大腸内視鏡検査でわかる子供の病気とは?

子供が「大腸内視鏡検査をする」と言われたら、あなたはどう思いますか?「その年齢で大腸がんになるにはまだ早すぎるんじゃないのか?」、そんな疑問を持たれる人ももちろんいるはずです。大腸がんという病は、高齢になればなるほど、増えていく病気だということはすでにご存知かと思います。それでは他にどんな病が考えられるのか?実は子供たちのなかには、「がんではない大腸の病気」に悩まされている場合があるのです。ここでは子供が大腸内視鏡検査を行う場合、どんな病気が可能性としてあり得るのか、その発見と治療法についてご説明していきたいと思います。

潰瘍性大腸炎は非常に厄介な病気

子供が罹る大腸の病気の1つに「潰瘍性大腸炎」があります。この病気は大腸に無数の潰瘍ができ、いったんはよくなったかと思えば、あるときを境に再発し悪化するなど病状が繰り返されます。10万人のうち5人がこの病気にかかるとされ、10年以上症状が続くと、最悪の場合がん化してしまうこともあるという厄介な病気です。潰瘍は範囲が狭く治るものもあれば、横一直線につながって痛みや不快感を引き起こすものと様々であるため、なかなか完治しづらいという一面があるのです。当然、潰瘍の部分から出血することもありますし、下痢や腹痛、食欲不振、体重減少など、目に見えて症状が悪化する場合もあるのです。このほかにも口の中が赤くただれたり、皮膚が赤く硬くなる、目に炎症を起こす、全身が関節痛になるなどの症状も見られます。

このように症状が明らかな場合には、内視鏡で大腸の管内を徹底的に調べます。すると、大腸の粘膜の部分がザラザラしていたり、膿んでできてしまった分泌物、様々な潰瘍やポリープなどがあちらこちらで発見することになるのです。一般的な治療法としては、腸の炎症を抑えるステロイド剤を使用したり、サラゾピリンなどの薬を服用したりといった、内科的治療が基本となります。ただし、内科的治療を行っても、「これを飲めば効く」という絶対的な効果のある薬はありませんし、病気が長期にわたると、がん化する恐れもあるので、長いスパンで治療にあたることが大切なのです。

様々な合併症を併発することもあるクローン病

クローン病は厚生労働省から難病に指定されている、炎症性腸疾患の1つです。おもに大腸や小腸などの消化管に炎症が起きることによって潰瘍やびらんができたりする原因が不明の病気で、慢性化するケースがほとんどです。おもな症状として挙げられるのが、腹痛や下痢、血便、発熱、さらには肛門付近の痛みや腫れ、体重の減少などがあります。また、これらの症状が合わさった、合併症を併発することもあるのです。

こう書くとすごく難しい病気のように思えますが、クローン病は適切な治療をして症状を抑えることさえできれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です。そのうえ2014年時点では、日本においても4万人の患者がいるとされており、決して珍しい病気であるという位置づけではなくなってきています。クローン病になる要因として挙げられるのが、大腸がん同様、やはり食事の洋食化にあると言われています。

ただ、先ほども申し上げたとおり、クローン病はきちんとした処置を施しておけば、大事には至らない病気であることがわかっています。治療法としては、薬物療法と栄養療法の2つの軸が中心の、内科的療法が積極的に行われます。ただし、内科的療法が適切でないと主治医が判断した場合には、外科的療法を加えた治療を行うこともあります。もちろん症状が落ち着いているときと、悪化している状態のときとが交互に繰り返されますが、命に影響を与えるような疾患ではありません。

急性炎症や発作をともなうこともあるベーチェット病

ベーチェット病は口内炎や外陰部潰瘍などの皮膚粘膜の症状に加え、ぶどう膜炎などの目の症状などを特徴とした慢性の疾患です。もともと中近東や地中海の国々、特にシルクロードで罹患率が高かったとされており、若い人に多くみられる病気です。ときには子供が罹る場合もありますが、その場合は大腸などの消化器官に炎症が見られるというケースもあります。

治療方法としては、小児リウマチの専門医と連携して治療にあたることがあります。そのうえで内科的療法を用いて、経過をしっかり観察していきます。なぜなら、子供が罹る小児ベーチェット病の治療は、長期間におよぶことが多いので、結果として長く治療にあたるというケースが多くなるのです。薬物治療にあたった場合、ベーチェット病になったときに必ず用いるとされてきた「コルヒチン」という薬は、副作用があります。もっとも多く見られる症状が下痢です。ちなみにベーチェット病に罹ってしまう病因は、現在のところまで不明です。子供の場合には、遺伝的要因の可能性があると言われていますが、それとて明確な根拠は不明なままです。さらに食事の制限もなく、家庭の食卓で食べるような食事であれば、何を食べても大丈夫です。もし消化器系、とりわけ大腸に潰瘍などが出てしまった場合には、内視鏡を使って大腸の中を詳しくチェックする必要があります。どの程度潰瘍があるのか、それによって改善するまでにどのくらいの時間がかかるのかなど、お医者さんと相談しながら決めていくとよいでしょう。

子供であっても大腸内視鏡は必要である

子供の消化器系の疾患は、年々増加傾向にあると言われています。クローン病やベーチェット病が疑われるような子供は、体に負担のかからないカプセル内視鏡を用いて、経過観察をしっかり行っていくのが特徴です。とくに潰瘍性大腸炎は、子供の炎症性疾患の中で、もっとも頻度が高いと言われているものの、その原因については不明なのです。それだけに、慎重かつ地道な治療が必要となってくるのです。

一部の小中学生の中には、病院で正式な病名を調べていないために、拒食症になってしまう子供も実際にいたという報告もあります。それだけに腸の状態がどうなのか、一日の中で痛みが最も出てくるのはいつなのか、精神的に辛いことはないのかなど、正しい診察と治療が重要であることを忘れてはなりません。とくに思春期の子供は、自分が他の人と違うことに敏感に反応しがちです。大腸の異変など、友人に言ってもわからないことは往々にしてありますし、それだけに周囲の大人の存在が重要なのです。親は子供の体調の変化に敏感に気づいてあげる必要があります。そのうえで、病院で然るべき診断をしてもらい、栄養指導から精神のケアに至るまで、きちんとフォローしていく必要があります。当然、子供自身も、「今、自分の大腸はどうなっているんだろう?」と気になることだってあるかもしれません。そんなときには、大腸内視鏡を使っての検査をしていくことを、ぜひお勧めしたいと思います。

 

「子供が内視鏡を使った検査をする必要などない」という考え方をしているようでしたら、それは大きな間違いです。たしかに大腸がんになるには年齢的に早すぎますし、そうした点では心配するようなことはほとんどないと思われます。ただし、ここに挙げたような大腸の疾患の状態を確認するために、大腸内視鏡を使って検査をすることをお勧めします。子供の大腸の状態を把握するには、内視鏡はもっとも効果的な方法であると認識していただくとよいでしょう。