風邪を引いて病院にかかる時のように気軽に受けられるわけではない、大腸の内視鏡検査。便潜血や体重減少など自身で気になる症状があったり、健康診断で指摘をされたりして、検査を受けることを検討する人が多いのではないでしょうか。
いざ病院を探してみようとインターネットで検索しても、大腸の内視鏡検査ができる医療機関は意外と多く、驚かれる人も多いことでしょう。
今回は大腸の内視鏡検査をしようと思ったときに悩むことが多い「病院選びのポイント」をご紹介したいと思います。少しでも安心して検査を受けるための病院探しの参考にしてみてください。
目次
立地の良さ、通院のしやすさ
病院を探すにあたり、最初のポイントになるのが病院の場所です。
皮膚科や歯科などであれば、少々遠くても評判の良さなどで決めることができますが、大腸の内視鏡検査となるとなかなかそうはいきません。それは、検査に下剤などの処置が伴うからです。
大腸の内視鏡検査をするためには、正確な検査を行うために大腸の中をからっぽにする必要があります。そのために行うのが「下剤の服用」になりますが、この下剤の服用タイミングは病院により異なり、大きく2パターンに分かれます。
1つ目は、朝起きてから自宅で下剤を服用し、腸をからっぽにしてから病院へ行くパターン。2つ目は、朝から病院へ行き、病院で下剤を服用し、腸がからっぽになったところで検査を受けるパターンです。
1つ目のパターンの場合は、下剤による排便で疲れた体で病院まで行かねばならず、2つ目のパターンの場合は空腹の体で朝の混雑の中を病院へ向かわねばならないという大変さが伴います。
評判だけを決め手に自宅から遠くの病院を選ぶと、検査当日はこのような状況の中を病院まで向かわねばならないので、思っている以上に大変な思いをすることになります。
また、検査時に苦痛を和らげるために鎮静剤などを投与する医療機関もあります。その場合、帰宅時に自転車など乗り物の運転はできませんので、徒歩や公共の交通機関、知人や家族の手助けなどが必要になります。
そういった点を踏まえてもできるだけ家の近くの病院を選ぶことをおすすめします。
評判の良さ、混雑具合
自宅の近くなど通院しやすい場所に絞って病院を探しても、いくつかの医療機関があり、どこにしたら良いのか悩んでしまうこともあるでしょう。特に大きな町では、たくさんの医療機関が軒を連ねていますから、その中から1つに絞るのは簡単ではないでしょう。
そんな時は、まず口コミなどの評判をチェックしてみてください。どれだけ建物やホームページが立派であっても、受付や看護師、医師の対応が良くない場合には受診を考え直しても良いでしょう。
特に医師との相性は大切です。大腸の内視鏡検査は気軽に受けられるものではないので、気になる症状などの話をしっかり聞いてくれて、検査結果を丁寧に説明してくれる医師が良いでしょう。検査後、帰宅してから「あれも聞きたかった。これも聞きたかったのに聞けなかった」となっては、検査を受けた意味も半減してしまいます。検査を受けて良かったと思える病院を選びましょう。
忙しい人にとっては混雑具合も大切なポイントになります。人気の医療機関ほど、希望通りの予約が取れにくくなりますので注意しましょう。予約日の希望がある場合は、余裕を持ってスケジュールを組むか、自身と相性が良さそうで予約の取りやすい病院を探すことも方法の1つです。
また、評判は大切だと前述しましたが、緊急を要する症状であるのに、無理をして評判が良くて予約がすぐとれない病院を選ぶことは本末転倒です。自身の状況をよく把握した上で、ベストな病院選びをするように心がけてください。
大腸の内視鏡検査の方法
大腸の内視鏡検査は、肛門から小型カメラの付いた細いスコープを挿入し、腸内に病気などがないかを調べます。インターネットで大腸の内視鏡検査について調べると、「痛い」「辛い」のようなネガティブな関連ワードを目にします。では、本当に大腸検査は苦痛を伴うのでしょうか。
大腸の内視鏡検査では、多くの医療機関で1リットルから2リットルの下剤を服用します。大腸の中をからっぽにして正しい検査を行うためです。大腸検査のネガティブな痛みや苦しさのイメージの1つにこの下剤が挙げられます。1リットル以上の下剤を服用することは誰にとっても楽なことではありませんし、普段から便秘症の人にとっては、下剤による排便は痛みを伴うものになるかもしれません。
しかし、健康な人の場合、検査前日の食事内容に気を配ってさえいれば下剤による腹痛はそれほど頻繁に起こるものではないので、安心してください。便意を感じてトイレに行くと、痛みはなく自然に排泄される場合がほとんどです。ただ、やはり大量の下剤を短時間で飲む大変さもあり、全ての人に腹痛が起こらないというわけではないので、最近では下剤を経口で服用するのではなく、内視鏡から直接注入して大腸を綺麗にして検査に臨む方法もあります。
この方法のデメリットは、胃の内視鏡検査も同じ日に行わなければならないことです。鎮静剤で眠っている間に胃カメラを行い、その際に胃に入れた内視鏡を通じて直接腸に下剤を注入する方法をとるためです。ポジティブに捉えれば、1日で2つの検査を終えられるということにもなりますから、興味のある人は実施している医療機関を調べてみてください。
送気と炭酸ガスと水浸法
検査時、もしくは検査後の腹部の張りや痛みも大腸の内視鏡検査が敬遠されるポイントの1つです。
腸は、便などの内容物がない限りはぺたんこに潰れています。従来の内視鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入し、腸内を検査する際に送気、つまり「空気」を送り込んで腸を広げて観察をしていました。例えるなら、風船をイメージするとわかりやすいでしょう。
1リットルから2リットルもの空気を送り込まれ、パンパンになった腸の中を内視鏡が進んでいくので、圧迫されて痛みが出やすいのが難点。また、空気が大腸の中から抜けるのにある程度の時間もかかるため、検査終了後もお腹の張りが続き、痛みや不快感の原因となるのです。人によっては検査後、下剤によって腸内を空にしている影響もあり、本調子に戻るまでに1週間程度かかることもあります。
空気に代わり、用いられることが増えてきたものの1つが「炭酸ガス」です。使用目的や方法は空気と同様ですが、炭酸ガスは気体の二酸化炭素なので体内での吸収も早く、検査後のお腹の張りや不快感が少ないことが一番の違いとなります。二酸化炭素の水分への吸収速度は、空気の100倍近くになるので、空気を用いた検査に比べてどれほど負担が軽いか想像ができるでしょう。
また、最近増えてきている方法に「水浸法」というものもあります。これは字の通り「水」を用いて行う検査です。100mlから200ml程度の水を用いながら、腸内を調べていきます。水の中を内視鏡が進むことになるため圧迫痛も感じず、空気を用いたときのように腸が膨らむこともないため、検査後のお腹の張りもありません。
最後に
大腸内視鏡検査は、医療機関によって、条件や検査方法など様々な違いがあります。住んでいる地域によっては、多くの選択肢がない人もいるかもしれません。しかし、医療機関を選ぶ権利は誰にでも平等にあるものなので、自身が納得できる医療機関を選びましょう。
大腸の内視鏡検査は一度受けたら一生受けなくていいというものではありません。定期的に検査を受ける必要があるので、「もう二度とやりたくない」という思いをすることがないよう、クリニック選びは慎重に行いましょう。医療技術は日々進歩しています。検査を受ける必要があるときには、最新の技術なども確認して、自分に一番適した医療機関を探してみてください。