なぜ!?「大腸内視鏡検査」前日にお酒を飲んではいけない3つの理由

「大腸内視鏡検査を受けよう!でも毎日お酒飲みたいんだよな…」
「食事は制限があるって聞いたことがあるけど、お酒はどうなんだろう?」

と気になっている方へ。結論から申し上げますと、、、

大腸内視鏡検査の前日にお酒を飲んではいけません!

前日から食事制限を行って大腸をできるだけ空にしておくことが大切になります。なぜかというと、大腸内視鏡検査は大腸の内部をカメラで直接見て確認するわけですから、内部がぎっしり詰まっていたのでは腸の様子などを詳しく見ることはもちろんできないからです。

そしてアルコールに関しては、どのクリニックでも前日(当日ももちろんですが)の摂取は禁止しています。
それではなぜアルコールを検査前日に飲んではいけないのでしょうか…
これにはちゃんとした理由があるんです!この記事では、その理由について見ていきたいと思います。

理由①アルコールを飲むと消化が十分にできない

飲酒の習慣は紀元7000年前には既に行われていたという記録が残っているほど、人類にとっては非常に古くからの習慣です。毎晩、夕食を摂りながらビールやワイン、日本酒などで晩酌をするのが楽しみという人は多いのではないでしょうか。特に最近は、女性でも男性に負けないほど飲む人がいらっしゃるくらいです。

しかし、大腸内視鏡検査を受ける前日だけはこの習慣を我慢するようにしましょう。
というのも、アルコールには腸の動きを活発にする働きがあるからです。

アルコールをたくさん飲んだ翌日は下痢になってしまうという経験をした人はいらっしゃると思います。これはアルコールが身体に及ぼす作用によるものです(もしかしたら酔いを醒まそうと水など冷たい飲み物を飲み過ぎて…ということも考えられなくはありませんが)。

 

「アルコールは肝臓で分解されるし、腸なんて関係ないんじゃないの?」と思った方もいるかもしれません。
実はアルコールは主に胃で20%、小腸で80%吸収されるのですが、このアルコールは「酵素」の吸収する働きを邪魔してしまいます。酵素が上手く働かないと栄養分と水分の消化吸収がうまくできなくなり、消化が十分にされていない食物がそのまま大腸になだれ込んでしまうことになります。

その後大腸は、大量に流れ込んできた食物をどんどん排出しようと動きが活発になります。いわゆる「蠕動(ぜんどう)運動」というものです。

下痢になってしまうのは、普段なら大腸で吸収されるはずの便の水分が吸収される前に、急げ急げと排便という形で排泄されてしまうからなんですね。つまり、せっかく食べた食物もアルコールをたくさん飲んでしまうとうまく消化されることなく未消化で押し出されてしまうということです。

最初に述べたように、内視鏡で観察するためには腸が空っぽでないといけませんから、しっかりと食べ物が消化された状態でなければいけませんし、腸が動いていたら内視鏡も上手く入ら痛みを伴ってしまいます。

理由②アルコールは出血を促すことも

アルコールというのは少量飲めば食欲を促しますし、血管を拡張する作用があるので血流がスムーズになって健康促進にも役立ちます。体力が落ちてきた人・食欲がない人・今ひとつ元気がない人などが薬用酒を飲むことによって体調を回復したという話はよく聞かれます。

とはいっても、血流がよくなり過ぎるのも悪い部分があります。アルコールを飲むと血の流れがよくなって血液がさらさらになった感じがしますが、これはアルコールが血小板の働きを阻害する役割を果たすために起きる現象です。

Memo:血小板とは?
・2μmほどの小さな物体
・平均寿命は8~12日程度
・ケガをすると傷口に血小板が集まってきて血液を凝固させ、出血を防ぐ

ところがアルコールをたくさん飲んでいると、この血小板の働きが鈍くなってしまいます。泥酔した人がケガをすると飲んでいない人よりも出血がひどくなるという現象が起こるはこのためなのです。

大腸内視鏡検査というのは肛門から管を入れて大腸内を観察する検査方法ですので、血管が拡張している状態だとちょっとしたことでも出血することにもなりかねません。最悪の場合は、検査自体ができなくなってしまうこともあります。このために検査前日はアルコールを飲まないことが強く推奨されるのです。日ごろからお酒をたくさん飲んでいる人は、できれば前日だけではなく3日ぐらい前から禁酒しておくことをおすすめします。

理由③麻酔が効きにくくなる

もうひとつ、検査前日にアルコールを飲んではいけない理由は「麻酔が効きにくくなる」ということです。大腸内視鏡検査では肛門から直接管を差し込んで大腸内部に入れていくわけですから、鎮痛剤も鎮静剤も使わずにいきなり始めてしまうと痛くて検査が続行できません。そこで様々な鎮痛剤が使われることになるのですが、この鎮痛剤がアルコールと関係があるのです。

アルコールを摂取していると麻酔が効かないというのは、どちらも肝臓で代謝される物質だからです。長期的にアルコールを大量に摂取している人では通常よりも多い量の麻酔を使用しないと痛みを止める効果が得られなくなるのですが、こうなると肝臓に多大な負担をかけてしまいます。ですから検査前日はもちろん、日常的に節酒を心掛けるのが望ましいということになります。

ちなみに病院によっては麻酔を使用して検査を極力痛みの少ないものにする工夫を行っています。主に検査方法には2パターンあります。

・意識のあるまま検査を行う方法:鎮痙剤や鎮静剤だけを使用する
・意識下鎮静法:静脈麻酔によって眠っているうちに検査をする
どちらの方法がいいか選べる病院もたくさんありますので、痛みに弱い人はあらかじめ医師とよく相談した上で意識下鎮静法を選ぶといいでしょう。血便が出ている場合、出血箇所が胃なのか腸なのかわからないというのはよくあることですが、この意識下鎮静法を用いた検査を受ける場合には大腸内視鏡と胃カメラの検査を同時に受けることも可能です。

ちなみに麻酔が使用できるかどうかは、普段服用している薬などによっても制限されてしまうことがあるので、まずは医師に相談してみましょう!

飲んでいいもの・いけないものは?

今までは「前日にアルコールを飲んではいけない」という話を長くしてきましたが、もちろん他にも前日に飲んでいけないものが存在します。そして逆に、何なら飲んでもいいのか気になるところだと思います。以下にその主な一覧を示します。

〇 飲んでいいもの

・水
・お茶
・紅茶、コーヒー(ブラックor砂糖のみ)
・スポーツドリンク

 

× 飲んではいけないもの

・牛乳等の乳製品
・ジュース
・アルコール

細かい部分は医院によって異なる場合もあるので、実際に検査を受ける病院が決まっている方は、そちらの方に問い合わせてみるのが確実です。

過度の飲酒は大腸の病気の原因に!

大腸内視鏡検査を受ける前日に限らず、節酒を心掛けることは大腸の病気を予防することにもつながります。ですから便潜血検査で陽性の結果が出て大腸内視鏡検査を受けることになったら、これまでの自分の食生活を今一度見直してみるのも悪くありません。

アルコールは少量であれば胃腸の働きを活発にして食欲を促進させる、身体中の血行をよくするなどさまざまなメリットがあることも否めません。食前酒を楽しむ習慣なども、このアルコールのプラスの面を最大限に利用したものです。

ところが、量が過ぎるといろいろな弊害が出てきます。アルコールは刺激物であることに変わりはないので、飲み過ぎると腸内フローラに悪影響を与えることになります。

Memo:腸内フローラとは?
腸内には、1,000種1,000兆個以上もの多種多様な細菌が生息しています。これらの様々な細菌がバランスをとりながら腸内環境を良い状態にしています。

~腸内フローラの3つの役割~
①消化できない食べ物を体に良い栄養物質に作り変える
②腸のバリア機能向上
③善玉菌・悪玉菌・日和見菌(善玉菌と悪玉菌の多い方に味方する)のバランスを保つ

参考)ビオフェルミン製薬「腸内フローラって、何?」

 

そして、アルコールを毎日2杯以上飲む人の場合、腸内に毒性の強い細菌が増えてしまうリスクが高まります。

アルコール依存症患者においては、アルコールを飲まない人と比較して良性腫瘍では54%、がんにおいても6%も高い数値が大腸内視鏡検査の結果として出ているということですから、お酒をよく飲む方は大腸の病気に気をつけなければなりません。
飲み過ぎは大腸ばかりではなく肝臓にも悪い作用を及ぼしますから、検査前後に関わらず節酒したほうがいいということになります。

大腸の中でも特に肛門からすぐのところにある直腸とその上のS字結腸(急カーブしている部分)は、がんになりやすいのが飲酒による弊害の特徴となっています。これに加えて、メタボもがん発生率を上げることがわかっていますから、運動を定期的に行う習慣も忘れないようにしましょう。

最後に

今回の記事で見てきたように、検査前に飲酒を禁止するのにはしっかりとした理由があります。とはいっても日常生活でも完全にアルコール量をゼロにしろということではなく、適量を適度に楽しむことは悪いことではありませんから、自分の体調とよく相談しながら飲酒量を決めていくということが大切です。

ちなみに、検査が終わった後も鎮痛剤や麻酔の効果がすぐに消えるわけではありませんから、検査を受けた日の飲酒も避けることも非常に大切です。検査の際にポリープや組織を取った場合などは特に検査後3日間は禁酒を守って安静にすることが重要です。お酒とは上手に付き合っていきましょう!

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