかず
豆腐、卵料理、魚、ちくわ、かまぼこ、スープ(具なし)、味噌汁(具なし)、肉、ハム、ベーコン、ウインナーなど
・食べていい間食
カステラ、ゼリー、豆乳、はちみつ
他にも、牛丼や親子丼、うな丼やかつ丼、お寿司もにぎりなら食べてもよいようです。ただし、巻きずしやちらし寿司、しょうがは食べられません。
また、検査用の食事セットなども病院で販売されていたり市販されていたりするので、それらを購入して食べるのもよいでしょう。そして水分は積極的に摂取するようにし、水や麦茶、ポカリスエットなど、あまり色のついていないものを飲むようにしましょう。
もっと大腸内をきれいにする方法もある
上述してきたのは、大腸をきれいにする一般的な食事制限や食べてよい食品ですが、実はもっと大腸内をきれいにする方法もあります。検査の前日は間食なしで、3食とも主に炭水化物だけの低残渣食とする方法です。処方される下剤のタイプにもよりますが、前日の夜から飲むタイプの下剤の場合だと、夕食は食べず、その代わりに下剤を飲みます。
ただ、これは糖尿病や腎臓病などの疾患がなく、普段は特に食事制限などを受けていない健康な人に限って実行してみてください。
そして、大腸内視鏡検査は、一生に一回だけ受けるものではなく定期的に受けることを推奨されています。前回の検査で大腸内がきれいになりきらなかった人は、食事制限や下剤の種類を見直してみるのもよいでしょう。
大腸内視鏡検査前には下剤を飲む
大腸内視鏡検査をするにあたって大腸をきれいにするためには、下剤(腸管洗浄剤)も使います。この下剤にはいくつかの種類があり、大きく分けると主に検査の当日の早朝に飲むタイプの下剤と、前日の夕方と当日の朝に飲むタイプの下剤があります。薬剤の種類や、それぞれの病院の方針にもよりますが全部で約2~3Lの下剤を飲むことが多いようです。
特に普段から便秘がちな方は、3日前から下剤を服用することもあります。また、下痢をすることの多い方は下剤を少なめにするか、中止することもあるようです。それぞれの体質によって下剤の使い方は違うので、医師とよく相談して検討するようにしてください。
下剤を飲むメリット
下剤を飲むには実は美容にいいというメリットがあります。下剤を飲むと腸内の宿便も完全に取り除くことができ、腸内洗浄をすることができるからです。宿便には、さまざまな有害物質も含まれているので、それがきれいに失われることで美容のための効果が得られ、女性は特にそのメリットを感じることも多いようです。
下剤は飲みにくいのではないか?
大腸内視鏡検査が初めての方は特に、下剤を飲むことに不安を感じることもあるようです。確かに過去には下剤が飲みにくいイメージもありましたが、現在はかなり改善されていて、飲みやすくなっています。飲む量も人によって調整可能なので、不安がある方は医師に相談するとよいでしょう。
過去に下剤の服用が苦しかった方は
過去に大腸内視鏡検査を受けたときに下剤の服用が苦しかった方は、検査の前日に固形物を食べずにゼリーなどの半固形物や飲み物のみで過ごすと下剤の量を少なくすることができ、少しでも楽に検査を受けることができます。
日本人の罹患するがんの中で大腸がんはトップクラスの死亡数と罹患数となっていて、近年も増加傾向にあります。その大腸がんの早期発見や予防のために有用な検査が、大腸内視鏡検査です。
しかし、内視鏡検査には苦痛が伴う可能性もあり、検査の前日には食事制限や下剤の服用をしなければなりません。辛いと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、検査時の苦痛を和らげ、検査の精度を上げるための措置なのでそれを理解した上で検査に備えるようにしてください。
また、昔と違って最近は検査の痛みや不快感などの苦痛も、ずい分少なくなっているといわれているので、ぜひ検査を検討してみてください。