無痛の大腸内視鏡検査がある!痛みが苦手な方も安心

近年がんの中でも大腸がんでの死亡率が高くなっており、定期的に大腸がん検診を行う人が増えています。また若年層の間ではクローン病や潰瘍性大腸炎のような難病指定の病気にかかる人が増えており、お腹の不調で大腸内視鏡検査を受ける人が多いです。
しかし大腸の内視鏡カメラというと、肛門からスコープ状の内視鏡を挿入することから、怖い・痛いといったイメージを持つ人が多く、実際に検査を受けた人の中でも痛みが強く二度と受けたくないという人もいます。
医療技術が発達したことで、痛みの少ない検査方法もいくつか登場しましたが、実は無痛で行うことのできる大腸内視鏡検査があります。今回は、その無痛で行うことのできる大腸カプセル内視鏡について解説していきます。

無痛で行える大腸カプセル内視鏡検査とは?

会社での健康診断や自治体などの行っている集団検診での便潜血検査を受けたときに、陽性反応が出てしまったときは、大腸の内視鏡検査をすすめられます。また、原因がはっきりしない下痢や腹痛が続くような場合も、原因を調べて病名を確定するために大腸の内視鏡検査をすすめられることもあります。しかし従来のスコープ型の大腸内視鏡だと、痛みを伴うことから検査を受けることに不安を感じ、躊躇してしまう人が多いです。

2014年に登場した「大腸カプセル内視鏡査」は、一般のカプセルは直径約11cm、長さ約2.6~3.1cmほどのカプセルの中にLEDライトと2台の小型カメラなどの必要な機器が内蔵されています。1秒間に4~35フレーム撮影が可能で、無線で外部にある装置に撮影したデータを送るシステムになっています。検査は小型内視鏡の入ったカプセルを薬と同じ用に服用するだけです。カプセルは使い捨てのため、検査終了後は排便で体外に排出することができます。万が一、内視鏡カプセルが体内に留まってしまった場合は、内視鏡で摘出したり下剤を使用したりするなどの方法で体内から取り出す必要があります。

大腸内視鏡カプセル検査は腹部の手術歴があったり、大腸の癒着・炎症がひどいような場合や今までの大腸内視鏡検査が恥ずかしかったり、痛みや恐怖を感じることで受けることができなかった人に対しすすめられることが多いです。鎮痛剤などを使用しなくてもよく無痛で済ませることができるので利用者が増えている検査方法です。

通常の大腸内視鏡検査と大腸カプセル内視鏡検査の違い

今までの大腸内視鏡検査と大腸カプセル内視鏡検査には、次のような大きな違いがあります。

  • カプセル内視鏡は無痛で恥ずかしさがない
  • スコープ型の内視鏡検査のように医師の技術レベルは関係ない
  • カプセル内視鏡は検査時間が長く、検査料金が高い
  • スコープ型は横になっていなければならないが、カプセル内視鏡は自由に動き回ることができる

今までのスコープ型の大腸内視鏡検査は、肛門から挿入する必要があるため恥ずかしさを感じる人が多いです。またスコープを奥まで入れるには大腸を膨らませながら進める必要があり、U字になっている部分に内視鏡が当たって痛みを感じる人が多いです。またスコープの扱いや痛みの感じ方は医師の技量レベルに左右されやすいという特徴がありました。

しかしカプセルタイプの内視鏡は服用するだけなので、検査時に恥ずかしさを感じることがなく無痛ですみ、医師の技術レベルは問いません。また検査スコープ型の場合は、検査中は横になっていなければなりませんが、カプセル内視鏡の場合はカプセルがスムーズに移動できるように、検査時間内は病院内で自由に動き回ることができます。

さらにスコープ型の場合は15~30分で検査が終わりますが、カプセル内視鏡は5~10時間と検査にかかる時間が倍以上になるという違いがあります。そして検査費用もスコープ型とカプセル型とでは異なります。スコープ型の場合は平均5,000~8,000円ですみますが、カプセル内視鏡の場合はただいたい保険適応で約35,000円前後、自費の場合は110,000円前後と幅がある点は注意が必要です。

大腸カプセル内視鏡検査の流れ

カプセル内視鏡検査は、スコープ型の内視鏡と同じように、外来で行います。

検査前日

前日の食事時間などの指定時間や夕食後、もしくは就寝前の下剤の服用などに関しては、スコープ型と同じです。大腸内を空っぽにして撮影を行うので、この工程は省くことができません。

検査当日(検査前)

検査当日は病院についてから、検査前に「腸管洗浄剤」を飲んで、腸内の洗浄を行い、カプセル内視鏡から送られるデータを受信するための記録装置やセンサーの機器を体に取り付けます。

検査開始から終了まで

カプセル内視鏡検査担当の医師や技師から指示があるので、指示に従ってカプセル内視鏡を飲み込みます。その後も医師や技師の指示に従い検査終了まで過ごします。検査終了は排便時にカプセルが排出できたタイミングになり、排出したカプセルは病院で指定している回収パックに入れて提出します。

検査結果の説明

カプセル内視鏡は検査結果がでるまでに1~2週間ほどかかり、病院で来院日について説明があるので、指定された日に病院で医師から詳しい検査結果を聞くことができます。カプセル内視鏡の検査でポリープやがんなどが発見されたときは、医師と相談して治療方法などを決め治療を開始します。

カプセル内視鏡が体外に排出されるまでの時間は、腸内の動きなどに関係してくるのでどうしても個人差がでてしまいます。カプセル内視鏡検査を受ける場合は、余裕をもって丸1日時間を取ったほうがよいです。カプセル内視鏡では鮮明な画像を撮ることができますが、便潜血検査も併用して受けることで、大腸がんの発見確率を上げることができます。

カプセル内視鏡大腸検査の注意点

大腸カプセル内視鏡は、痛みがなく受けやすい検査ですが、注意すべき点がいくつかあります。

  • 腸管洗浄剤や下剤の服用量がスコープ型より多くなる
  • 保険適応されない場合があり検査費用に幅がある
  • 検査時にポリープなどの切除や組織採取ができない
  • 腸内に狭窄(きょうさく)ができている場合は検査を受けられない

大腸カプセル内視鏡検査の場合は、従来のスコープ型よりも腸管洗浄剤の服用量が若干多くなります。またカプセルの排出を促すために下剤を飲む量が増えるというデメリットがあります。そして検査費用ですが、スコープ型は保険適応範囲ですが、カプセル型の場合はスコープ型での検査が困難な人や過去に大腸の検査が受けられない人が保険適応になり、場合によっては自費で受けなればならない場合があります。

検査を受ける条件も、腸内に狭くなっている部分(狭窄)がある場合は受けることができません。そしてリアルタイムで第腸内の様子を見ることができないため、ポリープなどがあっても検査時に取り除くことができないというデメリットがあります。そのため、大腸カプセル内視鏡検査で病変が発見された場合は、再度スコープ型で検査を受けて詳しい検査を行うことや、病変の摘出・生検用の組織採取と言ったことを行う必要がある点は注意が必要です。

大腸カプセル内視鏡検査を受けるときは、これらの注意点を踏まえたうえで検査を行う必要があります。病変が見つかったときのことを考えると、スコープ型で最初から検査したほうがよいという人もいます。

大腸カプセル内視鏡検査は、医師の技術力に頼ることなく無痛で行うことのできる、画期的な大腸の検査方法です。痛みがなく手軽に行うことができますが、希望者がすべて行うことができるわけではなく、条件によっては保険を適応することができなくなり費用が高くついてしまうことも多いです。
また病変が見つかった場合は、追加でスコープ型の内視鏡検査を行い、より詳細な状況を確認したり生検に必要な細胞の摂取・病変部分の摘出を行ったりする必要があるなど、メリットよりはデメリット的な部分があるので注意する必要があります。スコープ型とカプセル型の特徴をよく考えて、自分に合った方法で大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。