大腸内視鏡は無痛で苦しくない検査が人気!

大腸内視鏡検査は大腸内のポリープ・腫瘍・炎症などの異常を見つける検査として、とても有効な方法です。けれど同時に、受けることを最もためらう検査のひとつでもあります。お尻から内視鏡を挿入するというその検査方法に抵抗感があるのはもちろん、苦痛を伴うのではないかという不安感も大きな理由でしょう。普段やらないような検査なので恐怖感が高まることも自然です。
このような声を受け、医療機関の中には受診者の苦痛を減らすため、さまざまな工夫がなされているところがあります。現在人気の無痛で苦しくない大腸内視鏡検査法とはどのようなものなのでしょうか?

大腸内視鏡検査で苦痛を感じる理由とは

大腸内視鏡検査で多くの人が感じる苦痛には、「検査前の洗腸作業」「内視鏡挿入時の肛門の違和感や羞恥心」「内視鏡により大腸が引き伸ばされる痛み」「大腸内に空気を入れることによる張り」などがあります。
大腸内視鏡検査では、まず検査を受ける前段階として大腸内をきれいにしなければなりません。ここが、最初の難関です。多くの場合、検査当日の朝に2リットル近くの洗腸剤を飲む必要がありますが、通常、短時間にこれほどの量を飲むことはないので、気持ちが悪くなってしまうこともあるでしょう。この洗腸が、内視鏡検査の中で一番苦痛に感じる人もいるといいます。

次は、いよいよ内視鏡検査本番です。検査では、太さ10~13mmの内視鏡を肛門から大腸へ挿し入れます。検査を受ける人は、ベッドに横向きに寝た状態で検査を受けることになりますが、馴れない状況に羞恥心や恐怖心を覚える人も少なくありません。
体内に入った内視鏡は一気に小腸入り口付近まで挿入され、そこから戻しながら検査を行います。この時、内視鏡が大腸を引き伸ばすことがあり、これが痛みを感じる原因になります。特に、大腸にねじれや癒着がある場合には痛みが強くなります。
そして、大腸内視鏡検査では、ひだの間の異常を見落とさないため大腸内に空気を入れ、腸管を脹らませて検査を行います。検査中に張りを感じるのはもちろんのこと、空気がうまくぬけないと検査後にもお腹の張りが続いてしまいます。
これらが、大腸検査を苦痛に感じる理由です。

洗腸剤を飲む苦しさを減らす検査法

洗腸の目的は、腸内をきれいにすることです。2リットルの洗腸剤を飲まなくても、腸内がきれいになればいいのです。洗腸の負担を減らすには主に2つの方法があります。
ひとつは、腸内を洗腸しやすい状態にして、洗腸剤の量を最低限に抑える方法です。大腸内視鏡検査で問題になるのは食べ物のカスですから、まずは、繊維質なものを極力避ける食事制限を行います。腸内にカスがそもそも少ない状態であれば、洗腸剤の量を減らしても腸内をきれいにできます。医療機関によっては、前日の制限食として、「大腸検査食」と呼ばれるレトルト食品を推奨しているところもあり、これなら制限食を自分で考えて作る手間もかからずとても便利ですね。
ただし、この方法が簡単そうだからといって、自己判断で行ってはいけません。必ず、洗腸剤の量の軽減に取り組んでいる医療機関の指導の下に実施することが重要です。

もうひとつは、内視鏡的洗浄液注入法と呼ばれる方法です。この方法では、大腸内視鏡検査の数時間前に胃カメラ検査を行い、胃カメラから直接、腸に下剤を含む液体を流し込みます。腸内に洗腸剤を入れるという点では同じですが、自分で飲むという負担感がありません。胃カメラ検査技術の進歩もあり、この方法が楽だと感じる人も多いようです。
デメリットは、胃カメラ検査と同日に行わなければならないということですが、もし、どちらも受ける予定があるなら、別の日に受けるよりも効率的に2つの検査を終わらせることができます。

麻酔で検査の不安や痛みを取り除く検査法

以前は無麻酔で行われることも多かった大腸内視鏡検査ですが、現在では必要に応じて麻酔を取り入れる医療機関も増えてきました。主流な方法は、点滴静脈注射により眠くなる鎮静剤や痛みを抑える鎮痛剤を投与して、ぼんやりとした状態を作りだす意識下鎮静法です。この方法は、完全に意識を失うことはなく、呼びかければ目を覚ます程度の麻酔です。効き方に個人差はありますが、苦痛や痛みを感じることなく、うとうとしているうちに検査が終わったと感じる人も多いようです。
麻酔を使うことによるメリットは痛みや不安を取り除くことだけではありません。もし、検査を受ける人が苦痛に耐えかね動くようなことがあれば、検査する側の医師も落ち着いて検査することができなくなってしまいます。その苦痛を感じることなく、検査が行なえるとすれば、検査する医師が受診者の苦痛を気にしなくてよくなり、集中して丁寧な検査が実施できるでしょう。結果として、小さな病変の見落とし防止に役立ちます。

一方で、麻酔にはデメリットもあります。鎮静剤の効果がなくなるまでには。しばらく時間がかかるので、検査後に1~2時間程度の休息が必要になります。検査当日は影響が残る可能性があるので、細かな作業や、危険を伴う作業、車の運転は避ける必要があるでしょう。また、体質によっては麻酔が使えない場合もあります。
なお、意識下鎮静法は鎮静剤使用中に呼吸や心拍などの全身管理を行う必要があるので、内視鏡技術だけでなく、全身管理にも精通した医師の存在が必要不可欠です。

腸管の張りによる苦痛を軽減する検査法

腸管に空気が溜まっている状況はとても不快感があるものです。特に、普段からガスが溜まりやすい人にとっては、腸管の空気を抜くことは簡単ではありません。検査のために腸管を膨らますのは、見落としを防ぐために必要なことですが、内視鏡検査終了後にお腹に残った空気は不快そのものです。
この苦痛を和らげようと、内視鏡を抜く時に空気も一緒に排除したり、入れる気体を空気から、体に吸収されやすい二酸化炭素に変えたりする方法が使われています。ただ、空気を入れている限り一時的な張り感を完全になくすことはできません。この空気の張りは仕方のないことなのでしょうか?

実は、その張りをもたらす空気を使わない、もう一つの方法があります。それは「浸水法」です。浸水法とは、その名の通り空気の代わりに、水で腸管を満たす方法。空気に比べて、腸管の形を変えることなく検査でき、内視鏡の滑りもよくなるので、痛みを大幅に軽減できます。
浸水法を実施している医療機関では、無麻酔で検査を行うところが多くあることからも、痛みの少なさがわかるでしょう。また、内視鏡の操作性を損なわせることもないので、ポリープ除去もより正確・安全に行うことができるのも嬉しい点です。
腸管の中に水と空気がある状態では、気泡で視界が妨げられることもありますが、脱気をして、腸管をしっかり水で満たせば、クリアな視界で検査ができます。ただ、浸水法による検査は、従来の方法に比べて一般的ではないため、受けられる医療機関が限られてしまうのがデメリットと言えるでしょう。

 

苦痛の少ない検査法で快適に行なわれる大腸内視鏡検査は確実に増えています。けれど、採用している検査方法は最新のものから従来のものまで医療機関ごとに異なるのも現状です。痛みの程度など検査方法に不安を感じたら、検査を受けようと考えている医療機関に詳細を聞いてみましょう。「苦しい」「痛い」という思いがあっては、検査を受けようという気がおきません。不安感を取り除いてくれるような自分が信頼できる医療機関を探してみてください。定期的に検査を受けることが、病気の早期発見のためにとても大切です。