あなたの食生活、大丈夫ですか?
実は、食生活の変化で大腸の病気になる方が増えています。近年の日本人死亡原因の1位である「がん」の中でも特に「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」は男女共に上位にあり、その数も年々増加しています。
通常の健康診断で行われる大腸がんの検査は、便に血が混じっていないかを調べる「便潜血検査」です。そしてこの検査で陽性反応が出ると、大腸内視鏡を使った検査を勧められます。
また大腸がんだけではなく、大腸には普通の健康診断では見つけにくい様々な病気が隠れていることが多く、大腸内視鏡検査では直腸から肛門までの大腸内を詳しく、リアルタイムで調べる事ができます。
そこで今回の記事では、大腸の検査になくてはならない大腸内視鏡の構造と技術・判明する病気・検査をする必要性についてご紹介したいと思います。
目次
多くのパーツから成る大腸内視鏡の構造
大腸内視鏡は先端に小型撮像素子(CCDカメラ)のついた直径1cm程の管状のファイバースコープを肛門から入れて大腸内を隈なく調べていきます。大腸内視鏡本体は先端にCCDカメラを取り付けた長さおよそ130cmほどのファイバースコープ部分と、CCDカメラからモニターに写し出される画像を観察・記録するビデオシステム部分とに分かれています。
ファイバースコープ部分も、大腸内に直接入っていき先端にCCDカメラが付いている挿入部分と、ビデオモニターを見ながら操作するスイッチが付いている操作部分から成り立っています。ここをコネクターでビデオシステム本体と接続し、大腸の中をリアルタイムで映し出したり記録したりします。
挿入部分の先端部分にはCCDカメラの他にも暗い大腸内を照らすライトや、粘液や血液でCCDカメラが汚れた時に水や空気で洗い流すためのノズル、大腸内にある異物の回収や組織の採取・ポリープの切除などに使われて処置器具が出てくる鉗子口があり、直径約1cmの小さな中にたくさんの先端技術が組み込まれているのです。
挿入部分の先端部は操作部分にあるアングルノブで自由自在に操作することができ、その他にも空気や水を送るボタン、吸引ボタンや処置器具を挿入する鉗子口等が付いていて、この操作部分を使い大腸内の検査や処置をします。
内視鏡の先を操作する仕組みは管の部分に埋め込まれたワイヤーをアングルノブで操作するシンプルなもので、基本的な構造は20年程変わっていませんがビデオシステムや先端に付いているCCDカメラの精度やその他の仕組み・素材の部分では、使う側の医師と使われる側である患者にとって負担にならないように日々進化しているのです。
患者さんのための技術発展
大腸内視鏡の強みは、大腸内を詳しく観察したり、場合によっては組織を採取したりすることで、ポリープや大腸がん・大腸憩室炎・炎症性疾患など病気を発見することが出来ることです、更に、小さなポリープや早期の大腸がんであれば切除して治療することも可能です。
「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」と呼ばれる治療法は腫瘍が2cm以下でリンパ節への転移が認められない場合に適応される治療法です。スネアと呼ばれる輪を腫瘍に引っかけて切除するのですが、大きな腫瘍は切除できずに分割切除になってしまうこともありました。そのため、正確ながん細胞の進行度が確認できず、周辺にがん細胞が残ってしまい再発しやすいと言う問題点がありました。
そこで2009年に、厚生労働省は「内視鏡的粘膜剥離術(ESD)」を大腸がんに対する先進医療として認め、2011年には国が認めた保険治療として現在幅広く用いられています。そもそも胃や食道・大腸の壁は粘膜層・粘膜下層・筋層の3層からできていて、通常がん細胞は一番内側になる粘膜層から発生します。ESDとは、早期の大腸がんであれば大腸の内腔から粘膜下層を含めた粘膜層のがん細胞を剥離・切除する治療方法です。
ESDの普及により治療を受ける患者の体への負担が軽くなり、臓器を温存しながら腫瘍部分のみを切除できるメリットがあります。
ただ大腸は腸管の壁が薄く、出血や腸壁に穴があく穿孔がおこるリスクが高くなるので、ESDはEMRに比べて難易度が高く、医師の技術が問われる治療法です。日本消化器内視鏡学会では「日本消化器内視鏡学会の専門医の資格を取得した医師が治療を行うこと」と定めています。
このように、大腸内視鏡の技術の発展によって開腹手術をせずにがん細胞や腫瘍を取り除くことが増え、患者の負担が軽減されるようになったのです。
大腸内視鏡検査でわかる病気5つ
大腸内視鏡検査では大腸がんや腫瘍の発見の他に大腸にある様々な病気も見つけることができます。
クローン病(炎症性腸疾患)
小腸や大腸などの腸管壁に炎症や潰瘍ができ、多くの方は繰り返す急激な下痢や血便で自分の体の異変に気づきます。
また大腸だけではなく、全身に合併症が出てくることもある慢性の炎症性疾患です。
大腸ポリープ
大腸の粘膜層にできるイボ状のデキモノの事で、腫瘍性を非腫瘍性に分かれていて、腫瘍性の悪性が「がん」で良性は腺腫(せんしゅ)と呼ばれています。
腺腫は大きくなるとがん化する可能性があるので、ある程度大きくなると大腸内視鏡で切除するのが一般的です。
大腸憩室炎
腸管壁の弱いところにポケットのような袋ができることを「憩室」と呼び、憩室が炎症したり穴が開いたりすると大腸憩室炎になります。
命にかかわる病気ではないですが、一度大腸に憩室ができると無くなることはないので、憩室が炎症しないように気を付けて生活しなければいけません。
症状は激しい腹痛(多くは左下腹)・下痢・出血・今まで便秘気味だったのに下痢をよくするようになるなど排便習慣の変化を感じる方もいらっしゃいます。
潰瘍性大腸炎
国の難病指定されている潰瘍性大腸炎とは大腸の一番内側の粘膜層にびらんや疾患ができる炎症性の病気です。
症状は血便や下痢・腹痛。体重減少に貧血にもなる場合があり、その他全身の合併症を患うことが多くあります。
原因は不明で患者は主に30歳以下の成人が多いが、まれに子供や50歳以上のでも発症する場合があります。
潰瘍性大腸炎と診断された場合は内服薬の服用と定期的に大腸内視鏡検査を受ける必要があります。
虚血性腸炎
大腸の血流障害で粘膜層に炎症や潰瘍が発生し、急に激しい腹痛や出血がおこります。
原因は動脈硬化・糖尿病・高血圧などの生活習慣病の他にも高齢・ストレス・喫煙・飲酒・便秘など様々です。
このように健康診断ではわからない大腸の病気を大腸内視鏡検査をすることで発見し早期に治療することが出来るのです。
大腸内視鏡検査の必要性
日本では大腸がんによる死亡率が年々増加しており、これからも増えていくだろうと予想されています。
原因は昔とは違い食生活が欧米化されて肉などの高脂肪食品を食べる機会が多くなったこと、ライフスタイルの変化で運動不足や生活習慣病になる方が増えたことにあると考えられています。
また大腸がんのほとんどが良性のポリープの腺腫が変異してがんを発症すると言われています。
つまり、良性のポリープのうちに見つけポリープを切除してしまえば大腸がんは予防できると言うことです。
そのためにも40歳以上になれば男女共に定期的に大腸内視鏡検査を受けることを習慣づけるのが良いとおもいます。
また若い方でも将来的に大腸がんになる可能性があるポリープの発見や、若くしてクローン病や潰瘍性大腸炎や炎症性腸疾患になる方も増えているので、大腸に異変を感じた時には大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
日本の内視鏡を使っての診断や治療は世界でもトップレベルです。
特に大腸内視鏡の省入技術や、大腸壁に出来た小さながん細胞を見つける技術や、内視鏡を使った治療も優れていて、日本は世界有数の医療先進国と言えます。
しかしながら大腸がんでなくなる人の数は年々増えており、近年では子宮がん・乳がんを抜いて女性のガンの死亡原因の1位が大腸がんなのです。
大腸がんは早期発見・治療することで完治するケースがほとんどです。
ですので積極的に検査をしていただきたいと思います。