知ってますか?「大腸内視鏡検査」特徴から検査方法までまるわかり!

腹痛に悩まされることが多くなった…下痢や便秘が止まらない…
などという症状はありませんか?あてはまる場合はできるだけ早く胃腸内科で詳しく診てもらう必要があります。これらが起きている大腸には、大腸がんや大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎などといった病気の可能性があります。しかし、これらは大腸内視鏡検査による早期発見が可能です。
ここでは大腸内視鏡検査の特徴やその検査方法について詳しく解説しています。ぜひ最後までお読みいただき、大腸内視鏡についてマスターしましょう!

大腸内視鏡の特徴と性能

まずは基本知識から。大腸についてや、大腸に用いる内視鏡について解説します。

そもそも大腸とは?

大腸とは消化器官のひとつで、小腸と肛門の間に位置しています。長さは成人で約1.5~2mですから、6~7mの長さがある小腸と比べればかなり短いのが特徴です。小腸で消化吸収した食物の水分を吸収し、糞便を形成して体外に排泄するのがその役割です。
下の図をご覧ください。大腸は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸の6つに分かれています。今や大腸がんは、日本人の代表的ながんとなっています。日本医師会の「知っておきたいがん検診」では以下のように述べられています。

大腸がんの発生率は、直腸が34.1%、結腸が65.9%です。
大腸がんの発生率は増加傾向にあり、がんによる死亡数でも胃がんを抜いて第二位になりました。

日本医師会「知っておきたいがん検診」はこちら

大腸内視鏡の特徴

便潜血検査を行って陽性の結果が出た場合には、大腸内視鏡検査を行うことになる可能性が高いです。
大腸内視鏡検査というのは、大腸に直接内視鏡を挿入して内部を観察する検査方法です。疑わしい部分を見つけた場合には、その部分の組織を採取して顕微鏡で細胞の検査を行います。

大腸内視鏡の性能

内視鏡の倍率は通常のものなら5倍ですが、クリニックによっては瞬時に80倍までズームできる機器を使用しているところもあります。そのため、できるだけ性能のいい機器を備えているクリニックで詳しい検査を行ってもらうことをオススメします。
ハイビジョン画質で広範囲の観察が可能な「高度可変式細径スコープ」を備えた内視鏡が理想的です。このクラスの機器であれば大腸表面の血管もくっきりと見える「狭帯域光観察(NBI-NarrowBandImaging)」ができます。したがって、病変が見つかった場合にもどのような治療が必要か、瞬時に判断することが可能になります。

NBIは2007年1月から発売開始となったビデオスコープシステムのことで、ごく初期の小さながんまで見つけることができるというメリットがあります。
このシステムを使えば粘膜表層の毛細血管が際立って見える青色の狭帯域光と、深部の太い血管を強調するための緑色の狭帯域光によって的確に病変部を見分けることができます。また、判断が瞬時にできるので検査時間も短縮でき、体への負担を減らすことができます。

内視鏡の構造と仕組み

内視鏡(endoscope)を用いて検査できる部位には食道や胃、尿道、膀胱、子宮などさまざまなものがあります。この内視鏡検査は意外に古くから行われており、1805年にはイタリア系ドイツ人医師であるフィリップ・ボッチーニによって内視鏡検査が行われたという記録が残っています。フィリップ・ボッチーニが考案した内視鏡「Lichtleiter(導光器)」は、ろうそくの光を鏡で反射させて直腸の内腔や膀胱を直接観察するという、当時としてはとても画期的な検査方法でした。
その後、内視鏡はさまざまな発展を見せながら用いられますが、大腸に特化した内視鏡を開発したのは実は日本の医師3名です。東大・弘前大・東北大の専門医によって、1960年代からは内視鏡を使用したポリープ切除術も行われるようになりました。

現在使用されている大腸内視鏡は、先端に超小型高性能のCCDイメージセンサーを装備した柔軟な管と操作部からなる「ビデオスコープ」の部分、およびカラーモニターとビデオシステムセンター、そして光源装置からなる「ビデオシステム本体」から構成されています。
管の先端には、CCDの他に水や空気を送り出すためのノズルも付いており、臓器の血液や粘液でレンズが汚れた際には適宜洗い流せるような作りになっています。
さらに管の中には「チャネル」と呼ばれる直径約2~3mmのトンネルが通っており、ここから患部に注射をしたり、ポリープを切除したりすることもできます。
ちなみに大腸内視鏡の製造は、世界市場の約90%を日本のメーカー3社が占めています。

検査を行う前の流れ

便秘や下痢が続いている、あるいは腹痛が治まらないといった症状があっても、すぐに大腸内視鏡検査を行わない病院もあります。最初に「便潜血検査」というものを行い、陽性(つまり血便がある)という結果が出た時点で精密検査としての大腸内視鏡を行うことになります。

便潜血検査の受け方は簡単で、自宅で便を採取して病院に提出するだけです。精確を期すために便は2日分採取します。まず病院で専用の容器をもらってきたら、2日間にわたって別々に便を採取します。採尿は朝一番に行わなければなりませんが、便に関しては朝でも夕方でもかまいません。量が少ない場合でも、容器の半分程度は満たすようにします。備え付けの採便棒で便の表面をまんべんなくこすり、容器に入れます。便が硬くてうまく取れない場合は、水を少し加えて柔らかくしてから採取します。
便を採取するからといって何も特別な食事制限を行う必要はありませんので、いつも通りに食事を摂ります。下痢をしていても採便はできます。便秘がひどくて2日分の便を採るのに数日間かかるという人は、最初に採取した便を冷蔵庫か冷暗所に保存しておくのがベストです。なお、生理中はこの検査を受けることができません。

便潜血検査を行なって陽性の結果が出る人は全体の約5%ですが、さらに精密検査を受けて大腸がんが発見される確率はこの5%のうちの2~3%です。早期の大腸がんやポリープでは便潜血検査をしても結果が陰性と出ることもありますから、家系内に大腸がんの人がいる場合には大腸内視鏡検査をしてもらうように医師とよく相談することが大切でしょう。

大腸内視鏡検査の方法とは

大腸内視鏡の検査方法はお世辞にも快適とは言えませんが、病気の早期発見には役立ちますので、医師から勧められたら必ず受けるようにしましょう。

検査方法は、大腸内視鏡(colonoscope)を肛門から入れて大腸の内側を観察するという単純なものです。大腸内視鏡の太さは直径11~13mm程度ですが、違和感をなくすために鎮静剤を使用している病院がほとんどです。また、大腸は動きやすい器官ですので検査をしている間に不用意に動かないように、検査前に鎮痙剤(消化管の動きを抑制する薬)を注射します。
検査に要する時間は準備から終了まで30分ほどですが、実際に内視鏡を入れて中を観察しているのは10分程度です。検査中はもちろん意識がありますから、医師に質問したり要望を伝えたりすることもできます。病院の中には鎮静剤ではなくて少量の麻酔を使用するところもありますが、この場合には眠っているうちに検査が終わってしまったということもよくあります。
腸内の観察がしやすいように空気を内部に送り込んで腸を膨らませることもありますが、腹部の膨満感は1~2時間程度で消失しますので心配はいりません。大腸内からの消失時間が短い二酸化炭素を送気している病院もあります。

内視鏡検査はほとんどの場合、入院せずに外来で行っていますが、検査中にポリープが発見された場合、4mm以下の大きさであればそのまま切除してしまうことができます
検査後は自分で車やバイクを運転するのは非常に危険ですので、誰かに付き添いで来てもらうかタクシーでの来院をおすすめします。

 

大腸内視鏡検査ではどこの病院でもできるだけ痛みや違和感が少ない方法を採用しています。とはいえ大腸は曲がりくねってしかも固定されていない器官ですから、検査医は非常に気を使いながら検査を行うことも確かです。
検査に関して不安なことや不明な点、疑問に思うことがあれば検査前にあらかじめ質問をし、納得した上で落ち着いた気分で検査を受けるようにしましょう。
日本はもともと大腸がんが少ない国だったのですが、食生活の変化と共に発生率が上昇傾向にあります。そして大腸内にあるポリープががんに至るまでには、平均して10年ほどの歳月がかかるといわれています。そのため、大腸内視鏡検査は子宮がん検診などと違ってそれほど頻繁に受ける必要はありませんが、目安としては5~10年に1回程度受けておけば安心です。