大腸内視鏡検査の仕組みをご紹介

大腸の内視鏡検査は健康診断や人間ドッグなどでも受けることのできる検査です。大腸内視鏡検査は、大腸内にあるさまざまな病気を発見し治療する目的や、患部の組織を一部採取して検査を行うために実施されることがほとんどです。
ひと昔前は痛みがあると言っている人が多かったのですが、最近では医療技術の発達により比較的痛みのない大腸内視鏡検査が行われるようになってきています。初めて大腸の内視鏡検査を受ける人は一体どんなことを行うのか、仕組みがわからずに怖いと思う人が多いです。今回は大腸の内視鏡検査の仕組みについてご紹介していきます。

大腸内視鏡検査はどんな理由で行われるの?

日本では食の欧米化が進み、年々大腸がん患者が増えている傾向にあります。さらに現代人は利便性のよい生活ができているおかげで、運動不足や肥満といったことで大腸の状態が悪い人が多いです。2016年のがんで死亡した人の統計では、男性は3位、女性は1位に大腸がんの患者が多いという統計結果が出ています。

実は大腸がんの前に良性ポリープができるケースが85%と高いことがわかっており、ポリープを切除することでがん化を防げることが多いです。

また、若年層にはクローン病や潰瘍性大腸炎といった難病指定にされている大腸の病気が増えています。大腸がんやクローン病などの自覚症状が現れたときには、病状がかなり進行していることが多いので、早期発見をすることが大腸がん予防や治療の重要なポイントになってくるのです。

健康診断などで行われている便潜血検査では、出血がないのでポリープを見つけることができません。内視鏡を入れることに抵抗がある人は、バリウムでの検査を希望する人が多いですが、こちらはX線を使用して大腸内の様子を見るものです。そのため大腸内の色を見ることができず、バリウム検査で異常が見つかった場合には、より詳しい状況を見たり生検を行ったりするために大腸内視鏡検査を受けなければなりません。そのため最初から大腸内視鏡検査を受けたほうがよいと言えます。

患者本人が症状でがんだと思い込んでいても、実際に大腸内視鏡検査を行うと他の病気だったということも多いです。早期発見した小さながんの場合は、内視鏡で切除することも可能となっているので、定期的に大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。

大腸内視鏡検査はどのような仕組みになっている?

大腸内視鏡検査の仕組みはとても単純です。大腸内視鏡検査では、肛門から内視鏡という小さなカメラを挿入して大腸内の様子を観察し、必要があればポリープやがん細胞の切除などの処置や、検査に必要な粘膜などを採取します。内視鏡は細いコード状になっており、複雑に湾曲している大腸の中を自在に移動することができます。

大腸内視鏡検査自体は1日で終わりますが、検査を受けるためには大腸内を空っぽにしなければならないため、前日から準備を行う必要があります。大腸内視鏡検査の手順は以下のとおりです。

前処置

大腸内視鏡検査の前処置は、大腸内を空っぽにすることが目的で行われます。病院によっては前日の検査食を渡されることがあり、21時まで夕食をすませ、21時以降当日の検査終了まではお茶や水といった糖分のない水分補給のみとなります。

当日の流れ

検査当日は「腸管洗浄剤」を約2リットル服用し、大腸の中を空っぽにします。予約していた検査時間に来院し、看護師に排便状況などを伝えます。特に問題がなければ、検査に入りますがこのときは大腸の動きを弱くする薬を注射します。

肛門から内視鏡をゆっくりと挿入しますが、このとき大腸にガスを送って大腸を広げながら内部を観察していきます。様子を見るだけなら15分ほどで終わりますが、ポリープ切除などの処置がある場合は30分ほど時間がかかることもあります。

検査後

検査後は大腸内視鏡検査で撮影した画像を見ながら、検査結果の説明を受けます。当日は「腸管洗浄剤」の影響もあるので、激しい運動は避けて安静にします。組織検査を行ったときは当日、ポリープ切除の場合、約2週間は辛い物やアルコール類の摂取を控える必要があります。

なお大腸内の癒着や患部の痛みがひどいような場合や、腹部の手術経験がある人のように大腸内視鏡を挿入するのが難しい場合には、カプセル型の大腸内視鏡を使用することがあります。

大腸内視鏡検査でできることとは?

大腸内視鏡検査は大腸内を観察する以外にも、できることがたくさんあります。大腸内視鏡検査時に行うことができることには、次のようなものがあります。

  • 大腸内のカラー映像をリアルタイムで見ることができる
  • 生検に必要な大腸内の組織を採取できる
  • ポリープや病変の切除
  • アニサキスなどの寄生虫の診断と摘出
  • 出血部分の止血
  • 異物の摘出

大腸内の様子をカラーでリアルタイムに見ることができれば、X線検査で見逃しがちな小さな病変を発見しやすいです。また目視だけで病変かどうかの判断が難しい場合には、疑わしい部分に特殊な光を当てたり色素の散布、拡大して観察したりすることで、バリウムを使用したX線検査よりもより具体的な病名を絞りやすくなります。

また大腸内視鏡検査では、がんなどの病気かどうかを調べるための生検に必要な細胞を、開腹手術をせずに比較的痛みが少ない状態で採取することができます。ポリープや病変部の切除も行うことができますが、出血の有無やポリープや病変部の大きさにより可能な大きさが決まっています。

このほかにも特殊な器具を使用して炎症や穿孔で出血している患部の止血をすることもでき、最近増えている寄生虫・アニサキスの摘出や遺物の摘出など、さまざまなことを行うことが可能です。処置に使用する器具はすべて大腸内視鏡検査用に作られた専用の器具で、大腸内視鏡のように細いチューブ状になっているので、患者の痛みや体力的な負担が少なくてすむようになっています。

大腸内視鏡検査でわかる病気

大腸内視鏡検査は大腸がんの早期発見を考えて受ける人が多いですが、大腸がんやポリープ以外にもさまざまな病気を発見することができます。病気の診断を行うには大腸内の粘液や細胞を採取して、より詳細な検査を行い、その検査結果と病状から病気を特定する仕組みになっています。

大腸憩室症

大腸憩室症は病気というほどのものではありませんが、大腸の壁の一部分が腸壁の外に飛び出すことで、炎症や出血を起こしている場合があります。

虚血性腸炎

虚血性腸炎はストレス・便秘・喫煙・飲酒といったものが原因で起こることが多く、結腸の血流が低下することによって限られた範囲で炎症を起こします。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は国の難病指定を受けている病気で、自己免疫疾患に分類されます。自分の持っている免疫が大腸の粘膜を攻撃してしまうことで大腸内に炎症が起こります。症状のない人もいますが、症状悪化すると下血などの症状が現れます。

クローン病

クローン病も潰瘍性大腸炎と同じく国の難病指定になっている病気で、大腸だけでなく消化器全体に症状が現れることも多い病気です。原因ははっきりとしていませんが、消化器内に潰瘍ができてしまう病気で下痢や腹痛と言った症状が主で、出血は少ないです。

これらの病気のほかにも、大腸内視鏡検査で採取した細胞を検査することで、アメーバー赤痢などの寄生虫や、細菌・ウィルスが原因で起こっている大腸炎や、放射線や薬の影響で起こっているもの、血流の異常といったものを発見することが可能です。

大腸内視鏡検査は、肛門からチューブ状の内視鏡を入れ大腸内の様子をリアルタイムで見ることができます。必要な場合は細胞や粘膜を採取し、より詳しい検査を行い患者の症状と併せて見ることで病気を特定していきます。またアニサキスなどの寄生虫の駆除や、出血部分の止血、ポリープの削除などさまざまな処置を行うことが可能です。

大腸がんはがんの中でも死因の上位に入る病気ですが、早期発見することで治療可能な病気です。医療技術の発達により大腸内視鏡検査は患者の負担が少なく痛みも少ない検査なので、自身の健康管理のためにも定期的に大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。