大腸内視鏡検査は「どこで受けても同じ」という検査ではありません。最初に受けた検査によって、次回以降も検査を受けるかどうかの判断に影響がでるほどです。けれど、どこにしようかとネットで医療機関の一覧を出してみても、何を比較して、どういう基準で選べばいいのかよくわからないことも多いでしょう。
そんな時は、各医療機関の「医師の実績」「検査方法」「ポリープが発見された時の対処法」「検査の受けやすさ」で比較してみましょう。自分にぴったりの医療機関が見つかれば、定期的な検査につながり大腸の病気の早期発見にも役立ちます。
目次
医師の大腸内視鏡検査の実績で比較
大腸内視鏡検査では、検査にあたる医師の技術が何より重要です。医師の技術が検査で感じる痛みの強弱や検査の精度に直結するからです。
例えば、大腸内視鏡検査で感じる痛みの原因のひとつは、内視鏡がS字結腸を通過する時に起こります。ここをスムーズに通過させられるかがポイントですが、S字結腸は腹腔内で動くため、挿入には医師の技が必要になります。また、内視鏡で映し出された映像から、いかに見落とすことなく小さな病変を見つけ出すかは、病気の早期発見の重要なカギでしょう。
ただ、そうは言っても、内視鏡の操作技術は実際に検査を受けてみなくてはわからないですし、病変見落しを知るすべはありません。では、私たちはどうすればいいのでしょうか?
ひとつの目安となるのが検査実績です。経験を積むことで力がつくのは他の仕事も医療の世界も同じです。もちろん、検査実績の少ない医師の中にも器用な人はいるでしょうし、その逆もあるかもしれませんが、全体としてみれば、やはり、経験は技術力となっていきます。
検査実績を知るために、医療機関のホームページをチェックするのもひとつの手ですが、気をつけなければならないのは、大半のデータは「医療機関」の検査実績であるということです。つまり、検査に関わっている医師が5人いる病院なら、5人で作った数値であり、個別の実績はわかりません。
医師個人の実績を知りたい場合は、日本消化器内視鏡学会の専門医や指導医に認定されているかを見てみましょう。一定の要件をクリアしていないと専門医や指導医になれないため、ひとつの目安になります。
大腸内視鏡検査の検査方法で比較
大腸内視鏡検査は、腸内をきれいにする前処置と、実際に内視鏡を入れて観察する検査の2段階で行なわれます。検査の流れはどこの医療機関でもほぼ同じですが、その方法に違いがあります。
前処置では、前日に下剤を飲み当日朝に2リットルほどの洗腸剤を飲んで、腸内をきれいにするという方法が一般的です。ただ、洗腸剤を2リットル飲むのはなかなか大変な作業。そこで、いろいろな選択肢を用意している医療機関もあります。代表的な例としては、液体ではなく錠剤の前処置薬を使ったり、大腸内視鏡検査の前に胃部内視鏡検査を行い、胃部内視鏡から直接腸に洗腸剤を注入したりする方法です。
内視鏡検査時に鎮静剤や鎮痛剤を使用するかも、大きく対応が分かれるところです。鎮痛剤や鎮静剤を使用して検査を行なうと、痛みや不安をほとんど感じることなく検査が受けられますが、反面、検査が終わっても休息が必要になり、当日は車の運転もできません。また、麻酔中の全身管理が必要になります。
麻酔を使わなければ、麻酔によるデメリットもなく、検査中に医師とコミュニケーションを取ることも可能ですが、痛みの強さは医師の腕次第となってしまいます。
腸を膨らませるために使われる気体にも違いがあり、空気を入れる場合と、吸収が早くお腹の張りの少ない二酸化炭素を入れる場合があります。また、空気の代わりに水で腸を満たす、浸水法を採用しているところもあります。
検査方法については、ひとつの医療機関で複数の選択肢から選べる場合もありますが、統一したやり方で検査を行なっていることもあります。どの検査方法を採用しているのかを比較すると医療機関の違いが見えてきます。
発見されたポリープに対する処置で比較
大腸内視鏡検査を受けると、ポリープが発見されることがよくあります。そして、内視鏡で切除した方がいいポリープがあった場合の対応は、医療機関によっておおよそ次の3つに分かれます。
1.自分のところでは切除は一切行なわず、専門医療機関へ紹介状を書く
2.その場では切除を行なわず、日を改めてポリープ切除を行なう
3.ポリープを発見したら、その場で切除を行なう
これらの対応は、どれが優れていて、どれが劣っているということはありませんし、それぞれにメリットもあります。1・2のように後日切除を受ける場合は、自分でしっかりと状況を確認した上で切除が受けられるので、詳細な説明を受け納得したうえで切除したい人にはこの方法が向いています。一方、3のようにその場で切除してもらうメリットは、時間的・費用的な無駄をなくせることです。後日改めて、前処置から準備を始める負担がありません。
また、ポリープの切除にはいくつかの方法があって、どの方法を積極的に採用しているかは医療機関によって異なり、また、ポリープの状況によっても変わります。代表的なポリープの切除方法としては、ポリープの根本に金属の輪をかけて緊縛し、電流で焼切る方法(ポリペクトミー)や、ポリープを緊縛し焼切らずに切除する方法(コールドポリペクトミー)、ポリープの根本を液体で膨らませてから緊縛し焼切る方法(内視鏡的粘膜切除術)などです。
まずは、ポリープが見つかった場合に自分がどういう対処を望むか検討してみましょう。
検査の受けやすさで比較
大腸内視鏡検査を受けることに対し、検査そのものや検査を取り巻く環境に障壁を感じているひとは少なくないでしょう。そのような障壁を取り払おうと、工夫を凝らしている医療機関も増えつつあります。
まず、検査の障壁となっているのは時間の確保です。大腸内視鏡検査は、前処置・検査・麻酔後の休息を含めると、どうしても一日がかりになってしまいます。そのために有給休暇を使うとなると、ついつい先延ばしということになりかねません。平日では時間をとりにくい人のために、土曜・日曜に大腸内視鏡検査を実施している医療機関があります。仕事を休むことなく検査を受けられるのは嬉しいですね。
また女性の場合、前処置でトイレに行く姿を見られるのが恥ずかしい、男性医師に検査して欲しくない、男性のいる前で検査衣姿になりたくないなど、男性とは違った心配ごとがあります。そんな女性の気持ちに寄り添うように、女性外来専門の日を設けたり、前処置中にトイレ付の個室で過ごすことができたり、常勤の女性医師が検査にあたる体制を整えている医療機関もあります。
どうしても、大腸内視鏡検査には抵抗があるという場合には、口からカメラ入りの小さなカプセルを飲み込み撮影するカプセル内視鏡検査という選択肢もあります。デメリットは費用が高いことと、ポリープが見つかってもその場で切除することができないこと。大腸内視鏡検査が怖いからという理由では自費診療扱いとなり、10万円以上の検査費用がかかります。
ホームページに欲しい情報が詳しくかかれていない場合は、積極的に問い合わせてみましょう。大腸内視鏡検査に不安を持っているひとは多いので、医療機関側もきちんと答えてくれるはずです。
最後に
希望の条件を比較検討した結果、全てが条件どおりの医療機関があればそれに越したことはありませんが、そう上手くいかないこともあるでしょう。そんな時は、条件に優先順位をつけてみてください。そして、自分が譲れない部分を満たす医療機関に行き、医師に他の条件を相談してみましょう。親身になってくれる医師ならば、一緒にいい方法を探してくれるに違いありません。