突然ですが、便に血が混ざっていたことはありませんか?
これはいわゆる「血便」と呼ばれるものです。血便が出た場合、大腸内視鏡検査を行うことが一般的ですが、検査への不安感や抵抗感から尻込みしてしまう方も少なくないのではないでしょうか。
「血便が出たら内視鏡検査をしないといけないの?」そんな疑問を解消すべく、血便の症状と原因となる主な疾患についてまとめました。
目次
血便が出たら確認すること
確認①便の色
血便が出てしまったら、まずはその色を確認しましょう。実は、色によってどこから出血したのかということが予想することができます。以下の表にその一覧をまとめたので、確認してみてください。
便の色 | 出血しているとされる部位 | 予想される疾患 |
鮮血便 | 肛門 直腸 |
痔 直腸がん |
暗赤色便 | 大腸近くの小腸 大腸 |
大腸憩室出血 大腸の感染症 |
黒色便 | 胃 十二指腸 |
胃・十二指腸潰瘍 貧血治療の鉄分内服による副作用 |
粘血便 | 大腸 | 大腸の感染症 炎症性腸疾患 |
潜血便 (便潜血検査で) |
大腸 肛門 |
大腸がん ポリープ 炎症性腸疾患 痔 |
表の一番右の「予想される疾患」については、この次の章で詳しく説明していきます。
確認②消化器内科を受診!検査を受けよう
血便が出たら、まずは消化器内科を受診しましょう。排便時痛みがあったり、すでに痔疾患を指摘されていたりで痔による出血だと思っていても、それ以外の疾患が見つかる可能性もあります。中には「血便外来」を用意しているクリニックもあるので、そちらでも検査・治療が可能です。
受診の際は、以下の事項をできるだけ詳しく医師に伝えるようにしましょう。血便を写真に撮っておくのもわかりやすいです。
・便の色や状態
・出血量
・血便以外の自覚症状はあるか(腹痛・発熱・ふらつき・めまい等)
また、放っておくとがん化する可能性のあるポリープの場合、その場で切除することもできます。ただし、ポリープを検査と同時に切除するかどうかは病院によっても異なります。血液検査などを行ってから、改めて内視鏡をして切除する場合もあります。
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血便の原因①大腸がん
それではここから、血便の原因として予想される疾患について1つずつ解説していきたいと思います。まず始めは「大腸がん」です。
血便が出た場合、最も注意すべき疾患がこの「大腸がん」です。日本人の死因第一位である「がん」の中でも、最近の統計ではこの大腸がんが最も患者数が多いものとなっており、1年間に人口10万人あたり100人以上の人に大腸がんが見つかっています。年齢別にみると40代から増加し始め、高齢になるほど患者割合が増加します。死亡者数はがんの中でも、大腸がんは肺がんに次いで第2位となっています。
腸は正面から見て、お腹に「の」の字を描いたような形をしています。最初の下に下がる線が小腸、そして右下腹部から盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸とつながります。このうち、日本人の大腸がんはS状結腸と直腸に多いと言われています。
大腸がんの発生には食生活(肉類中心の食事や食物繊維の不足など)や飲酒、喫煙などの生活習慣が関わっていると言われています。この他、家系・遺伝的な影響も指摘されています。
大腸がんの治療は開腹手術、腹腔鏡手術、内視鏡手術などと放射線治療、薬物治療があり、がんの進行度や全身状態から総合的に判断されます。がんの部位によっては、手術により人工肛門(ストーマ)となる場合もあります。
大腸がんは、一般的にかなり進行するまで自覚症状が出にくいとされていますが、血便だけは比較的早い段階から見られることが多いようです。血便が大腸がんの早期発見、早期治療の鍵とも言えるのです。
がんに気づかないまま進行していくと慢性的な出血による貧血や、がんにより腸の内側が狭くなることによる便秘や下痢などが起き、さらに進行すると腸閉塞を起こします。また、自覚症状が出にくいため、他の部位に転移してから発見される場合もあります。
血便の原因②大腸ポリープ
大腸ポリープとは、大腸の粘膜にできるイボのような病変のことで、良性のものです。しかし、中には放っておくとがん化するものもあるため、注意が必要です。
大腸ポリープは、大腸がんと同じく直腸とS状結腸に多く見られ、生活習慣や遺伝的な要因などによって発生します。自覚症状のないことが多く、健康診断で便潜血検査が陽性となり、大腸内視鏡検査をして初めて発見されるというケースも少なくありません。ポリープの部位や大きさによっては出血が起きやすいものもあり、血便が見られることがあります。
大腸ポリープが発見された場合、将来的に大腸がんになる危険性の高いものは内視鏡手術により切除します。それ以外のポリープは、定期的に内視鏡検査を行い経過観察をするのが一般的です。
血便の原因③大腸憩室出血
大腸憩室とは、大腸の壁にできるへこみ・ポケット状の袋のことを言います。ここにある血管が切れて出血すると、比較的大量の出血を起こしやすく、中には輸血が必要となるケースもあります。
大腸憩室の形成には、食物繊維の不足などの食生活が影響していると考えられており、大腸憩室を持つ人は近年増加傾向にあります。憩室からの出血には、鎮痛剤の使用頻度が高かったり肥満などの生活習慣が関与していると言われています。大腸憩室があるだけでは特別症状はありませんが、大腸憩室出血を起こした場合、特に高齢者では突然多量に出血してショック状態となったり、慢性的な出血により貧血を起こしたりすることがあります。
大腸憩室出血の多くは自然止血すると言われていますが、比較的再出血を起こしやすいため、大腸内視鏡検査にて止血を確認し、必要時止血術などの処置が行われます。
血便の原因④その他の疾患
血便を起こす病気には、他にも様々なものが考えられます。ここではそれぞれの疾患について簡単にまとめました。
潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる疾患です。炎症性腸疾患と呼ばれる疾患の1つであり、命に関わることは少ないですが、原因は不明で根治は難しいとされている難病です。重症化すると栄養吸収不良となり、体重減少や貧血などを引き起こします。大腸がんの発生にも関係していると言われています。
感染性腸炎
サルモネラ菌や病原性大腸菌O-157等の細菌や、ノロウイルス、ロタウイルス等のウイルス、寄生虫などによって起こる大腸の炎症です。血便が起こる場合は重症であることが多く、早急に治療が必要となります。
虚血性腸炎
動脈硬化などが原因で大腸の血流が悪くなり、大腸の粘膜が損傷することによって炎症や潰瘍ができる疾患です。重症化すると腸閉塞などを起こすこともあるため、早期に治療する必要があります。
胃・十二指腸潰瘍
ピロリ菌感染や一部の鎮痛剤の影響などにより、胃や十二指腸に潰瘍ができる疾患です。初期から痛みを感じることが多いですが、鎮痛剤が原因の場合は鎮痛作用により痛みに気づかず、発見が遅れることもあります。潰瘍が進行すると、吐血や血便(タール便と呼ばれる、黒いどろどろとした便)が見られる場合があります。
痔
内痔核
肛門より少し奥まった部分の粘膜に内出血が起き、イボ状に腫れた状態を言います。痔疾患の半数以上がこの内痔核で、排便時に真っ赤な出血を起こします。痔核が肛門よりも内側に収まっているうちは痛みがないことが多いですが、大きくなって肛門よりも外側まで出てくるようになると、痔核が肛門で締め付けられて強い痛みを感じることがあります。
裂肛
いわゆる切れ痔です。出血量はあまり多くなく、トイレットペーパーにつく程度のことが多いようです。
最後に
血便と聞いて、痔が真っ先に頭に浮かぶ人も多いでしょう。実際、血便の大半は痔疾患が原因であり、命には関わらないことが多いものです。しかし、痔だと思って放置していたら大腸がんだったというケースや、長期に渡る出血で貧血を引き起こす場合もあります。血便が見られたら、自己判断をせずにまずは必ず専門医の診断を受けましょう。
大腸内視鏡検査は抵抗感を感じる方も多いですが、技術の進歩により以前よりだいぶ負担が少なく楽に受けられるようになってきています。そしてなにより、放っておくと命に関わる疾患の早期発見に非常に役立ちます。
病気の徴候をいち早く発見するためには、早期の受診、早期の内視鏡検査がとても大切なのです。
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