血便が出たら大腸内視鏡検査を!便からわかる病気6種類を解説

私たちの身体は、どこかに不調があると、さまざまなサインを出してアピールしてきます。
簡単なものだと、頭痛や腹痛です。これらも立派なサインのひとつですから、鎮痛剤で症状を抑えて済ませず、痛みの原因を検査してもらうことが必要です。結果、思わぬ病気が見つかることもあります。

身体のサインの中でも特に見逃してはいけないのが血便です。血便が出た際にはすぐに胃腸内科で医師に診察してもらうといいでしょう。問診の他に大腸内視鏡検査を受けることによって、どの部位から出血しているか?患部はどのような状態か?など、血便の原因をかなり正確に診断してもらうことができます。

この記事では血便の原因について、血便からわかる大腸の病気についてまとめました。ぜひ最後までお読みください!

血便の原因にはどんなものがあるか

血便には2通りのタイプがあります。ひとつは排便をした後にトイレットペーパーに血が付くいわゆる「下血」、もうひとつは肉眼では血便の存在をはっきりと確認できないけれど、便に血が混じって黒ずんでいる「便潜血」の状態です。

いずれも身体が危険を発しているサインなわけですから、見逃さずにできるだけ早く専門科医に診てもらうことをおすすめします。どんな病気でも早期発見をすることで適切な治療を受けることができます。
血便の原因はさまざまで、出血部位は肛門のすぐ近くから直腸や大腸、小腸、あるいは胃や十二指腸からの出血が原因で血便が出ることもあります。一般に鮮血が見られる場合は、肛門か直腸から出血していることがほとんどです。

これに対して暗赤色便は大腸の奥から出血していることが考えられますし、粘血便が出るときは大腸になんらかの感染症がある、あるいは炎症性腸疾患の疑いが考えられます。
便が黒色に近いときは胃や十二指腸の潰瘍の可能性がある他、鉄剤を内服しているときも黒色便が確認できます。また、視覚的には異常のない色でも検査をしてみると血が混じっている潜血便もあなどれません。この潜血便がある人に大腸内視鏡検査を行うと、大腸がんが見つかることも多いのです。

大腸がんはここ30年間で罹患数5倍にも増えている病気で、特に女性における大腸がんの増加にはめざましいものがあります。がんによる死亡数でも第1位が大腸がんですから、ちょっとでも便の色が気になるときや下痢や便秘がおさまらないときは専門外来ですぐに検査してもらうことをおすすめします。

虚血性大腸炎と潰瘍性大腸炎

大腸の疾患は大腸がん以外にも多数あり、それぞれに血便の様子が異なります。ですから便潜血検査で陽性の結果が出たからといってすぐに「大腸がんだ!」とあわてる必要はありません。落ち着いて大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。

血便が出る疾患の中でも、大腸への血流が断たれて血が行き渡らない状態になるのが「虚血性大腸炎」です。この疾患にかかると腹部の特に左側に痛みが出て血便になります。虚血性大腸炎は特に糖尿病や動脈硬化を患っている高齢者に多く発症する疾患で、大腸粘膜に潰瘍やびらん(ただれ)ができてそこから出血します。虚血性大腸炎が疑われたら、大腸内視鏡検査を行って大腸がんではないことを確認してから治療を行っていきます。この病気は一過性で、2週間ほどの入院で治癒するケースがほとんどです。

潰瘍性大腸炎も血便が出る病気のひとつです。「UC(Ulcerativecolitis)」の名称でも知られるこの病気は30歳以下の人によく見られ、自己免疫異常や心理的な要因が病気の原因とされています。この潰瘍性大腸炎は粘液の混じった血便が続くのが特徴で、便がイチゴジャムに似ているのが大きな特徴です。
大腸内視鏡を使って腸管粘膜に膿性粘液物が付着しているかどうか、粘膜に発赤調・微細顆粒状の部位があるかどうかで潰瘍性大腸炎の診断をする他、血液検査を行ってウイルス性あるいは細菌性の感染性腸炎ではないことを確認した上で治療を行います。
ただしこの病気は完治が難しく、寛解(一時的に症状がよくなること)と再燃を繰り返すため、厚生労働省から「難病」の指定を受けています。

大腸憩室症と偽膜性大腸炎

「大腸憩室症(だいちょうけいしつしょう)」も血便の原因となる疾患のひとつです。この疾患は大腸の内壁がところどころ外側に飛び出して小さな部屋状の空間を形成する病気です。
これ自体が重篤になることはなく、大腸内視鏡検査を行った際にたまたま見つかることもよくあります。ただし、この部屋の部分に便が貯留してしまうと炎症が起こり、血便や発熱、腹痛などの症状を起こすようになります。
この病気は大腸内圧が原因となって起こりますが、高齢者で腸壁がもろくなっていると炎症が起こる可能性が高くなります。特に90歳以上になると、ほぼ全員に大腸憩室症がみられます。出血量が多い場合には、大腸内視鏡検査時に止血処置を行うこともあります。
大腸憩室症自体は怖い病気ではないのですが、炎症が起きているのに放置しておくと腹膜炎にまで発展します。こうなると抗生物質による治療が必要になってきます。
また、大腸憩室症を繰り返していると大腸内視鏡の挿入そのものが困難になります。

「偽膜性(ぎまくせい)大腸炎」も大腸の疾患のひとつで、血便が見られることのある病気です。別名「クロストリジウム・ディフィシル腸炎(CD腸炎)」とも呼ばれるこの疾患では、発熱や下痢上状の血便、腹痛などの症状がみられます。
抗生物質を服用した後に起きやすい病気で、抗生物質によって善玉菌が殺菌されてしまうことでCD菌と呼ばれる細菌が異常繁殖して毒素を産出し、大腸内のバランスを著しく壊すというものです。
40℃以上の発熱を起こすこともありますから、大量に抗生物質の投与を受けた後などは要注意です。病名のとおりに偽膜が作られるのが特徴ですから、大腸内視鏡で確認します。

出血性大腸炎と大腸ポリープ

血便というとほとんどの大腸疾患では肉眼で確認できるかどうかという程度の量の出血が多いのですが、中には多量の出血を起こす疾患もあります。「出血性大腸炎」がそれです。
出血性大腸炎は感染症のひとつで、ベロ毒素(志賀毒素)と呼ばれる毒素が大腸内で大量に産生されることで血便や下痢などの症状を起こします。
この疾患を引き起こす元となるのは「腸管出血性大腸菌」と呼ばれる菌ですが、この菌は牛の腸に生息しています。ですから市販されている牛ひき肉を十分に加熱しないで食べる、あるいはしっかりと殺菌されていない牛乳を飲むなどといった行為を避けることで感染をかなり有効に避けることができます。
この病気にかかると激しい痙攣性の腹痛と下痢に見舞われます。最初のうちは少量の血便がみられますが、重症のときは真っ赤な血便が出るので驚く人も多いようです。
糞便を分析することで診断が下されますが、偽膜性大腸炎などとの区別をつけるためには大腸内視鏡検査が行われます。

大腸がんの検診では大腸内視鏡検査の前に便潜血検査というものが行われますが、がんが発生していなくても大腸ポリープがある場合にはこの便潜血検査の結果が陽性になります。ポリープとはイボ状の突起のことですが、ポリープ=がんということではありません。
ポリープ自体は無症状ですが、便との摩擦によってポリープから出血することがあります。大腸内のポリープはその何%かが将来がんになる可能性を持っているため、内視鏡を使って切除する治療法が採られています。

最後に

以上見てきたように、血便の原因というのは実にさまざまです。逆にいえば血便があるからといって必ずしも大腸がんということではありません。

ただ、たとえ軽い疾患だとしても血便が続くと貧血状態になり、体力がどんどん衰えていくことも確かです。ですから、血便が発見されたら極力治療に力を入れて、できるだけ早く大腸内の疾患を完治させるように努めたいものです。
出血がどこから来ているかを調べるためには、大腸内視鏡の他に大腸にバリウムと空気を入れてレントゲン写真を撮る注腸造影検査やCT検査、腹部超音波検査などが行われています。

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