「大腸内視鏡検査の後に腹痛が…」はなぜ起こる?2つの回避方法!

大腸の内視鏡検査を経験した人の中には、「検査中にひどい腹痛があった」「検査後もお腹が張って痛くて辛かった」という感想を持つ人がいます。

それが原因で大腸内視鏡検査を避けてしまう人も少なくありません。しかし、検査で痛みを感じることには理由があり、それを防ぐ方法もあります。

この記事では「大腸内視鏡検査のやり方」「検査で腹痛になる理由」「腹痛にならない方法」「検査を受ける必要性」について紹介します。一度検査を経験したことがある方は昔を思い出しながら、これから初検査の方は参考として、今後受診する病院・クリニック選びに役立ててください。

大腸内視鏡検査の具体的な検査内容は?

大腸内視鏡検査は、肛門から太さ11~13mmの柔らかい素材でできた細長い内視鏡を挿入し、大腸全体を観察し症状を把握する検査方法です。基本的に検査における痛みはほとんどなく、通常は10分程度で終わります。内視鏡を挿入する際は、専門医が処置を行うので、安心して検査を受けることができます。

事前の注意点として、大腸内視鏡検査では前もって腸の中を綺麗な状態にしておくということが挙げられます。内視鏡を挿入した際に、便が邪魔で詳しく調べることができないため、大腸の中を空にしておく必要があるのです。

大腸を綺麗にするには、主に7つの準備方法があります。まず大きく分けて自宅で行う「在宅洗浄法」と、病院で行う「院内洗浄法」があります。

在宅洗浄法は、下記の4つの方法があります。

「モビプレップ法」:自宅にて検査当日に洗浄液「モビプレップ」を飲む方法
「ニフレック法」:自宅にて検査前日に下剤を服用し、検査当日に洗浄液「ニフレック」を飲む方法
「ビジクリア法」:自宅にて検査当日に錠剤の洗浄剤を飲む方法
「ブラウン変法」:検査前々日より検査食と言われる便になりくい食べ物と2種類の下剤を服用する方法。洗浄剤の服用が不要な反面、当日院内検査をする際に浣腸の回数が多くなってしまうデメリットがある
院内洗浄法は、下記の3つの方法があります。
「モビプレップ法」:院内にて検査当日に洗浄剤「モビプレップ」を飲む方法
「ニフレック法」:自宅で検査前日に下剤を服用し、検査当日に院内で洗浄剤「ニフレック」を飲む方法
「ビジクリア法」:院内で検査当日に錠剤の洗浄剤を飲む方法

大腸内視鏡検査で腹痛になる理由とは?

大腸を観察する方法として、大腸内視鏡検査は現時点では最も精度の高い検査方法ですが、検査後に「お腹が張って苦しくて痛い」という経験をされる方がいるのも事実です。なぜ大腸内視鏡検査後に腹痛が起きるのでしょうか?そのメカニズムを具体的に見ていきましょう。

大腸は元々ぺちゃんこの状態なので、そのままでは内視鏡を挿入し検査を行うことができません。なので、検査の前に大腸に空気を送り大腸内を拡張してから、細部を観察していきます。この空気を入れる作業で、お腹の張りという症状が伴います。検査後に空気をできる限り抜く処置を行いますが、全ての空気を抜くのは難しく、多少なりとも大腸内に空気が残ってしまいます。これが大腸内視鏡検査後の腹痛の原因です。

しかし最近の技術では、「内視鏡用炭酸ガス送気装置」を用いることで、腸内に炭酸ガスを送り込む処置が可能になりました。炭酸ガスは空気よりも速やかに体内に吸収されてなくなるため、検査後にお腹が張ったり痛くなったりする可能性が大幅に低減されます。イメージとしては炭酸飲料を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。炭酸を飲んだ瞬間は胃が張りますが、その後もずっと胃が張りっぱなしということはありませんよね。

このように「内視鏡用炭酸ガス送気装置」を設置している病院やクリニックでは検査後の不快感を軽減することができますが、この機器はどこにでもあるというわけではありません。炭酸ガスは保険請求できないというのが大きな理由です。つまり、「内視鏡用炭酸ガス送気装置」を設置している病院やクリニックは、患者のことを考えていると捉えることができるでしょう。

大腸内視鏡検査で腹痛にならない方法

炭酸ガスを用いた方法で大腸内視鏡検査後のお腹の張りはやや改善されますが、それでも以前に検査を受けた時の印象が強く残っていて、「大腸内視鏡検査=痛い」というイメージが拭い去れずにいる方も少なくありません。「では麻酔を使って検査すればいいのでは?」と考える人もいるでしょう。確かに麻酔を使えば検査後の痛みも和らぎますが、下記のようなデメリットも伴うので、しっかり理解しておく必要があります。

1、痛みの感覚がなくなり腸に穴を開けてしまう恐れがある。
2、検査中に変化があっても会話ができないため本人にその変化状況を教えてもらえない。
3、内視鏡映像を見ながら症状の説明ができない。
4、検査費用が増加する。
5、点滴や薬剤の使用によってアレルギーなどの発症リスクを増加させる。
6、麻酔レベルが深すぎた場合低酸素脳症など思わぬ後遺症の恐れがある。
7、麻酔が覚めるまで安静が必要ですぐに帰宅できない。
8、麻酔使用後は車の運転ができない。
9、麻酔の影響でしばらく眠気やだるさが生じる。

麻酔で感覚を遮断することで負わなければならないリスクもあるので、軽い気持ちで利用すべきではありません。それでも麻酔を使用したい場合は、少量の麻酔で効果が得られる「意識下鎮静法」を採用している病院やクリニックを選ぶとよいでしょう。

「意識下鎮静法」とは鎮痛剤や鎮静剤による静脈麻酔のことで、熟睡している間に痛みを伴わず検査を受けられます。全身麻酔ではないため、呼びかけすれば目を覚ますことができ、麻酔の効果は1~2時間続きます。もちろん検査後の運転は禁止ですが、少し休んでから当日帰宅できます。

大腸内視鏡検査を受ける必要性

大腸内視鏡検査で不快感や痛みを経験すると、以降の検査を受けるのをためらう人も多くいますが、定期的に内視鏡検査を受けることはとても重要なことです。日本では大腸がんは増加傾向にあり、国立がん研究センターの2016年最新がん統計データによると、男性では1位肺がん、2位胃がんに続き、大腸がんの罹患者数は第3位です。女性では、1位が大腸がんとなっています。がん全体で見ると、50才を過ぎた辺りから急激に増加傾向にあるため、40才を過ぎたら検査を必ず受けるなど、がんに対する意識を強めることをおすすめします。

大腸がんは、腫瘍性の大腸ポリープが悪性化したケースが非常に多いと言われています。このポリープを早期発見できれば、悪性化する前に切除し、大腸がんの発生を未然に防ぐことができます。ポリープは症状を伴うことが少ないため、便潜血検査で見つけることは困難です。だからこそがんの発症率が高くなる40才を過ぎてからは、定期的に大腸内視鏡検査を受ける必要があります。

大腸がんは、初期段階では症状を伴わないこともあり、血便や慢性的な下痢・便秘などの自覚症状が出た時にはかなり進行している場合が多く、とにかく早期発見が重要です。未然に防ぐためにも定期的に検査を受けることが必要であり、最も確実な方法が大腸内視鏡検査なのです。また、大腸がんやポリープ以外にも、潰瘍性大腸炎やクローン病などの大腸に関する疾病は増加傾向にあるので、これらの病状を早期に発見することができる大腸内視鏡検査は、健康管理のための有効な手立てと言えるでしょう。

最後に

大腸の内視鏡検査において腹痛になる主な原因は、検査の際に大腸に空気を入れる必要があるためです。現在では空気ではなく「内視鏡用炭酸ガス送気装置」を用いて、空気の代わりに炭酸ガスを入れることによって、大腸の張りや腹痛を抑えることができます。しかし全ての病院やクリニックが導入している訳ではないので、希望する方は事前に機器の導入の有無を確認してから受診されることをオススメします。

炭酸ガスでの検査でも腹痛があったという方には「意識下鎮静法」という少量麻酔での検査も有効です。ただし麻酔を使用した検査は様々なリスクが増加するため、検査方法は慎重に選択してください。

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