厚生労働省が発表した資料によると平成29年に亡くなった人の死亡原因は心疾患(心臓)や脳血管疾患を抑えて、悪性新生物いわゆる「がん」で亡くなった人が一番多かったようです。男女別に見てもがんで亡くなられた人が一番多く、男性では30%以上の人が女性でも20%以上の人ががんを原因として亡くなっています。
特に女性で大腸がんになる方が増えており、その数は年々増加しています。しかし最近の先端医療ではがんは早期発見すればがんは治る病気で、特に大腸がんは早いで治療すると生存率も90%以上になります。
そこで今回は女性が大腸内視鏡をうけるときの注意点についてお話したいと思います。
目次
女性の大腸がんが今増えている!?
日本人の死亡原因の1位はがんです。平成29年のがんの死亡原因を部位別に見てみると、男性は肺がんで亡くなる人がいちばん多く続いて胃がん・大腸がんとなっています。女性は大腸がんで亡くなる人が一番多く、続いて肺がん・胃がんとなっているのです。数年前までは女性ががんになる部位別では乳がんが一番多かったのですが、最近では大腸がんになる人が増えています。
大腸がんは食生活が大きく影響すると言われていて、最近の日本ではライフスタイルの変化で欧米化された食事が中心となり食生活が豊かになりましたが、それと引き換えに私たちは大腸がんをはじめ様々な病気のリスクが出てくるようになりました。
大腸がんは早い段階では症状が出ないことが多く、自覚症状が出てきた時には大腸がんが進行している場合がほとんどです。症状は腹痛・お腹の張り・嘔吐や腸閉塞などがあり特に排便障害が出てきた時にはがんがかなり進行していることが多いです。
しかし大腸がんは早期発見・早期治療をすれば生存率も高くなりますので、早い段階で大腸がんを見つけることが大切です。初期の段階では自覚症状がほとんど出ない大腸がんを見つけるには大腸がん検診が重要になってきます。
健康診断などの大腸がん検診で陽性反応が出ると再検査になり、その場合は肛門からファイバースコープと呼ばれる細い管を入れて大腸内を直接観察する、大腸内視鏡を使った検査が一般的ですが、女性の場合は大腸内視鏡の検査を抵抗があり受診が遅れる人が多いようです。
女性のがんと言えば乳がん・子宮がんなどが一般的でしたが、最近では乳がん検診や子宮がん検診を受診される方も多くなり、早い段階でがんが見つかるようになり治療によって乳がん・子宮がんで亡くなられる人は減ってきています。
がん治療には早期発見・早期治療がとても重要です。
大腸内視鏡とはどのような検査なのか?
大腸がんや大腸ポリープなどの大腸のいろいろな疾患の診断や治療になくてはならない大腸内視鏡とはどのような検査なのでしょうか。
大腸内視鏡は先端に小さなカメラを装着しているファイバースコープと呼ばれる人差し指の太さほどの長い管を、肛門から挿入して大腸内を直接詳しく観察しますので、女性にとっては抵抗があり、検査を受けるのを躊躇されて発見が遅くなり、女性のがんの死亡原因のトップになったのだと考えられます。
それ以外にも大腸内視鏡は検査を行う前からしっかりとした下準備が必要になります。まず大腸内視鏡を行う前日から消化の良い食事をして、夜には水分以外のものは制限しないといけません。検査当日には朝から絶食はもちろんのこと、施術時間の5~6時間前から下剤を飲み何度も排便をして大腸内をきれいにして便が透明の尿のような水分になるまで続けなければならず、これも大腸内視鏡を躊躇させる原因の一つではないかと思います。
しかし大腸内視鏡は大腸内の腫瘍や潰瘍をリアルタイムに直接確認できる唯一の手段で、大腸内を観察している途中に病変を見つけ、悪性が疑われれば組織を採取して詳しく検査をした、場合によってはその場で切除することもできます。
検査と同時に治療をすることができるのは大腸内視鏡のみで注腸造影検査やCTなどの他の大腸がん検査にはない魅力です。
また大腸内視鏡は大腸がんだけではなくその他の大腸の疾患を見つけるのに有効な手段で、大腸ポリープ・大腸憩室炎・潰瘍性大腸炎・クローン病など大腸内視鏡の検査によって発見されることがほとんどです。
ご家族の中で大腸がんになった方がいる人や、少しでも大腸に違和感を感じている人、50歳以上の人は一年に一回定期的に大腸内視鏡を検査されることをお勧めします。
大腸内視鏡検査を受ける時に気を付けたいことは?
実際に大腸内視鏡検査を受けられるときには気を付けないといけないことがいくつかあります。まず大腸内視鏡検査は大腸内をすべて空っぽにしてから検査するので下剤を大量に服用して大腸内をきれいにしなければいけません。
下剤で大腸内をきれいにできない時には浣腸をしないといけませんので、大腸内視鏡検査が決まれば検査日の2~3日前から消化の良い食べ物をとることをお勧めします。
また大腸内視鏡検査は大量の下剤を飲んで排便するために何度もトイレに行かなくてはいいけないですし、急にもよおして間に合わず下着を汚してしまうこともしばしばあります。大腸内視鏡検査をする当日には下着の替えを多めに持っていくようにしましょう。
通常大腸内視鏡検査は外来で行うので入院の必要はなく、大腸内視鏡検査自体は2~30分ほどで終わりますが、途中に腫瘍の細胞を採取したり、ポリープを切除したりすると大きさにより時間が異なり、場合によっては入院することもあります。検査終了後は少し休憩をして問題がなければ帰宅できるようになります。
大腸内視鏡検査は細い管を大腸内に挿入しますので、熟練の医師が施術してもどうしてもお腹の張りや違和感、痛みを感じやすくなります。そのために病院やクリニックによっては検査前に鎮痛・鎮静剤を投与する場合があるので車での来院は避け、検査当日は車・バイク・自転車の運転は止めておきましょう。
また普段服用している薬の中で大腸内視鏡検査をする時には中止しないといけない薬がありますので、検査を受けるさいには必ず服用している薬を主治医に伝えて指示をあおいでください。
女性は出産後に痔になる人が多く、人によっては痔が慢性化する人もいると思いますが、痔の方は肛門の回りにゼリーを塗るなどの処置をしてから検査が始まるので痔の人でも安心して検査を受けられます。
大腸内視鏡検査を受けるときに注意することをいくつか例をあげましたが、その他にもご不明な点や不安なことがあれば、主治医に相談するとよいでしょう。
大腸内視鏡検査後の注意点は?
大腸内視鏡検査後は大腸に空気が入っていてお腹の張りが気になると思いますので、できるだけガスを抜くようにしてください。
食事ははじめ水分のみを取り、始めは具なしのお粥やスープ・うどんなどの消化の良い食べ物にし、検査当日は腹筋を使うような激しい運動や飲酒・入浴は止めてシャワーのみにしましょう。また大腸内視鏡検査後に便に血液が混じる場合があり、少量であれば様子を見ていただき、便器が真っ赤に染まるような出血や痛みが長引く場合はすぐに病院へ連絡をしてください。
大腸内視鏡で検査だけではなく腫瘍の細胞を採取したり、ポリープ切除したりされた場合は大腸内視鏡検査後の注意事項が少し変わってきますので、その際は主治医もしくは看護師の指示に従いくれぐれも自己判断をしないようにしてください。
大腸内視鏡検査は下準備の必要性や肛門から管を挿入しての検査になるので、どうしても女性は躊躇してしまいます。また女性は痔を持っている人も多く、大腸がん検診の便潜血検査で陽性であったとしても、痔のせいにして再検査を受けられない人が多いのが現状です。
大腸がんは治りやすいがんで、早期の大腸がんであれば5年生存率が90%以上と高く、治療も体への負担の軽い大腸内視鏡治療で済みます。女性も躊躇せずに大腸内視鏡検査を定期的に受けていただきたいと思います。