大腸がんの検査の中でも一般的にあまり良いイメージを持たれていないのが、内視鏡による大腸の検査ではないでしょうか。痛い、苦しい、恥ずかしい、準備が大変などの印象が強く、できるだけ避けたいと思う方も多いかもしれません。しかし大腸内視鏡検査は現在のところ、大腸がんを早期に発見するのに最も適した検査なのです。
またネガティブなイメージを払拭し、少しでも患者さんに気軽に検査を受けてもらえるよう、病院でもさまざまな取り組みが行われています。
なぜ内視鏡検査を受けたほうが良いのか、どんなメリットや効果があるのかを詳しくみてみましょう。
目次
大腸がんの前段階から発見できる
大腸内視鏡検査について、どんな印象をお持ちでしょうか。苦しそうなのでできればやりたくない、と思う方が多いのではないでしょうか。
職場や自治体のがん検診では、40歳をすぎると便潜血検査が行われます。この検査で2回のうち1回でも陽性という結果が出ると、次は内視鏡検査などの精密検査を受けるように言われます。
ところが「自分に限っては大丈夫だろう」などと、精密検査を先延ばしにする人が少なくありません。実は便潜血検査で陽性が出た段階では、想像以上にがんが進んでいる可能性もあるのです。もちろんまったく問題がない場合も多いのですが、初期のうちはほとんど自覚症状がない大腸がんは、検査によって見つけてもらわないと、そのまま見過ごしてしまうことも多くあるのです。
自分で検査の必要性を感じるころには、すでにがんはかなり進行しているというケースもあり、それを防ぐために有効な手段となるのが内視鏡検査です。内視鏡検査では、出血するようになる前の、早期のがんも発見することができます。
また、これからがんになりそうなポリープを、がんになる前に見つけることもできるので、大腸がんの予防にも繋がります。そしてこの段階で治療を行えば、がんが治癒する確率が上がり、ほぼ完治させることも可能になります。
大腸がんはがんの中でも早期発見・早期治療によって完治しやすい反面、自覚症状が出たときにはかなり進行していることもあるため、いかに早い段階で見つけるかが非常に重要なカギとなります。そのために有効なのが、内視鏡検査なのです。
ポリープの切除によるがん化の予防
大腸内視鏡検査では、ごく小さな病変まで見つけることができ、すでにがんになっている細胞はもちろん、まだがんになる前の小さな芽までも発見できます。いわゆるポリープ(腺腫)と呼ばれるものですが、大腸がんはそのほとんどが、良性だったポリープが悪性化してがんに変化したものです。
大腸ポリープは約1割が見つかった段階ですでにがん化しており、またその時点ではがんになっていないポリープも、約1割から2割が将来がん化する危険性が高いとされています。近いうちにがんになりそうなポリープは、見た目の大きさや形、色や個数などからわかりますので、そうしたポリープはその段階で切除してしまいます。
内視鏡を使った検査であれば、このような処置がその場で行なえます。内視鏡的切除術と呼ばれるもので、ポリペクトミー(内視鏡的ポリープ切除術)やEMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)といった手術が、ポリープの大きさや状態によって選択されます。これらの手術は日帰りで受けられる病院もあり、身体へのダメージも少なくてすみます。
こうして切除されたポリープを、その後病理検査で悪性か良性か診断し、その後の診断や治療に役立てます。
大腸がんは遺伝的要素が大きいことがわかっていますので、家族に大腸がんを患った人がいれば、40代を過ぎたら定期的に検査を受けることが推奨されています。そうでない人でも50代を過ぎると罹患率が高くなりますので、積極的に大腸内視鏡検査を受けることが望ましいでしょう。
大腸がんは発見が早ければ早いほど治療方法の選択肢が広がりますし、5年生存率は格段に上がります。
大腸内視鏡検査の強みとは
大腸がんは早期発見によって完治する率が非常に高いがんです。早い段階で見つかれば、ほぼ100%治ると言われています。大腸がんを早期発見して治療するために最も確実なのが内視鏡検査です。
便潜血検査では便の中に混じっている微量の血液の有無を調べますが、これは排便の際にポリープをこすると、わずかに出血するためです。しかし、出血しないポリープや早期のがん細胞もあり、進行がんであっても検査の結果は陰性になることもあります。もちろんがん以外の疾患が原因となって、陽性反応が出る場合もあります。
便潜血検査は、身体への負担も費用も少なく大変受けやすい検査ですが、この検査だけで安心というわけではないのです。
またレントゲン検査では、病変の位置を正確に特定することができ、検査前の準備や検査中の痛みなども内視鏡検査と比べると負担が少ないと言えますが、病変が見つかったとしても治療はできません。その場合はさらに内視鏡による詳しい検査や治療を受けることになります。
これらの方法と比較すると、内視鏡検査はより詳しく大腸の中の様子を観察でき、小さなポリープまで発見してそのまま切除もできますので、がんの早期発見だけでなく、未然に防げる点で優れています。
血便が出たり便潜血検査で陽性だったりする人は言うまでもありませんが、それ以外にも大腸がんが心配な人は、早めに一度内視鏡検査を受けて見ると安心です。
ポリープが見つかった人や、切除手術を行った人は、その後も定期的に内視鏡検査を受けて、経過や新しいポリープができていないかを調べることが大切です。
早期発見・早期治療が大腸がん克服の鍵
年々罹患患者が増えている大腸がんですが、早期のうちは自覚できるような症状はほとんど見られないという特徴を持っています。それと同時に、早期に治療できれば完治もできるがんだということは、先ほどから述べている通りです。ステージⅠで見つかった場合、治療後1~2年の生存率は100%、5年後でも98.9%というデータがあります。この段階では命を奪われるような病気ではないということが言えるでしょう。
ところがステージⅣまで進行してしまうと、1年生存率は約70%、2年生存率は約46%、3年生存率は32.5%、4年生存率は24%を切るようになり、5年生存率となるとわずか19.6%まで下がってしまいます。ステージⅠで治療をした場合には100%に近かった5年後の生存率が、ステージⅣまで進行すると5人に1人しか生きられないという厳しい数字になってしまうのです。
また初期でがんが小さいうちや、周囲の組織に浸潤していないうちは、日帰りで内視鏡での手術ですむものが、進行すると開腹手術や薬物治療などが必要となり、肉体的にも精神的にもダメージが大きく、費用面での負担も大幅に増えます。
ごく初期の段階で大腸がんを発見し、さらにがんになる前のポリープまで切除できる内視鏡検査に勝る検査方法は、今のところありません。最近では痛みや負担の少ない大腸がん内視鏡検査に取り組んでいる病院も増えています。検査に対する恐怖心が強かったり、痛みに敏感な人には、鎮静剤の点滴をしたり麻酔を使って対応している病院もあります。
検査に抵抗を感じる方は、近隣にこうした病院がないか探してみてはいかがでしょう。
大腸内視鏡検査の大切さや、大腸がんの早期発見だけでなく早期治療に関しても、非常に有効な検査であることがおわかりいただけたでしょうか?
ここまで何度も繰り返してきたように、早い段階で治療ができれば、大腸がんは治せる可能性が高い病気です。万が一発症したとしても、生活の質を落とさないような治療を受けることも可能です。
50代を超えた方は、2年に1度の大腸内視鏡検査が推奨されています。ご自身の健康を守るためにも、自覚症状が無い方や少しでも気になることがある方、身内に大腸がんの人がいる方は、早めに検査を受けてみてはいかがでしょうか。