大腸内視鏡検査で日々の健康を守る

私たちは毎日、口から食品を取り入れ、これを排泄して生きています。ところが、この排泄がうまくいかなくなると、身体にさまざまな不調が現れてきます。便秘の女性であれば、大腸内に長く停留している便から毒素が出て、お肌にシミやニキビなどの悪影響を与えます。
ですから下痢や便秘、腹痛などの症状にしばしば悩まされている人は胃腸科などで定期的に検査を受けることが望ましいのです。
診察を受ける際には、下痢の回数や腹痛の位置などをメモしておけば医師のほうでも検査の方針を立てやすくなります。「忙しいから」と先延ばしにしないで、自分の身体をいたわってあげてください。

「第二の脳」とも呼ばれている腸

腸は俗に「第二の脳」とも呼ばれているほど、身体の中でも特に大切な器官です。脳からの司令を受けなくても独立して消化吸収の働きを行うことができるのが腸の大きな特徴です。
一般的にはあまり知られていないことですが、腸には1億個におよぶ脳細胞が存在しており、独自の神経系を持っています。脊髄や末梢神経系よりもニューロンの数が多い腸は、健康を管理していく上で最重要な器官だということができます。
また、体調を左右するだけではなく、感情や気分さえもつかさどる能力が腸にはあるという説が最近クローズアップされてきています。腸内細菌によって動物の性格も決定されるという説もあり、事実、マウスを使って行われた実験ではマウスAにマウスBの腸内細菌を分け与えると、マウスAの行動がマウスBに似てくるという結果が観察されました。
今後も腸と腸内細菌に関する研究はどんどん進みそうな気配ですが、研究が進むにつれて腸がいかに賢い器官であるか、いかに重要な器官であるかが解明されていくことが予想されます。
学者の中には「悲しみ」や「憎しみ」といった感情でさえも腸内環境に大きく左右されると唱えている人たちもたくさんいます。善玉の腸内細菌が多ければ性格も明るくて穏やかになりますし、腸内環境が荒れていれば性格も怒りやすくなったり悲しみに明け暮れたりするということです。
ですから腸の健康にはよく注意して、少しでも調子が悪いと思ったらすぐにでも胃腸科を受診するようにしたいものです。

大腸は美と健康を司る器官

大腸というのは単に「便を作る器官」というよりは全身の健康にかかわる器官であるらしいことがわかってきたわけですが、更に、美とアンチエイジングにも非常に重要な役割を果たしています。
腸内細菌に悪玉菌が多い人では便秘が多くなり、それに加えて肌荒れもひどくなります。便秘の日が続くと大腸に便がどんどんたまっていきますが、この古くなった老廃物からは毒性の強いガスが出て腸内をさらに悪化させます。この状態を放置しておくとお肌もどんどん悪化していき、きめの荒い黒ずんだお肌になっていってしまうのです。
それだけではなく、大腸疾患は現代女性にとっては無視できない大きな問題です。がん死亡数の中でも女性においては大腸がんが第1位を占めているほどですから、乳がんや子宮がん以上に気をつけなければならないのです。

腸年齢が若い人はお肌もきれいで実際よりも若く見え、また、脳の老化も進行しにくいことも研究でわかっています。2007年に行われた実年齢と腸年齢の比較調査によると、20代の腸年齢平均は45.7歳、30代で51.3歳、40代で54.2歳と実年齢よりも腸年齢が大幅に高くなっていることがわかります。
最近の動物性脂肪が多い食事や野菜不足などによって、腸の環境がだいぶ悪くなっていることがわかります。
大切な腸をいたわっていくためには食生活を改善し、無理なダイエットをしないで適度な運動を心掛けることが大切ですが、それと同時に定期検診などを積極的に受けて腸疾患を早期に発見することも大切です。

大腸疾患の検査方法と流れ

大腸にはいろいろな疾患が発生しますが、それに対応してさまざまな検査方法があります。とはいえ、ただ単に「便秘がちだから」といって胃腸科の診察を受けてもいきなり大腸内視鏡検査などをやってもらえるというわけではありません。
病院では、最初に血便が出ているかどうかの検査(便潜血検査)を行い、問診や便秘の度合いなどから判断して治療や検査、あるいは薬の処方などを行なっていきます。大腸内に潰瘍やポリープなどの疾患がある場合は患部から出血してきますので、便潜血検査で結果が陽性と出た場合には、何らかの疾患があると推定して大腸内視鏡検査などを行っていくわけです。
便潜血検査の結果が陰性だったけれども、大腸内に本当に疾患がないかどうか調べてもらいたいというのであれば自己負担で大腸内視鏡検査を受けることは可能です。この検査は医師が行う必要があると判断した場合だけ保険が適用されます。
便潜血検査は2日に分けて便を採取し、分析を行うので精度はある程度信頼できますが、それでも大腸がん、または大腸ポリープがある人すべてに陽性反応が出るわけではありません。
大腸がんにはいろいろな形状がありますが、この中でも平坦なタイプでは便潜血検査を行っても結果が陰性になることが多いので、血便が出ないからといって安心しているわけにもいきません。逆に血便が出たから大腸がんだと心配することもないのです。
便潜血検査は各市町村に申し込めば数百円で受けることができますので、一度問い合わせてみることをおすすめします。

大腸内視鏡検査の概要

各市町村で行っている大腸がん検査、つまり便潜血検査でも感知できない大腸がんおよびポリープもありますので、大腸がんの家族がいるような場合には、便潜血検査の結果がたとえ陰性でも大腸内視鏡検査を受けておいたほうが安心です。
大腸内視鏡検査を受けるにはまず日程を決めて、検査の前日は食事制限を行う必要があります。食べ物というのは一度口にすると胃や腸で消化吸収するのに24~30時間ほどかかります。検査の前の夜と当日の朝は下剤を数リットル飲むので腸内がかなりきれいになりますが、これと合わせて前日は夕食抜き、あるいは早い時間に済ませるようにします。夜食などももちろん厳禁です。
前日の食事内容も、繊維の多い野菜は極力避けるようにしなければなりません。朝食などもフルーツたっぷりとか野菜サラダと全粒粉のパンはこの日だけ我慢して、コーヒーとデニッシュパン程度で済ませます。昼食はうどんなどが理想的ですが、刻みネギなどの薬味は控えましょう。
大腸内視鏡検査では鎮痙剤や鎮静剤を使用しますので、痛みはそれほど感じません。痛みに弱い人は麻酔をしてくれるクリニックを探せば、うつらうつらしている間に検査は終わってしまいます。検査に要する時間は長くても30分くらいのものです。
大腸内視鏡では腸壁を100倍以上の倍率で観察することができますので、ちょっとしたびらん(ただれ)なども見逃さずにチェックすることができます。小さいポリープなども、見つけたらその場で切除してもらえるメリットがあります。
ポリープは放置しておくとがんになる可能性が高いため、小さいうちに切除してしまうことで将来の大腸がんリスクを下げることができます。

大腸は絶えず便を作っている器官ですが、老廃物などがたまりやすい箇所だけに、メンテナンスをきちんと行って、常に注意をし、いたわっていかないと潰瘍ができたりポリープができたりして腹痛や下痢などの症状を引き起こします。
大腸に重篤な疾患が発生しないようにするためには、定期的に検査を受けることがやはり重要ですが、大腸内視鏡検査を受ける頻度は約5年に1回が目安です。大腸ポリープががんになるまでには10年かかるというのが定説ですから、5年おきにカメラで検査を受けていれば安心というわけです。まずは日頃の食生活を見直すことも必要です。