大腸というのは、ポリープはもちろんのこと、潰瘍やがんなどさまざまな病気が発生する部位です。口から摂取したものが食道や胃腸などを経て体内に消化吸収され、最後に残ったカスを便にして送り出すのが大腸の役目です。ですから身体中の老廃物がこの大腸に集まるということになります。
この老廃物を放置すると、大腸内の環境を悪化させると病気が発生し、体内の至るところに不快な症状が現れます。
ここでは大腸内を仔細に観察することができる大腸内視鏡についてその特徴や構造を見ていきましょう。大腸内視鏡を使用することによって大腸がんやポリープを早期発見することもできます。
目次
大腸内視鏡検査の概要
大腸内視鏡というのは肛門から先端にカメラが装備された管を入れて大腸の内部を直接見る検査機器のことをいいます。この機器を開発したのは東大、弘前大、および東北大の教授ですが、肛門から盲腸まで挿入する方法を開発したのが弘前大の医学部の教授です。
さらに1968年には東大の教授により「高周波スネアー」というものが開発され、内視鏡的ポリープ切除術が一般的に行われるようになりました。1960年代というと日本ではまだ大腸の疾患が現在のように一般的ではなく、日本では大腸内視鏡検査によるポリープ切除術が行われていなかったことは特筆すべきことでしょう。
1970年代以降、日本でも食生活の大幅な変化により大腸疾患やがんが増加し、ポリープ切除術も広く行われるようになりました。
大腸内視鏡は40年以上の歳月を経ることによってその性能や方法、感度なども格段の進歩を遂げてきましたが、肛門から挿入した管によって大腸内部の出血箇所やポリープ、がん、炎症の起きている場所などを詳しく確認することができる便利な機器です。
この内視鏡は便潜血検査で陽性の結果が出た、つまり血便が出た場合や長引く下痢や便秘、腹痛のある場合に行われます。
腸内の観察においては適宜メチレンブルーやインジゴカルミンなどの色素で染色を行いながら診断を行なっていきます。
大腸内を観察するにはバリウム検査や腹部エコーなどといった検査も行われますが、大腸内視鏡を使用すればポリープが発見された場合でもその場で即座に切除できるというメリットがあります。
大腸内視鏡に特有の構造
大腸内視鏡検査で使用される機器というのは 肛門から挿入するカメラと管の部分である「ビデオスコープ」およびカメラで探査する映像を映し出すカラーモニターとビデオシステムセンター、さらに光源装置の部分から成り立っています。
検査を受ける側からすれば、なんといってもビデオスコープ部分が重要なわけですが、肛門から挿入される管は直径11~13mm程度で、しかも麻酔や鎮痙剤の下に行われますので、痛みを感じることはあまりありません。
管の部分はフレキシブルな素材でできており、検査中も腸内をほとんど刺激せずに内部を観察していくことが可能です。もともと大腸というのは、曲がりくねった上に固定されていない器官ですので、熟練した検査医による検査が必要です。
患者の身体にかける負担を最低限にするために挿入する管もできるだけ細くするように工夫がされていますが、わずか数ミリの管の先端には高性能レンズやCCD、ライトなどが装備されています。
さらに管の中には直径2~3mmほどの「チャネル」と呼ばれるトンネルが通っており、検査中にがんやポリープが見つかった場合にはここからさまざまな処置器具を挿入して切除するほか、幹部に注射することができます。
検査中にポリープなどを切除してしまえば改めて内視鏡を挿入しなくても済みますので、身体への負担も最小限に抑えることができるのがこの検査機器の大きなメリットです。大腸内視鏡で世界一を誇っているトップクラスのメーカーはいずれも日本の企業ですので、安心して検査を受けることができます。
大腸内視鏡を選ぶポイント
大腸内視鏡というのはメーカーやモデルによってさまざまな特性があります。 多彩な機能を取り揃えている大腸鏡カメラは使い勝手もいいのですが、その分どうしても管が太くなってしまったり柔軟性がなくなったりすることが多いものです。
これに対して管が細くて柔らかく、腸に入れても抵抗感が少ない大腸内視鏡はそれなりのメリットがあるように見えますが、切除できるポリープの大きさが限られるなどの制限が出てくることも確かです。
大腸は曲がりくねっていて、しかも腹腔内にぶら下がっているような不安定な機器ですから、他の臓器よりも検査に神経を使うことは確かです。死角も多いので、微小な病巣でも見逃さないようにするためには視野の広いカメラを搭載した機器を選ぶことも大切です。
最近の大腸内視鏡はひと昔と比べると視野も格段と広くなっており、病変を見逃すことはまずありません。
視野角も170度前後と広く、しかも110倍以上の光学ズームが搭載されていますので、粘膜に見られる異変はもちろんのこと、微小な血管までも仔細に観察することができます。
大腸というのは大雑把に言って、下腹部で大きな「コ」の字を描いています。ですから管を入れていったときに大腸の屈曲した部分では自然に曲がってくれる「受動湾曲機能」に優れた大腸内視鏡のほうが検査医にとっても患者にとっても負担が少ないということになります。さらに管を挿入する際に硬度を手元で変えることのできる「硬度可変機能」が付いていれば万全です。
大腸内視鏡に装備されているカメラ
大昔に「ミクロの決死圏」(1966年)という映画がありましたが、観たことがあるという人は少ないかもしれません。この映画では医療チームの乗っている潜航艇を「ミクロ化」して東(当時のロシア)から来た亡命科学者の体内に入り込み、脳の内部を治療しようと努めます。
現在行われている大腸内視鏡検査はイメージ的にはこのミクロの決死圏と似たようなもので、潜航艇の代わりにカメラが体内に入り込んでいって大腸内を検査したり治療をしたりします。
大腸内視鏡の先端に取り付けられたカメラはいわば検査医の「目」でもあるわけですが、検査においてはこの目が利くか利かないかが、重要なポイントとなってきます。
現時点では、大腸内視鏡というと日本のメーカー三社がほとんど世界的なシェアを独占しているのが実情ですが、メーカーごとに「のっぺり映る」「シャープな画像が得られる」など、さまざまな特徴があることは確かです。
カメラとフィルムでは他の追随を許さないメーカーとして、有名な日本のトップメーカーも大腸内視鏡を生産していますが、このメーカーではレーザー光を使った新しい照明技術と画像処理を合わせた特殊技術も開発しており、医学の現場からも高い評価を受けています。
また、最近では管を挿入しなくてもカメラを搭載したカプセルを飲むだけで大腸内の写真が撮れるというシステムも登場しています。腹腔内に癒着があって大腸内視鏡が入らない人や器質的異常があって検査カメラを入れられない人には有効な検査方法と言えます。
私たちの身体はさまざまな形状の器官から構成されていますから、どこかの部位を精密に検査しようと思うと高度な精密機器が必要になってきます。
大腸というのはさまざまな器官で消化吸収を終えた食物が最後に到着して便が作られるのが大腸であるため、ひと昔までは大腸は重要な関心を集めていませんでした。
ところがこの大腸こそが健康と美容を司る重要な器官であることが徐々に判明し てきたため、大腸内視鏡を使っての検査が、いかに大切か再認識されつつあります。
大腸内視鏡を使えば数ミリの病変も見逃しませんから、ポリープやがんの発見には有効と言えます。